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妖精王の愛し子、世界樹のふもとで魔導具屋さん始めます!  作者: るあか
第五章 強さを示して

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76話 繋がらないこともある

 ローラとラウルさんの後をこっそりと尾行した私たちは、城下町の街並み全体を見渡せる高台へと辿り着いた。彼女らは高台の手すりに手をかけて並んで風景を眺めている。その瞬間、私の中である後悔が生まれた。


「そう言えば、今日の出発前にラウルさんに聞かれてたんだよな……『フリシア城下町にはどこか落ち着ける場所はある?』って……」

 前の2人に聞こえないよう声のトーンを落としてそう呟くと、ホノカちゃんが「それでこの高台を教えてあげたのね? すごくロマンチックな場所……」と興奮気味に答えた。


「こ、これってあれだよね……ラウルさん、ローラに告白しようと思ってるのかな」

 と、テオ。それに対しクウガがなぜか悔い気味に突っかかる。

「そうとは限らねぇだろ。ただローラが疲れたっつっただけかもしんねぇし」

 その反応を見た私はクウガが少なからずローラのことを意識していることに気付き、テンションが最高潮に爆上がりしていた。そんな今にも叫んでしまいそうな私の口を、アンネさんがそっと塞ぐ。


 すると、ここでラウルさんが「なぁ、ローラ」と緊張気味に会話を切り出したため、私たちはもう少しだけ近づいて、全員お口にチャックをした。

「何よ、そんな改まって……」

「……ローラはまだ、カーネ族に対しての怒りや幻滅みたいなものはあるか?」

 ラウルさんが真剣にそう尋ねると、ローラはぷっと吹き出した。

「そんなものとっくにないわよ。まさか、ラウルが私のお店を手伝ってくれてるのって、償いとかってことなの?」

 

「いや、違う。俺がローラの店を手伝っているのは、少しでもお前の力になりたいからだ。それで、その……お前は将来的にカーネの集落に戻ってくる気はないのか……?」

「……将来的に戻る? 私はカーネ族のことは嫌いじゃないけど、戻るつもりはないわよ。もしかして私の両親が何か言ってた? この前帰った時は何も言ってなかったけれど……」


「そ、そうか……。いや、これは俺が勝手に考えていたことなのだが……将来的に、その……長の家に嫁いだりとか……」

 ラウルさんが頬を赤らめてそう言うと、ローラもまた「えっ!? それって……あなたと結婚するってこと?」と顔を真っ赤にした。

「そう……俺は、将来的にカーネの長を継ぐつもりだ。その時には、ローラも俺の妻として隣にいてくれないだろうか」

 

「!」

 ついに放たれたプロポーズに、その場の全員が顔を真っ赤にして固唾(かたず)を呑んで見守った。


⸺⸺ローラは、勢い良く頭を下げた。


「ごめんなさい!」

「!」

 ローラ、断った! クウガの方を見ると、ちょっとホッとしている顔をしていて思わず顔がニヤける。ごめんね、ラウルさん。


「や、やはりダメか……。そんな気はしていたんだ」

 しょんぼりするラウルさん。そりゃそうだ、告白失敗しちゃったんだから。

「ごめんね、ラウル。あなたの気持ちは嬉しいけれど、私はその気持ちに応えることはできない。だって私、お店が楽しすぎて、シェアハウスでの暮らしが楽しすぎて、他での暮らしなんて考えられないの」


 “シェアハウスでの暮らしが楽しすぎて“


 そのローラの言葉に、思わずジーンとくる私。テオとクウガもほっこりと微笑んでいた。


⸺⸺しかし、次のローラの言葉でクウガと私が絶望のどん底へと突き落とされることになる。


「それに私、結婚とかそう言う男女の関係? って、良く分からなくて……恋愛もなんかめんどくさそうだし、結婚はいいかなって思ってるの」


「「!?」」

 私とクウガに特大の落雷が降り注ぐ。私の脳内にはローラの“恋愛もなんかめんどくさそうだし“という言葉が響き渡っていた。つまり、ラウルさんだけではなく、クウガもまた“脈なし“ということが確定してしまった。そんな彼もさっきまでホッとしていたくせに今は魂が抜けた抜け殻のようになっていた。


「あああああっ!」

 私は思わず絶望の声を上げてしまう。その瞬間、ローラとラウルさんが揃ってこっちを振り返った。


「い、今の悲鳴何!? シル……? もしかしてそこにいるの……?」

 ローラに名前を呼ばれてしまい、レンガの壁に隠れていた私たちは観念してゾロゾロと顔を出した。そんな私たちを見て、ローラもラウルさんもギョッとしていた。


「ちょ、シルどころかみんないるじゃない……! っていうかシル、あんたなんでそんな落ち込んでんのよ……」

「だって……私の()()()()が……」

「オシカプって何? 新しいスイーツ?」

 頭からハテナマークをたくさん飛び散らしてそう問いかけてくるローラに、みんなは「あはは……」と苦笑していた。カプって、カップケーキの略じゃない……。


⸺⸺それでも、私もローラに言わなくてはならないことがある。


 私は顔をブンブンと振って気を取り直すと、ローラへと向き直った。

「あのね、ローラ。私もシェアハウスでの暮らし、とっても楽しいよ!」

「俺も」

「僕も!」

 私がニッと満面の笑みを送ると、ローラもまた「もー、それ聞かれてたの普通に恥ずかしいんですけど」と照れて笑っていた。


⸺⸺


 世界は1つに繋がっても全部が全部繋がるわけではないから、今回みたいに繋がらないこともある。

 それでも、シェアハウスでの4人の絆は、確実に繋がっていたのであった。

 

 

 

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