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极道様と甘い復讐の時間  作者: 朧月 華


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第14話 俺の命令

会議は、中村の詰問が引き起こした、奇妙なほど張り詰めた雰囲気の中で終了した。幹部たちは次々と退室し、中村は一目散に会議室を後にした。その背中には、明らかな焦燥感が滲んでいる。


鈴原桜は、手元のファイルを整理していた。表情は依然として平静で、まるで先ほどの小競り合いは、彼女にとって取るに足らない出来事だったかのようだ。


一条竜也は、側に立っていた黒田哲也に、目配せで退室を促した。会議室のドアが静かに閉じられ、広大な空間には、二人だけが残された。竜也はすぐに口を開かず、内線電話を取り上げ、短い指示を出した。


間もなく、先ほどの会議で最も態度が曖昧だったり、明らかに保留の意を示していた数名のコア幹部、そして島田が、再び会議室に呼び戻された。


彼らは、若頭が何を企図しているのか分からず、互いに顔を見合わせた。しかし、静かに元の席に座っている鈴原桜を見た瞬間、彼らの胸中には、漠然とした予感が走った。


竜也は、彼らを着席させなかった。主座の前で、彼は両手をスラックスのポケットに深く差し入れ、その眼差しは、冷たい刃のように、目の前に立つ、組織内で影響力を持つ数名の幹部たちをゆっくりと射抜いた。


「俺は、最後にもう一度言う」彼の声は高くなかったが、その一語一語には、重く、揺るぎない力が宿り、静寂な空気に響き渡った。「彼女を疑うことは、俺を疑うことだ」


彼の視線は、ついに島田の顔に固定された。その眼光は、まるで人の心を貫き通すかのようだった。


「続けたくない者は」竜也の口調は一切の感情を含まない。しかし、その平静さこそが、底知れない恐怖を喚起させた。


「今すぐにでも、指切ゆびきりを提出して、組から去るがいい」


指切ゆびきり」――それは極道社会における、最も厳格な断絶と謝罪の儀式だ。少主の態度は、彼らが想像していた以上に強硬であり、譲歩の余地は微塵もなかった。


幹部たちの顔色は、一様に変わった。島田は、唇を動かしたが、竜也の絶対零度のような視線の下で、何も発することができない。彼は、他の幹部たちと共に、深く頭を下げた。


「滅相もございません、若頭!」彼らの声には、わずかな震えが混じっていた。彼らは、鈴原桜という女性の地位が、単なる寵愛ではなく、一条竜也の命脈そのものであることを、この瞬間、決定的に悟った。彼女への軽蔑や妨害は、若頭への命懸けの挑戦と見なされるのだ。


竜也は、それ以上の言葉を費やさなかった。彼は、ただ冷たい沈黙で、彼らを支配した。


幹部たちは、解放されたかのように、再び桜を見ることもなく、恭しく一礼して急いで会議室を後にした。


部屋に二人だけが戻ったとき、竜也は初めて桜の側へと歩み寄った。彼は、先ほどまでの威圧的な態度を完全に収め、ただ彼女を見下ろした。


「疲れたか?」彼は、会議の内容には一切触れず、彼女の体調だけを気遣った。


鈴原桜は顔を上げ、彼の目を見つめた。彼女は理解していた。彼が今、あえて最も過酷な手段を選んだのは、彼女がこの場所で、誰にも邪魔されず、安全に力を振るえるようにするためだ。


「大丈夫です」彼女は、静かに首を横に振った。


その時、会議室のドアが再びノックされ、黒田哲也が戻ってきた。彼は、まず竜也にではなく、鈴原桜に向かって歩み寄った。その態度は、先ほどよりもさらに恭しく、心からの敬意が込められていた。


夫人おくさま」黒田は低く、誠実な声で言った。「これまでの無礼、どうかお許しください。今後、黒田哲也と私の配下は、若頭の命令のみならず、奥様個人のご指示に、すべて従います」


それは、彼の個人的な忠誠の誓いだった。竜也の命令だけでなく、桜が会議で見せた能力と度胸に対する、彼自身の評価と心服の表明だった。


鈴原桜は、目の前で頭を垂れる黒田を見つめ、そして、傍らに立つ、山脈のように頼もしい竜也を見上げた。彼女の心は、微かに、しかし確かに動いた。


彼女は知っていた。この茨の道の上で、自分はもはや孤独な戦士ではないのだと。

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