69話 開店準備
それからしばらくは、従業員であるホノカちゃんとアンネさんと共にお店の開店準備を進めた。
殺風景だった店内に商品の見本を展示していったり、テオとクウガ率いる冒険者たちが集めて来てくれた素材を使って在庫を大量生産したり、それを管理する表や仕組みを考えたり……。
1階のローラも同じようで、彼女はカーネ族の族長の息子であり幼馴染のラウルさんと共にカフェの開店準備をしていた。ラウルさんは警備員として働きたいとうるさかったので、雇ったそう。
ラウルさんはローラのことが好きだと思う。一目瞭然。ホノカちゃんとアンネさんともよくその話で盛り上がっている。
だけど、実は私の最推しは“クウガ×ローラ“なんだよ……!
正直この2人はお互いにお互いをどう思っているのか、果たして異性として見ているのかが、よく分からない。
アンネさん曰く「年頃の男女がお互いを意識していたら、シェアハウスをしようなんて思うでしょうか」とのこと。
でもホノカちゃんは「お兄ちゃんは逆にラウルさんにローラさんを取られたくなかったから、一緒に住む決断をしたのかも」とも言っていた。
とにかく、このどっちとも分からない焦ったい感じが、推せる……!
ファムは「2人に直接聞くのが1番早いのだ」と爆弾発言をしていたので、絶対に聞くなと、3人で全力で止めた。
おっとっと、話が脱線してしまった。
そうそう、開店準備を進めていたんだ。私のお店もローラのお店も開店準備が整ったところで、次は両店の従業員で安らぎ亭の開店準備の手伝いにいった。ルシールさんとは一緒に開店させようと約束をしているし、客室の魔導具の設置も引き受けているから。
⸺⸺安らぎ亭、5階⸺⸺
「すごい、5階から上はスイートルームなんだ……!」
ファムと一緒に高級ホテルのような絨毯の廊下を歩き、テンションを上げる。
「えっと、この部屋から順番に天井にシャンデリアをくっつけていけば良いんだよね」
「そうなのだ。この階の部屋全部やるのだ」
ファムがマップを両手で抱えながらそう答えてくれた。
「了解。お邪魔しまーす」
501号室へと足を踏み入れると、鬼族の若い青年が飾り棚へ小物を並べていた。
「あっ、シルフィ店長! お疲れ様です!」
「イサギさん、お疲れ様! イサギさんももう、この宿屋の寮に引っ越して来てるの?」
彼はツキカゲの里のイサギさん。宿屋の従業員としてルシールさんに雇われて、同時にテオの素材集めメンバーにも志願してくれた。つまり、私にとっても仕事仲間だ。
「はい、一昨日引っ越して来ました。明日から素材集めにも参加する予定です」
「そうなんだ、ありがとう、助かります」
「いえ、俺も長のように人としても、戦士としても強くなりたいので、頑張ります!」
「うん、頑張ってね!」
クウガは今ツキカゲの里の若い人たちの間で、長というより憧れの的になっているそう。
そのため、この宿屋にツキカゲの里出身の若い鬼族たちの応募が殺到し、ルシールさんは片っ端から採用していったそうだ。
新しく宿屋の従業員として20人を採用したそうだけど、そのうちの半分をツキカゲの里の鬼族が占めており、その鬼族全員が素材集めメンバーだ。
クウガは「自分の道は自分で決めろっつっただろ」ってため息をついていたけれど、憧れの人と同じ道を歩みたいと言うのもまた、自分で選んだ道だと私は思う。
私がイサギさんの目の前で天井に魔導シャンデリアをクラフトして見せると、イサギさんは「うおぉ、すげぇ!」と感動してくれていた。
⸺⸺
そんなこんなで宿屋の開店準備も終わり、開店を明日に控えた晩。
安らぎ亭と私たちのお店に関わるすべての人が、『大樹亭』の2階へと集まった。今晩はこの2階のフロアを貸し切って前夜祭だ。
⸺⸺酒場『大樹亭』⸺⸺
安らぎ亭のルシールさんとダグラスさん、そして20名の多種多様な従業員。
私のお店の従業員、私含めて3名。テオとクウガ率いる、カーネ族のイヌ耳の獣人族、魚人族、鳥人族、そしてエルフ族の冒険者たち総勢26名。
ローラのお店の従業員2名。ケットシー4匹。来賓でオベロン王。
50名を超える関係者がこの場に集い、ルシールさんの挨拶の後、みんなで乾杯をした。
⸺⸺遂に明日、新しい安らぎ亭と私たちのお店が動き出す。
魔導具を開発して、宿屋に来たお客さんに魔導具を売ったことがきっかけとなり、ワゴン販売を始めて、ここまで来た。
ローラのカフェ、“ワンカフェ“。
そして、私の魔導具屋、“キャットシルフィ“、明日、開店です。




