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妖精王の愛し子、世界樹のふもとで魔導具屋さん始めます!  作者: るあか
第四章 家族

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35話 武道を重んじる一族

⸺⸺ユグドーラ城、応接間⸺⸺


 部屋に入るなりオベロン王は「少し待っていなさい」と言って出て行ったため、私はふかふかのソファにもふっと埋まって紅茶とブラウニーをいただいていた。


「このブラウニー美味しい……紅茶も良いけどローラのコーヒーとも合いそうだな」

「にゃぁはこのふかふかソファが欲しいのだ。シルフィ、お家に帰ったらケットシーサイズのこのソファを作って欲しいのだ」

 ファムはそう言ってソファの上でゴロンゴロンしていた。


 すると、持ってきていたクラフトレシピブックがほわーっと光る。

「……もう、ファムが余計な想像させるからレシピを思い付いちゃったよ……」

「にゃぁ!?」

 ファムが光っているページを開くとそこには新たに『妖精サイズの王宮ソファ』のレシピが追加されていた。


「やった、やった、やったのだー♪ にゃぁも今日からもふもふ生活なのだ♪」

 ファムはいつものように小躍りしていた。


「シルフィ、入るぞ」

 扉の向こうからオベロン王の声が聞こえてきたので「はい!」と返事をすると、オベロン王が大きな羊皮紙を持って部屋へと入ってきた。


 彼がその羊皮紙をテーブルの上に広げると、そこには世界樹を中心とした地図が広がっていた。

「地図だ、世界樹が真ん中にある!」

「そう、我がユグドーラ王国とその周辺の地図だ。この世界樹の辺りがこの“ユグドーラ城”とお前の住む“世界樹の(ふもと)”だ」

 オベロン王が指でなぞりながら丁寧に説明してくれるので、私はうんうんと相槌を打ちながら真剣に聞いていた。


「世界樹の周りには王都ユグドラシアが、そして我がユグドーラ王国は周辺の大森林と北の方の土地を領土としている。この辺りまでだな」

「ふむふむ」


「さて、本題だ。今回のお前への仕事の依頼は、この“世界樹の大森林”の中にある“カーネ自治領”という集落からだ」

「カーネ自治領……」

「カーネ族は獣人の一族で武術に長けており、各地の冒険者ギルドで傭兵や用心棒を派遣するなどして生計を立てている。このユグドーラ城にいるイヌ耳の兵士もカーネ族の者だ」

「イヌ耳……!?」

 それってローラじゃん……。


「うむ。我が兵士がお前の魔導街灯に感銘を受けて、故郷の自治領の族長に相談したところ、ぜひとも自治領にも魔導街灯を普及させてほしいとのことだ。つまり、カーネ族の長の直々の依頼ということになる」

「獣人の、しかもイヌ耳の……。うん、私受けるよ」

 私は二つ返事でそう答えた。


「うむ。カーネ自治領にはそもそも街灯というもの自体がなく、(かがり)というもので外の灯りを確保している。前にクウガが言っていたあれだ」

「うんうん、覚えてるよ」

「ならば話は早い。今回は街灯そのものをイチから作ることになり、必要素材はカーネ族で自ら用意するとのことだ」

「えっ、じゃぁ私は、ユグドラシアの時みたいに手ぶらで行ってひたすら『クラフト!』って叫んで回ったら良いってこと?」


 私がそう言うと、オベロン王はふっと微笑んだ。

「言い方が少々あれだが、そういう事だ。楽勝だな?」

「うん、楽勝だ♪ 早速明日、そのカーネ自治領ってところに行ってみよう。自分のお店の在庫を確保してからだから……15時くらいになっちゃっても良い?」

「構わん。先方にも魔導具屋の仕事がある事は伝えている。その合間で良いそうだ。では明日、自分の仕事が片付いたらこの城に来てくれ。転送魔法で行くとしよう」

「はい、承知しました♪」


⸺⸺その日の晩。


 私はローラと約束していたので、2人で酒場の『大樹亭』でご飯を食べていた。


「あ、そうそう。オベロン陛下からの仕事は何だったの?」

「あっ、えっとね……」

 ローラに言ってもいいものか迷っていると、ファムが「カーネ自治領に魔導街灯を設置するのだ」と普通に言ってしまった。


「カーネ自治領……! そっか、それで今ちょっと言うのを渋っていたのね。守秘義務とかあるのかと思って焦ったわ。気を使わせてごめんね、シル。そこ、あなたの想像通り、私の故郷よ」

「やっぱり……?」

「前に私が実家を飛び出したって言ったからだよね。でも、自分の故郷が便利になるのは素直に嬉しいから、魔導街頭で埋め尽くして来てあげて」

 ローラはそう言ってふふっと微笑んだ。

「そっか……うん、分かった。カーネ自治領でのお仕事も頑張って来るよ!」

「ええ、お願い」


⸺⸺


 そして翌日の15時過ぎ。ユグドーラ城に行くと、オベロン王は“何かのボトル”を持って待っており、彼と私とファムの3人で転送魔法陣の上へと乗った。


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