町中の景色は
「おい坊主。そろそろ着くぞ!」
ウィルさんに肩をゆっさゆっさと揺らされる。
まだ眠いな......そういえば、バイト帰りだったっけ。なんだか思い出して眠気が。
「あれがノーディアの町だ。」
「おぉ......」
眠たい目をこすって馬車の外を覗く。
街道の先には門があり、柵で囲われた町が見えてきた。
一軒家や教会、石でできた塔なんかも見える。あれがノーディアの町か。
「結構大きいんですね。」
「だろう?でも、王都はこれよりも何倍もでっけえぞ!」
王都があるのか!それは行ってみたいな。それよりも....
『ぐぅ~......』
「ガッハッハ!!坊主、そういえば何も食べてないんじゃないか!?」
「お恥ずかしながら.....」
腹の音が鳴ってしまった。そういえば夕飯前だった。くう、恥ずかしい。
「なら昼飯くらいは食わせてやる!俺たちも飯だしな!」
「えぇ!?さすがにそこまでは悪いですよ....!」
「なら貸しひとつだ!坊主が強くなったら返しに来い!」
なんていい人たちなんだ。おいおい、優しすぎる。
「.....それなら、お言葉に甘えて。」
「お前はなんだかでけえ男になる気がするしな!いいってことよ!」
ウィルさんが豪快に笑う。ほんと、いい男だ。
僕たちのを乗せた馬車は門をくぐり、ノーディアの町へと入る。
町中は地面が整備されていて、レンガ調の道路や木造の街灯が並んでいる。
本当に異世界なんだな....っと!?あれは!
「ウサギ...?兎人?」
「なんだ坊主、亜人を見るのは初めてか?ありゃウサギの亜人だな。国によっちゃ亜人差別なんてもんもあるが、この国はそういうのがないからな。ああやって普通に生活してんだ。」
も、モフりた.......じゃなくって、すごい......!異世界だ!
「ほら、そろそろ着くわよ!」
リルさんの声で現実に引き戻される。
あぶないあぶない。
初めて食べた異世界の料理は鶏肉?のステーキとサラダ、そしてパンだった。
正直に言おう。美味かった。いやこれなんのスパイス使ってんの!?それともこの世界の肉ってこんな美味いのか!?
「おいおい、そんながっつかなくても飯は逃げてかねぇぞ?」
「んんっ.......!!ふぱっ!は、はしたないところをすみません....」
「いやいや。若い子はこのくらい活力がある方が、見ていて楽しいですねえ」
グランさん、あんたそんなお歳なの....?
と若干失礼なことも考えつつ、お腹いっぱいになった。
「本当に何から何まで、ありがとうございました。」
「いいってことよ!また会ったらこんどは冒険しような坊主!」
「元気でやるのよカナトくん!」
「はい!」
かっこいい人たちだ。このセリフ何回目だろうか。
さて。
ウィルさんたちとは町中で別れることになった。
ウィルさんたちは元の任務のグランさんの護衛を完遂すべく、お屋敷へ向かうらしい。グランさん、見た目以上にすごい商人なのかもしれない。
僕はというと、この世界で生きていくためにお金を稼ぐ手段を得ることにした。
リルさんは「なら冒険者になりなよ!すぐに登録できるし、ノーディアにギルドもあるわよ!」と言っていた。
ということで冒険者ギルドを探すことにした。しまったな、場所を聞いておけばよかった。
まあ時間はあるしゆっくり探そう。
「......絶対ここだ。」
少し歩いて、僕はある建物の目の前で止まった。
なぜって?そこにはデカデカと剣と盾が交差する看板が掲げられているのに加えて、武装した人がベランダの席にわんさかいたからだ。
「わかりやすすぎるだろ.......」
両開きのドアを開けて入る。そこは木造で、高い天井の建物だった。奥にはカウンターがあり、右手側にはさっき見えたベランダ、左手側には大きな掲示板があり何か書かれている紙が貼りつけられている。
「おお.....さすがに圧巻だな。それで、どこにいけば登録できるんだろう。」
そう考える僕の脇で、なにやら揉めているのが聞こえてきた。
「グへへ、いいじゃねえかお嬢ちゃん。女一人でこんなとこあぶねぇぜ?」
「あぁ....俺たちが手とり足取り教えてやるよ。時間をかけてじっくりとな!ブヘヘ!!」
ふと視線を流すと、巨漢の男二人組が女の子に向かって手を伸ばしていた。
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