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妖精王の愛し子、世界樹のふもとで魔導具屋さん始めます!  作者: るあか
第三章 魔導具屋さんとカフェ、始めます!

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31話 妖精王からの依頼と専属冒険者契約

「そう言えば、オベロン陛下は何か用事があったんじゃ……?」

 私がそう尋ねると、オベロン王は「うむ」と頷いた。

「シルフィ、お前に“魔導具屋”としての仕事を持ってきた。“安らぎ亭の魔導具屋”は冒険者の間でも話題になっている。そろそろ、私から依頼をしても良い頃だと思ってな」


「えーっ、オベロン陛下からのお仕事の依頼……!?」

 オベロン王、そんなこと考えていたんだ……!

「妖精王から直々に仕事の依頼なんて……すげぇな、シルフィ!」

「何を作るのか、めちゃくちゃ気になるわ……」

「妖精王だから、城の中の物かな……?」

 3人も興味津々だ。


「依頼したい魔導具は、この世界樹の(ふもと)内にある“街灯”だ。あれを全て魔導具に取り替えたい。出来るか?」

「街灯!」

 と、一同。

「毎日暗くなると、エルフの魔道士さんが炎の攻撃魔法で街灯に火を点けているよね!」

 私がこの町に来た初日にも火を点けているのを見たから、印象に残っている。


「あれ、当たり前の光景だったけど、今してみれば毎日毎日大変だよな。鬼は魔法が使えねぇから、俺の故郷は未だに手で(かがり)に火を点けてるしな」

 (かがり)とは、街灯のもっと原始的なやつだ。暗くなると松明(たいまつ)で順番に火を点けていくんだって、クウガが教えてくれたことがある。

「私の故郷もそうよ」

「僕の故郷はエルフの“街灯番”がいるよ」

 と、ローラにテオ。どの国も苦労しているんだ。


「オベロン陛下、私その依頼受けるよ。なんかレシピを(ひらめ)きそうな気がする」

 もしかしたらもう自室に置いてきたクラフトレシピブックが光っているかも。

 まずはこの世界樹の(ふもと)を、そしていずれはみんなの故郷を……。そんな野望が私の中に芽生えていた。


「うむ、お前なら引き受けてくれると思っていた。ならば、レシピを思い付いて準備が出来たらファムを使って私を呼んでくれ。そこで依頼の契約書を交わし、立ち会いでの作業といこう」

「うん、分かった! 今ある街灯は素材に使っていいの?」

「むしろ、素材として使ってもらえるとありがたい。撤去するのも手間だからな」

「了解!」


⸺⸺


 オベロン王は必要事項を伝えると、早速今日から訓練場に通いたいと言うテオと共にお城へと帰っていった。


 ローラは明日からの新作の準備で食材の買い出しに、私は、いつものように冒険者ギルドの依頼を受けに行こうとするクウガを引き止めた。

「クウガ、待って!」

「おうよ、どうした?」

「クウガってさ、冒険者ギルドでは、ダンジョン内の依頼を受けているんだよね?」

「おう、そうだぜ? ま、安らぎ亭の仕事も最初は冒険者ギルド経由で契約したけどな」


「あの、クウガがダンジョンに潜る理由って……何かあるの? あっ、言いたくないなら良いんだけど」

 冒険者ギルドでは、ダンジョン以外の依頼もたくさんある。それなのにダンジョン限定で依頼を受けているのは、お金稼ぎ以外にも何か理由があるんだろうなって、気になっていたんだ。


 クウガはふっと笑って答えてくれた。

「言いたくねぇなんてことはねぇよ。世界樹のダンジョンってさ、この大陸にあるダンジョンの中で一番深いんだよ。一番下は地下300階なんだぜ? 知ってたか?」

「えっ、300!? そんなに下まで続いていたんだ……。私、まだ39階なのに」

「ははは、しかもお前は俺とパーティ組んで、ボスは俺が倒してるしな」

「うん……」


「……俺はな、その300階のボスである“世界樹の番人”を倒して、“世界樹の番人を超える者”っつう勲章が欲しいんだよ。そのボスを倒すと必ずドロップする装飾品だ」

「最後のボスを倒すとそんな装飾品が……!」

「ほら、200階までは突破出来てんだ。この銀の勲章がその証だ」

 クウガはそう言って銀色のメダルのような物を見せてくれた。メダルの裏には『世界樹の上級へ辿り着きし者』という文字が刻まれていた。


「わぁぁ、すごい! じゃぁ、目標の300階まであとちょっとだね!」

「ははは。それが、210階のボスが倒せずに1年くらい止まってる」

「恐るべし上級……!」

「だろ? だから俺は、強くなるための修行も兼ねてダンジョン内の依頼を受けてんだ」

「そうだったんだ……教えてくれてありがとう!」


「で、お前もんなこと聞いたっつうことは俺に何かあるんだろ?」

「ありゃ、バレましたか……?」

 私はえへへ、と苦笑いをする。

「まぁな」


「あのね、私一人だと素材の供給が追いつかなくなってきちゃったの。特に、これからオベロン陛下の依頼の準備もしないとだし……だから、私の素材集めを手伝ってくれませんか? 魔導具屋と、冒険者の契約を結んでください!」

 ペコリとお辞儀をしてお願いする。

「おうよ。いいぜ!」

「即答だね!?」

 私がそうツッコむと、クウガはふっと吹き出した。


「即答されるとは思ってなかったのか。俺、ちょっと待ってたんだ。お前は自分で素材を集めるのが好きなんだろうなって思ってたから俺の方からは言えなかったんだけどさ。いつか、ちゃんと仕事としてお前の素材集めを手伝えたらなって、そう思ってた」

「クウガ……ありがとう……!」


「でも、クウガはクォーツスライムは倒せないのだ」

 ファムがそう言って私の頭に乗ってきた。

「あぁ、あいつ物理攻撃利かねぇからな……。水晶の欠片か」

「うん、最初は水晶の欠片だけを集めてくれる冒険者を探そうかなって思ってたんだけど、水晶の欠片は今まで通りコツコツ集めるし、それ以外の素材集めを手伝ってほしい」

 それが私のここ数日悩み抜いた答え。


「まぁ、水晶の欠片は中級ダンジョンなら初級よりは手に入る確率も高いから、俺も集められるだけは協力するぜ。ただ、やっぱクォーツスライムを倒しまくった方が効率は良いけどな」

「やっぱそうなんだね。うん、無理しない範囲でいいよ」

「つーか、その問題ならそのうち解決しそうだけどな。もうすぐ新人魔道士が誕生するだろ?」


 クウガに言われてハッとする。

「もしかして、テオのこと……!?」

「おうよ。あいつ、強くなりたいって、毎日身体鍛えてたんだ。それでもなかなか剣が振り回せるようにはならなくてよ、困ってたところに“魔力”だ。あいつ、すぐに魔法覚えて魔道士になるぜ? そん時はパーティ組んで3人で素材集めしてもいいよな」

「おぉぉ……適当な冒険者に声かけなくて良かった……。うん、今日の晩ご飯の時にでもテオに声掛けてみるよ!」


「なら、まずは俺と、冒険者ギルドでちゃんとした冒険者契約をしにいくか」

「うん! 行こう!」


 それからクウガと一緒に冒険者ギルドに顔を出し、専属の冒険者契約を交わしてもらった。

 時にはクウガに一人で素材集めに行ってもらい、時にはパーティを組んで一緒に素材を集める。クウガはそんな仕事仲間となったのであった。


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