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妖精王の愛し子、世界樹のふもとで魔導具屋さん始めます!  作者: るあか
第五章 強さを示して

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71話 新しい毎日

 キャットシルフィとワンカフェ開店から1ヶ月。


 ありがたい事にお客さんは全然減ることなく、毎日大盛況。

 むしろ、各国の王様がお店の宣伝をしてくれていることもあり、遠方からもお客さんが押し寄せていた。


 それでもホノカちゃんはどんどんと接客にも慣れてパッパッとレジをこなし、お客さんと世間話をする余裕まで出て来ていたため、今は1人でレジを捌いてもらっている。


 そして、ゲリラ的に発生する“ファムのレジ“も大好評。決して手際も言葉遣いも良くないけれど、それが癖になるというお客さんが多かった。


「ん? あんた、昨日も来たのだ? これ、こんなに買ってどうするのだ」

「とっても便利なので親戚にあげようと思っているんですよ♪」


「ふーん。なんでも良いけど火の取り扱いには注意するのだ。合計で8000C(クレド)なのだ」

「えっと、1万クレドでお願いします」


「1万クレド……お釣りがいるのだ。えーっと……2000クレドなのだ、ちょっと待つのだ」

 レジをガサゴソと漁るファムをうっとりとした表情で見つめるお客さん。そして、両手で紙幣を必死に掴むファムを見てキュン死寸前になっていた。


⸺⸺


 お店もホノカちゃんに任せられるようになって来たので、私は他国に出張でワゴン販売に行ったり、私の故郷である人間族の国、フリシア王国にも魔導具を売りに行ったりしている。


 フリシア王国では私のお父様である貴族商人のローザン伯爵が城下町で魔導具を売ってくれている。

 初めは皆得体の知れない道具に警戒をしていたそうだけど、お父様の必死の努力でその有用性も瞬く間に広がった。


 今では月に1度の販売を待ち構えていたお客さんにより、販売開始から30分で完売してしまうそう。これにより万年貧乏だったローザン家も、ほくほくと温かくなってきたんだって。


⸺⸺


 出張販売やフリシア王国に用事がない時は、店内でレジを手伝ったり、テオの素材集めに同行したりしている。


⸺⸺世界樹のダンジョン、初級の火山洞窟B19F⸺⸺


「テオ、本当はもっと下層に行きたかっただろうに、私に付き合ってくれてありがとね」

「ははは、良いよ。たまにはこうやって上層で結界を張りながらのんびり採取をするのも悪くない」

 そう言うテオはすっかり強者のオーラが出ている。


「全く、テオはシルフィに甘いんだからホント……」

 テオの相棒である半魚猫のプラムはそう言ってはぁっとため息をついた。

「そういうプラムはテオに甘いのだ」

 と、ファム。


「何よっ、うるさいわね!」

 ケットシー2匹がガミガミと言い合いになるのもいつものことだ。喧嘩するほど仲が良いと言うやつだ。


 そこら中に生えている真っ赤な火炎草をプチプチとチミりながら、テオと2人でのんびりダンジョン内を練り歩く。


 すると、ちょっとだけ強そうな鎧の騎士が仁王立ちで通路を塞いでいるポイントに遭遇をした。


「うわぁ、こいつ、よく小部屋の前とかにいる奴じゃん。今日はこんなところにいる」

 確か前にもこんなことがあって、この魔物の真横をカニさん歩きで通過したんだよな。


「んー、邪魔だね。さすがにコイツは討伐していこうか。シルフィは下がっていて」

 そう言って魔法杖を構えるテオ。しかし私は彼に見せたいことがあって、それを否定した。


「あっ、待って待って。こう言う時はね、こうすれば良いんだよ。ファム、結界解かないでね」


 ファムにそう話しかけると、彼はプラムと取っ組み合いをしながら「またあれやるのだ? シルフィ、変なスリルが好きなのだ」と気だるそうに返事をした。


 私はテオが見守る中、そーっと鎧の魔物へと近づいていく。そして、魔物をガン見しながら通路の壁にピタッと張り付き、わずかな隙間をズリズリとカニさん歩きで通過して行った。


「あははははっ、何それ! シルフィって今までそうやって乗り切っていたの!?」

 お腹を抱えて爆笑するテオ。良かった、笑ってくれなかったらどうしようかと思った。


「テオも結界があるんだからできるはずだよ、ちょっとやってみてよ!」

 鎧の魔物の後ろからそう叫んで伝える。テオは「えーっ、倒せば良いのに」と言いながらも同じように魔物をガン見しながらカニさん歩きをしてくれた。


「ね、魔物全然気づかないでしょ? 結界ってすごいよね」

「そうだけど、魔物の顔って見る必要ある?」

 テオは再びお腹を抱え始める。


「それはほら、万が一こっちを向いたら気づかれたってことだから、ダッシュで逃げないとじゃん」

「あー、そう言うことかぁ……あはは、おもしろっ」


 テオと笑い合っていると、ファムがプラムと共に魔物の頭上をスイーっと通過してきた。


「シルフィ、珍しいのだ、ティターニア様からお呼びがかかっているのだ」

「えっ、ティターニア様から?」

 テオと顔を見合わせ、首を傾げる。


「なんだろうね、僕も行っていい?」

「良いそうなのだ。今から行くのだ」


「分かった、行ってみよう」

 ティターニア様の急な呼び出しに素材集めは終了し、テオと共に世界樹の間へと向かった。

 

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