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13話 魔石の実験

⸺⸺翌日の業務終了後。


 私はクラフトレシピブックと魔石を洗濯かごに入れてファムと共に寮の庭へと来ていた。

 クラフトレシピブックと魔石をベンチに出して朝に干した洗濯物を取り込んでいると、ローラさんにクウガさんも集まってくる。

「何をするのか楽しみだわ♪」

「俺も昨日言われた通り“炎の魔石”、持ってきたぜ?」

 クウガさんはそう言って赤色の魔石をベンチへ置いた。

「ありがとう!」

 炎の魔石は中級以降の炎のフロアにしか落ちていない貴重な素材だ。それを何のためらいもなく2つ分けてくれる器の大きさ。買いたいと言っても受け入れられるはずがないので、今はありがたく頂戴(ちょうだい)する。


「ふむ、間に合ったか」

 そう言って真上から降り立ったのはオベロン王。

「あっ、オベロン陛下! 昨日はありがとうございました」

「「ありがとうございました!」」

 3人でペコリとお礼。

「良い、ただ送り迎えをしただけだ。ティターニアも見たがっていたぞ。ファム、呼んでやれ」

「呼ぶのだ♪」

 ファムの身体が光ると、その光はファムから抜けて空に浮かんで自立していた。あれ、オベロン王に連絡を取ったときと状況が違う。

『お呼びいただきありがとうございます。シルフィが魔石を使って何か面白いことを始めると聞いたもので』

 なるほど、ティターニア様は世界樹の精からの呼び出しでその場に現れる事が出来るのか。それなら私がやることも目視出来てそうだね。

「ティターニア様、お久しぶりです♪」

「「世界樹の意思……ティターニア様……!」」

 ローラさんとクウガさんはファムに向かってサッと片膝を突いた。


 2人がティターニア様との挨拶を終えたところで、本題に入る。

「まずは、昨日魔装飾職人さんが言っていたことの確認をするね」

 私は魔石を両手に1つずつ持つと、コツンと合わせてお互いをグリグリと擦り付けた。

 すると、2つの魔石がガタガタと震え、擦り合わせている部分からバチバチと火花が飛び散った。

「「おぉ……!」」

 と、同僚の2人。ティターニア様が解説をしてくれる。

『それは、魔石のマナを吸って吐く性質同士が衝突したことによってエネルギーが生まれたのですね』


「よし、思った通りの反応だ。次の実験は、炎の魔石同士で」

『シルフィ、顔を両手から離して、接合部分には触れないようにしてやってくださいね』

「? はい!」

 ティターニア様の忠告通り両手を前に差し出した状態で炎の魔石同士をグリグリと擦り付けてみる。

 すると、火花ではなく火柱がゴォーッと吹き上がった。

「ぎゃーっ!」

「シルちゃん!」

「シルフィ!」

 気付いたときにはオベロン王の魔法で全身から水を被っていた。

 髪の毛や服からポタポタと水滴が落ちる。


「び、ビックリした……オベロン陛下、ありがとう……」

 思ったよりもすごいエネルギーが発生しているみたいだ。

『それは炎の魔石と水か氷の魔石でやると水蒸気爆発を起こすと思うので、やらないようにしてくださいね。今回は水を被るほどではなかったと思いますが……オベロンも過保護ですね』

 クスクスと笑うティターニア様に対し、オベロン王は「……うるさい」と一言。

 2人共どうなるのか分かっていた上で安全に配慮した状態で私にやらせてくれたみたいだ。

 私に火は一切当たっていなかったのに水を被ったのは確かに過保護だけど、それでも実験をさせてくれたことには感謝だ。きっと、私のレシピの開発は、私自身が理解をすることが重要だと思うから。


⸺⸺すると、ベンチに置いていたクラフトレシピブックがほんのりと光を放っていた。


「ちょ、シルちゃん、これ光ってるけど何だろう?」

 と、ローラさん。

「あ、新しいレシピが追加された合図だよ!」

 私は取り込んだばかりのタオルで顔と手を拭くと、光っているページの部分を開いてみた。


 『魔石』という見出しが追加され、そのページから炎の魔石や氷の魔石など、全部で9種類の属性の魔石が追加されていた。

「やった! 炎の魔石って作れるんだ! 魔石と火炎草で出来るんだね。火炎草なら初級の火山洞窟で採れるね」

 ぴょんぴょんと喜ぶ私。

「見て、シルちゃん。それぞれの魔石の相性がちゃんと書いてあるわ!」

 ローラさんは魔石の最後のページを開いて相性表を指差した。


「あっ、本当だ! 危険な組み合わせはドクロマーク、威力の上がる組み合わせは二重丸、逆に威力の下がる組み合わせは三角で書いてあってすごい分かりやすい! あれ、でも、私は全ての組み合わせを理解していた訳じゃないのに……」

 不思議に思って首を傾げると、オベロン王がふんと鼻で笑った。

「ティターニアの仕業だな? 先程私を過保護だと(ののし)っていたのはどこのどいつだったか……」

『あらあら、何のことでしょうか?』

 ティターニア様はふふふふと笑って誤魔化していた。そっか、ティターニア様の配慮なんだ。

「ティターニア様、ありがとう!」

『いいえ、どういたしまして♪』

 あ、自分の仕業だって認めたね……。


「ティターニア様のおかげで見えてきたよ! これならさっきみたいにはならないはずだ」

 私は魔石と炎の魔石を持って擦り合わせてみた。

 すると、小さな炎が少しだけボウッと上がったのである。例えるなら“ライター”だ。

 擦り付ける力を強めると炎の大きさも少し大きくなり、魔石同士を離すと炎は消える。


⸺⸺これは、行ける……!


 そう思った瞬間、クラフトレシピブックが再び強く光を放った。


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