61話 三大精霊の井戸端会議
⸺⸺クウガが、落ち込んでいた。
⸺⸺ピスキス城、玉座の間⸺⸺
「ど、どうしたの、クウガ!?」
「お腹でも壊した?」
と、ローラ。
四つん這いになっているクウガを、テオが覗き込む。
「顔色は、悪くないみたいだけど……」
ニコラス王も心配をしてクウガを見つめていると、クウガはやがてポツリとこう呟いた。
「俺……気付いちまったんだ……。俺だけ……加護がねぇ……!」
「……あ」
と、一同。
「大精霊の加護など、本来そうポンポンと授けられるものではないのだが……4人で行動している仲間内の3人が大精霊の加護持ちとは……実に珍しい境遇だな」
そう言うニコラス王に私たちは「確かに……」と相槌を打った。
しかも、多分大精霊の加護っていうのは望んでもらえるものではない。だって、ちょうだいって言ってもらえるなら、みんな何かしらの加護が欲しいはずだ。
「私、ティターニア様に聞いてみる。ファム、ティターニア様と連絡取れる?」
「取れるのだ」
「私も聞いてみるわ。エフォット、お願い、サラマンドラ様に繋いで」
「ったく、しゃーねぇなぁ……」
「僕も! プラム、ティアマト様に」
「もう繋いでいるわよ♪」
そして、今ここに四大精霊の内の三体の意思が集った。
『皆、久しぶりですね。まさか、テオが海竜の涙を、ローラが火山竜の聖炎を授かるとは……』
と、ティターニア様。ティアマト様が反応する。
『我がテオバルトに授けようと思ったのは、ティターニア、そなたの影響だ』
『俺もだぜ、ケットシーを連れていたからよ、話を聞いたらマブダチの妖精だっつーからよ』
と、サラマンドラ様。口調がイケイケだ。
「あの、どなたか……クウガに加護を授けることは……」
私が遠慮がちにそう訪ねてみると、大精霊たちはしーんと静まり返ってしまった。
「い、良いんだ……みんなありがとよ。俺は、めげずに頑張るぜ……」
クウガはそう言って更にガーンと落ち込む。言動が全く噛み合っていない……!
すると、ティターニア様が慌ててこうフォローをした。
『違うのです。クウガ、今は皆あなたから、あなたという情報を感じ取っていたのですよ』
「……情報?」
と、クウガは首を傾げた。
『そなたは、ツキカゲの民だな』
と、ティアマト様。
「あ、はい……そうです」
『だったら、縁もゆかりもねぇ俺たちに頼むよりも、もっと適任がいるって話だ』
「それって……風の大精霊のエアリアル様ですか?」
と、テオ。大精霊の全員が『そう』と反応を示す。
「けど、俺らツキカゲの民は、風の大精霊様の加護結界を拒否してしまっていて……。今更どの面下げてって、感じじゃないっすか?」
確かに、クウガの言う通りだ。私もそう思う。
しかしティターニア様は『だからこそですよ』と返事をした。ティアマト様が続く。
『エアリアルは、ツキカゲの民への加護結界を諦めてはいない。いつか、仲直りが出来る日が来ることを望んでいる』
「マジっすか……! なんて、器の大きい……」
『そのためには、ツキカゲの民も変わる必要があんだろ。クウガ、てめぇが長になってツキカゲの民を変えろ。そうすれば、エアリアルもお前を認めるはずだ』
と、サラマンドラ様。
「はい! 俺は、ツキカゲの長になります。そにために今、海底のダンジョンを制覇したところなので!」
『やるじゃねぇか。その調子で天空のダンジョンも制覇してエアリアルに媚び売ってこい』
サラマンドラ様、言い方……!
「はい、ありがとうございます、サラマンドラ様!」
クウガが立ち直って元気にお礼を言うと、3体の大精霊は満足そうに通信を切った。
⸺⸺
「クウガ君のおかげですごいものを見たよ。大精霊方が3体もこの場に集うとは……」
と、ニコラス王。感覚が鈍って来てしまっているけど、多分、めちゃくちゃすごいことなんだと思う。
「あはは、そうっすね……みんな、ありがとうよ。おかげで立ち直れたぜ」
「うん、クウガはそう出なくっちゃ」
私がそう言うと、テオとローラもうんうんと頷いた。
「で、あれば、次の行き先は決まったようだね? 親書を用意するから、ちょっと待ってもらえるかね」
ニコラス王はそう言って目の前でサラサラと手紙を書き始める。そして、私とローラとテオに1通ずつ親書を託してくれた。
しばらく滞在したピスキス王国。また落ち着いたらワゴン販売に来ることを約束して、私たちは都市国家ホークアイズへとひとっ飛びした。




