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妖精王の愛し子、世界樹のふもとで魔導具屋さん始めます!  作者: るあか
第三章 魔導具屋さんとカフェ、始めます!
32/73

32話 魔法は想いの力

⸺⸺安らぎ亭、寮202号室⸺⸺


 早速クウガに素材集めをお願いして私は自室へと戻った。

「もうレシピブックが光っているのだ」

 ファムはそう言って机の上に置いてあったクラフトレシピブックのところへと飛んでいく。私の予想通りレシピブックは煌々(こうこう)と光を放っていた。


「やっぱりね。そうなんじゃないかって思ってたんだよ、どれどれ……」

 光っているページを開くと『魔導街灯』が追加されていた。

「やったのだ。もうこれで依頼達成も同然なのだ」

 ファムはそう言って机の上でバンザイをして小躍りしていた。


 しかし、私は納得がいかない。

「うーん……やっぱりそうかぁ」

「どうしたのだ?」

「あのね、この魔導街灯、ランタンとかみたいにボタンを押して火を灯すタイプだよね」

「そうなのだ。ワンタッチで便利なのだ」


「でもさ……これだと結局、毎朝晩ボタンを押しに来る人が必要なの、分かる?」

「それくらいにゃぁだって分かるのだ」

「それって……魔法を発動しなくて良くなっただけで、そこまで便利になってないんじゃないかって思うの。部屋は良いよ、明かりが欲しいときにポチッて付ければ良いから。でも、外は広いし、結局面倒くさいよ……」


「じゃぁ、どうするのだ?」

 ファムは難しい顔で首を傾げた。きっとこの世界ではファムみたいな考え方が当たり前なんだ。でも、私は……。


「外が暗くなったら勝手に火を付けてくれて、明るくなったら勝手に火を消してくれる方が、良くない?」

「にゃぁ!? そんなの生きている街灯じゃないと無理なのだ!」

「あははは、生きているって、そんな大げさな……!」

 ファムのせいで街灯がテクテク歩いているのを妄想してしまって、沸々と笑いが込み上げてくる。


「シルフィの発想はぶっ飛んでいるのだ。さすがに夢物語なのだ」

「うーん……そうかなぁ。だって、素材の仕組みを理解して使い方を想像するとレシピが追加されるでしょ? これって、つまり私の想像と連動してるってことだよね。そんなことが出来るんなら、勝手に明るくなってくれる街灯も作れそうなんだけど……あっ、そうだ!」

「にゃぁ!? 何か閃いたのだ!?」

 ワクワクしながらそう聞いてくるファム。しかし残念ながら私は首を横に振る。


「ううん。ティターニア様に、何か助言をもらおうと思って。ファム、ティターニア様を呼んでくれる? 今、時間あるかな?」

「にゃるほどなのだ。呼んでみるのだ」

 ファムの身体がほわっと光ると、その光はすぐにファムから抜けて空に浮かんでいた。


『はい、呼ばれました。あら、どうやら遂にオベロンが街灯の依頼を出したようですね。ずっと依頼したがっていたのですよ』

 ティターニア様はレシピブックの中身を覗いたのか、第一声がそれだった。

「あはは、オベロン陛下、我慢してたんだ……」

 いつも澄まして王の威厳を(かも)し出しているからあんまり想像出来ないな。


「ティターニア様、シルフィが勝手に付いて勝手に消える街灯を作りたいって言い出したのだ」

『勝手に付いて、勝手に消える……? どういうことでしょうか?』

「あのね……」

 私はさっきファムに伝えた話をティターニア様にも伝えた。


⸺⸺


『なるほど、それは確かに便利ですね♪ 火を付ける手間を省くことが出来れば、今まで火を付けて回っていた役人も遅くまで働かなくて良くなりますし、一石二鳥です』

「あれって役所の人の仕事だったんだ……」

『そうですよ。昼間は別の仕事をしてくれていて、暗くなってくると毎晩交代で火を付けてくれているのです』


「じゃぁ、やっぱりなんとかしてあげたいな。ティターニア様、私のクラフトスキルでそういう事が出来たりするかな?」

『そうですね。あなたのクラフトスキルは、極めて“魔法”に近いものだと私は感じています。魔法とは、魔力に想いの力を乗せることを言います』


「魔力に、想いの力を……」

 魔法は想いの力、か。なんだか素敵な響きだ。

『“攻撃魔法”や“回復魔法”は魔道書の魔法陣を想い描いて、その魔力を魔法杖に込めることで魔法陣が具現化し、魔法を放つことが出来ます。そして“生活魔法”は、実際に想い描いた事を具現化させています』


「ふんふん、あっ、生活魔法って……ルシールさんやダニエルさんがランプに火を付けたりしてたやつか」

『ランプに火を……そうです、それが生活魔法です。ただし想いを具現化することにも限界があるので、生活魔法は小さい効果に限ります。少し火を付けたり、植木鉢の花に水をあげたり……その程度です』


「少し火を付ける……こんな感じで良いかな……」

 私は手のひらを天井へ向けて、“火よ、付けー!”と、手のひらの少し上の空中に火が付いているのを想像してみた。

 すると、ポッと小さな火が空中に灯ったのである。


「あっ、出来た!」

『さすがですね! クラフトをたくさんしてきたことで魔力の操作も感覚で出来るようになっているようです』

「にゃんと、一瞬で生活魔法をマスターしてしまったのだ……」


『それを、クラフトのスキルにも応用をしてみてはいかがでしょうか?』

「想いの力を、クラフトする……?」

『ふふふ、かっこいいですね。そうです、想いの力をクラフトしてみれば、(おの)ずと答えは出てくるはずです』


「な、なんか……分かったような気がする! ありがとう、ティターニア様!」

『いいえ、どういたしまして♪』


 ティターニア様にお帰りいただくと、私は早速あれこれ試してみることにした。


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