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妖精王の愛し子、世界樹のふもとで魔導具屋さん始めます!  作者: るあか
第五章 強さを示して

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55話 ツキカゲの民

 私たちの帰り際に、ホークアイズ王がクウガを呼び止めた。

「クウガ、てめぇ、もしかして“ツキカゲの里”の鬼か?」

「は、はい、そうです! 陛下はツキカゲの里をご存知なんですね……」

 クウガが緊張気味にそう返すと、テオが「えーっ! クウガって“ツキカゲの民”だったの!?」と驚いていた。


「そのツキカゲの里って、ここから近いの? でも、クウガ、あなたはホークアイズの国のこと知らなかったわよね?」

 と、ローラ。クウガが答える。

「近くはねぇよ。ただ、俺の故郷のツキカゲの里はギリギリ風の大精霊様の加護の範囲なんだ」


「クウガがウチの国を知らねぇのはある意味当たり前だ。だが、ツキカゲの里は“風の大精霊エアリアル”の加護範囲の国の中ではめちゃくちゃ有名だ。なんたって、精霊の加護なんぞ要らねぇっつって、加護を拒否ってる一族だからな」

 ホークアイズ王はそう言ってあっはっはと豪快に笑った。そんな彼を見てクウガははぁっと深いため息をついた。

「そうなんすよ……バカみたいですよね?」

「バカなのだ」

 と、ファム。

「まぁ、生き方はそれぞれだからな。悪く言うつもりはねぇが……変わってはいるな」

 ホークアイズ王は素直なファムに吹き出しながらも、そうフォローをした。


「加護を拒否ると……どうなるの?」

 私はそう疑問をぶつける。オベロン王が答えてくれた。

「簡単に言えば、人里にまで魔物が出る」

「えーっ、それじゃぁ安心して暮らせないね……あっ、だから変わってるのかぁ」


 この大陸は人の住む町や人の通る街道には魔物が出ない。あんまり深くは考えたことがなかったけど、それは四大精霊の加護によるものだったのか。


「でも、何で加護を拒否ってるの?」

 と、ローラ。

「……里の(おさ)の決めた(おきて)だ。長は他所からの(ほどこ)しなんざ受けねぇって頭の固いクソジジイでさ……。けど、長が一番強えから仕方ねぇんだ。その掟を変えたかったら、自分が長になるしかねぇんだよ」


「長って言うのは、血筋じゃないんだ?」

 私はクウガへそう尋ねた。

「おうよ。長になりたかったら、今の長をぶっ殺すか、巨大ダンジョンの金の勲章を今の長より上回らなきゃなんねぇ。長が病気とかで勝手にくたばって死んだ場合はその時勲章の数が一番多いやつが次の長になる」


「あっ、だからクウガは世界樹のダンジョンを制覇して金の勲章が欲しいんだ!?」

「そうだ。ツキカゲの民は、強くなること以外の理由で里を出てはいけない。もし里を出た理由がそれ以外だってバレると里から刺客を送られる。だから、戦いたくねぇ奴は一生その魔物だらけの里の中で怯えて暮らさなきゃなんねぇんだ。俺の妹みてぇにさ……」


「刺客……殺されちゃうってことか……。ってか、クウガ、妹がいたんだ」

 と、私。ローラは「あんたの妹、私よりもずっと辛い境遇じゃない……」と心配そうな表情を浮かべた。

 確かに、ローラはまだ家出が出来たけど、クウガの妹はそれすら許されないんだ。


「他に家族は?」

 と、ホークアイズ王。

「父と母がいてどっちも強いので、妹は両親に守ってもらってるはずです」

「ん、そうか」

 さり気なくクウガの妹を気遣う優しい一面もあるホークアイズ王。


「今の長は金の勲章をいくつ持っているんだい?」

 と、魚人のニコラス王。

「金の勲章はここの“天空のダンジョン”の勲章1つだけです。同じ勲章で言うと世界樹のダンジョンの勲章の方がランクは高いので、そこを制覇すれば長にはなれるはずです」

「なるほどなぁ。しかしクウガ君。急がば回れという言葉は知っておるか?」

「あっ、はい、一応……」


「我が領土内にある“海底のダンジョン”は、巨大ダンジョンの中でも一番階層が少なく、難易度が低い。案外海底のダンジョン、天空のダンジョンを制覇してから世界樹のダンジョンの攻略を始めた方が、早く簡単に制覇出来ることもあるぞ。テオバルト殿下とシルフィ嬢の友達の君ならいつでも歓迎しよう。ぜひ検討してくれたまえ」

「ニコラス陛下……ご助言とお気遣い、ありがとうございます!」


「クウガ、素材集めよりもダンジョン攻略優先してやってね。それがクウガの一番やりたい事なんだから」

「そうよ、早く妹を自由にしてあげてよ」

「僕も今はまだシルフィのお店も完成してないし、ダンジョン攻略手伝うよ」


「シルフィ、ローラ、テオも……ありがとな。お前らは家のことちゃんとけじめをつけたもんな。俺が最後になっちまったし……気合い入れて行くか! よし、まずは海底のダンジョンの攻略からだ!」

 クウガは両手で作った拳をガンッとぶつけて気合いを入れた。


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