30話 思いがけない発見
「ふむ、どちらも今日みたいな暑い日にはピッタリだな。むしろ暑くなくても欲しいと思う」
オベロン王にそう褒められて、私とローラは「やったね♪」とハイタッチした。
「そして、新入りがいるようだな?」
と、オベロン王。そうだ、テオは初対面だ。
紹介しようとテオの方を振り向くと、彼は緊張しているのかガクガクブルブルしていた。
「ありゃ、テオ、ガチガチだ……ローラとクウガもそうだったからしょうがないね」
「そりゃな……なんたって妖精王だからな……」
と、クウガ。ローラも「そうよそうよ」と相槌を打った。
オベロン陛下は「人を化物みたいに言うんじゃない」とツッコむ。
「オベロン陛下、彼はテオバルト・ホークアイズ。テオって呼んでね」
「ホークアイズ……? 都市国家ホークアイズの王族か……?」
と、オベロン王。さすが王様、周りの国の事も知ってるんだ。
「は、はい……一応第七王子、です……」
テオはシュンと縮こまる。さっきまでかき氷でキンキンしてたテンションはどこにいったんだ。
オベロン王はテオを不思議そうに見つめていた。もしかして、タカの翼じゃないとか思ってるのかな……。
やがて、彼は口を開きこう言った。
「テオ、お前は鳥人の見た目ではあるが、“魔力”を持っているようだ」
「えっ!?」
と、一同。鳥人族は魔力を持たない代わりに速く飛んだり出来るんだったよね。
「私も本来魔力を持たないはずの種族が魔力を持っているのを見るのは初めてだから、少々戸惑ってしまったが……。間違いない、お前の中には“魚人族の魔力”がある」
「え〜!? 何で魚人族!?」
びっくり仰天。って言うか、オベロン王って人の魔力の性質まで分かるんだ……。
「ぼっ、僕に魔力が……!? そんな、嘘だ……」
テオはパニックで失神直前だ。おめめがグルグルしているのが分かる。
「血縁者に魚人族はいるか?」
と、オベロン王。
「は、はい……母方の祖父が、魚人です……」
テオは目を回しながらもそう答えた。
「であれば、祖父の魔力を引き継いで来たのであろうな」
そう言うオベロン王に、私は「そんな隔世遺伝みたいなことあるの?」と、尋ねた。
「隔世遺伝はある。だが、それならば通常テオは“魚人族”として生まれてくるはずなのだ。鳥人族として生まれてきたからには、魔力は持たないはずだ。かなりのレアケースと言える」
前に種族について勉強をしたことがある。異種族間で子どもが生まれる場合は、必ずどちらかの親の種族になる。種族の特徴が混ざることはないらしい。
だから、オベロン王がさっき言ったように、鳥人族に生まれたら魔力は持たないし、逆に魚人族に生まれたら魔力を持つ種族なので、魔力があるはず。
「ぼ、僕には魚人族の血が流れているから……だから、飛べないのかなぁ……」
と、テオ。それに対しオベロン王が反応する。
「飛べない……? そもそもホークアイズの男児でタカではないのもレアケースだが、なるほど、種族因子がごちゃまぜになってしまっているのだな。それは……苦労したことであろう」
「うぅ、はい……」
目に涙をためてうつむくテオ。私はそんなテオを元気付けようとこう励ました。
「テオ! 魔力があるなら魔法が使えるね♪ 鳥人族なのに魔法が使えるって、逆にすごくない!?」
「そうよ、飛べなくたって、飛べる鳥人族よりすごいわよ!」
「だな、くぅ、テオがうらやましいぜ!」
ローラとクウガも一緒に励ましてくれる。テオはゆっくりと顔を上げて、涙を流した。
「僕……飛べないし力もないしで、それならせめて魔法が使えたら良かったのにって、ずっと思っていたんだ。なんだ僕……魔法、使えるのか……」
「練習は必要だぞ」
と、オベロン王。
「オベロン陛下……練習したら、僕も、魔法で戦えるようになりますか……?」
「魔力があるのだから、もちろん。興味があるのなら、宿屋の業務終了後にユグドーラ城の訓練場に通うといい。城の者には話しておいてやろう」
「は、はい……! ありがとうございます!」
そっか、テオは戦えるくらい強くなりたかったんだ。オベロン王と会えたことで魔力があることが分かって、テオは前に進めた。
良かったね、テオ。頑張ってね♪
あれ? そう言えばオベロン王って何しに来たんだっけ……?




