後怕の抱擁
「何か塗られている、だと?」
竜也の眼差しは、瞬時に鋭さを増し、医療室の空気は氷のように凍り付いた。室内の医師と数名の組員は顔色を変え、黒田はすぐさま一歩前に出て、担当医師に獰猛な視線を向けた。
医師は恐怖で冷や汗を流し、慌てて弁解した。「ふ、夫人、わたくしは傷口を検査しましたが、一般的な毒物反応は見られませんでしたが……」
「劇物ではありません」鈴原桜は彼を遮った。声には依然として微かな震えが混じるが、その口調は極めて断定的だった。「混合された神経麻痺剤です。匂いは薄く、発症は緩やかですが、徐々に筋肉の麻痺を引き起こし、重篤な場合は……呼吸器系に影響を与えます」
彼女は前世、鈴原家の暗部で、このような裏の品々をあまりにも多く見てきた。その微細な匂いの違いを、彼女は見誤るはずがない。
彼女の言葉は、まるで冷水を浴びせられたように、その場の全員の背筋を凍らせた。もし、彼女が気づかなければ……。
竜也は、彼女の青ざめた顔と、自分の傷口を凝視する恐怖と怒りの入り交じった瞳を見つめた。これまで無理やり押し込めていた**「後怕」の念が、津波のように再び押し寄せた。それは、傷の痛みよりも、百倍も鋭く、彼の胸を突き刺した。彼は、自分の油断で、もう少しで彼女を再び一人残すところだったのだ。
その瞬間、鈴原桜は一気に顔を上げた。彼女の冷静さを保っていた外殻は、彼が再び危険に晒されたという事実の確認によって、完全に崩壊した。彼女は初めて、自らの意思で、その場にあった全身の力で、彼の無事な側の身体に飛びつき、その顔を彼の首筋に深く埋めた。
「もう、二度とそんなことしないで……」彼女の声は、彼の肩にこもって、押し殺した嗚咽と、制御できない震えを伴っていた。「もう、私のために傷つかないで……竜也……私には耐えられない……」
彼女の身体の震えと、言葉の中に隠された断片的な恐怖は、無数の細い針のように、竜也の心臓を密に刺し貫いた。彼の身体は猛然と硬直したが、すぐに、言いようのない巨大な心痛と、失ってから取り戻した宝物への愛惜が混ざった感情の奔流が、すべての堤防を打ち破った。彼は、先ほどよりもさらに強い力で、ほとんど凶暴なほどに彼女を抱きしめ返した。負傷した左腕も、無意識に力を込めて収縮し、まるで彼女を自分の骨肉の中に完全に揉み込み、永遠に離さないようにするかのような力だった。
「俺は、大丈夫だ」彼は彼女の耳元に囁いた。その声は掠れていたが、血の重さを伴った誓いだった。「約束する。お前が絶対的に安全になるまで、すべての脅威を完全に排除するまで、俺は決して倒れない」
彼は首筋に伝わる彼女の温かい涙を感じ、心臓を無形の手で強く掴まれた。彼は、僅かに彼女を緩め、その顔を持ち上げた。指の腹で、不器用に彼女の目尻の涙を拭う。彼の眼差しは、深海のように深く、狂信的とも言えるほどの真剣さを宿していた。
彼は低く問いかけた。
「桜、もし俺が……」彼は言葉を途切れさせた。その仮定自体が、彼にとって耐え難いようだった。「もし俺に何かあったら、お前はどうする?」




