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12話 魔石の性質

⸺⸺ヴォルカディス15F⸺⸺


「わぁ、それカッコイイね! クウガさんに合ってる♪」

 小さな紫色の石がいくつも埋め込まれているシルバーの腕輪。

 クウガさんが試着をすると、私はわーっと拍手した。

 腕輪をよく見ると、紫色の石の部分がほんのり青く光っている。紫なのに青く光るって、不思議だ。


「おっ、マジ? デザインもカッケーし、これにすっかなぁ♪ おっさーん、この『魔防の腕輪』くれー!」

 クウガさんがそう言ってカウンターへ向かったので、私とローラさんも付いていく。


「おうよ。3800C(クレド)だ」

 にこやかなドワーフのちびおじがカウンターから顔を出す。

「えっと……5000で」

 クウガさんは5千クレド札をカウンターへ置いた。

「ほい。ちょっと待ってな……ほら、お釣りの1200C(クレド)だ。ありがとな!」


 クウガさんのお会計が終わり、他に並んでいるお客さんもいなかったため、私はノートと鉛筆をリュックから取り出しておじさんへ話しかけた。

「あの、すみません、この腕輪のことを聞いてもいいですか?」

「お? どうした嬢ちゃん、何が知りたい?」


「この腕輪の紫色の石は、魔石ですか?」

 私は拾った魔石が全部紫色だったことを思い出し、そう尋ねる。おじさんはこくんと頷いた。

「あぁ、そうだぜ。勉強熱心な嬢ちゃんだな〜。魔装飾職人にでもなりてぇのか?」

「えっと、あの……魔石のことを勉強していて、この腕輪での魔石はどんな働きをしているのかなぁって……」


「ほう、魔石の。良いだろう、教えてやろう。この腕輪にハマっている魔石は、“魔法防御のバフ”が付与された魔力を吸い寄せて定着させているんだ。ちょっとだけ青く光っているだろ? この青い光が魔法防御のバフなんだ」

「魔力を……吸い寄せる……!」

「魔石っつうのはな、常に空気中のマナを吸い寄せて、石の中に蓄積する性質があるんだ。そんで、魔石の中のマナが許容量を超えると、少しずつマナを放出して空気に返す。これを繰り返しているんだ」

「ふむふむ、なるほど……」

 私は一字一句逃すまいと必死にメモを取る。

 私が書き留めたところで、おじさんは話を続けてくれた。


「それでそんな性質持ちの魔石を魔力で包み込んでやるとな、マナと勘違いして中に取り込むんだよ」

「魔力は人の取り込んだマナから作られているから、マナと似ているのかな?」

「そう! 賢い嬢ちゃんだな。でも、厳密にはマナとは別の力だ。そうすると何が起こるかと言うと、外に吐き出せずに魔石の中に魔力が留まり続けるんだ」

「あっ、だからこの腕輪には魔力防御のバフが掛かりっぱなしになるってことですか?」

「あぁ、そうさ。これが、この腕輪での魔石の働きだ。分かったかい?」

「はい、よく分かりました! ありがとうございます!」

 今のこともノートに書きなぐる。


 そっか、魔石はマナを取り込んで吐き出してを繰り返しているんだ。それを利用して魔石の中に魔法の力を閉じ込める……面白い!


 じゃぁ、マナを吐き出した先にも魔石があったらどうなるのかな?

「おじさん、すみません。この腕輪、魔石同士が全部少しずつ離れて付いているんですけど、魔石同士をくっつけると、何か起こりますか?」

「あぁ、ただ隣に置いたり、一緒の袋に入れたりしただけじゃぁ何も起こらないが、強く擦り付けたりなんかすると火花が散るぜ。腕輪の魔石は魔力を吸ってるから擦り付けても火花が散ることはねぇが、ま、念の為だな。お客さんに何かあっちゃいけないからよ」

「や、やっぱり……!?」

 きっとその火花は、魔石同士の摩擦によって生まれる“エネルギー”だ。


「これは……使えるかもしれない……!」

「シルちゃん、何か良い案が思い付いたのね!?」

 と、ローラさん。

「うん! 思い付いちゃったかもしれない……! 明日、色々試してみる♪ おじさん、色々と教えてくれてありがとうございました!」

 ペコリとお辞儀。


 私はお礼と記念に『防御の腕輪』を。ローラさんは『体力の指輪』を買って、お店を後にした。


⸺⸺


 上から下まで片っ端からお店を回り、色んな魔装飾や魔法杖に感動し、気付けば19時を過ぎていた。

 新たに買ったのは猫のデザインの『魔力の首飾り』で、首にかけると私の中の温かいものがふわっと膨らむ感じがした。この温かいものが、私の魔力か……。


 11階のレストランフロアにある酒場に入り、ローラさん念願の“ヴォルカノ料理”を堪能。

 ミートソースをマグマに見立てた“マグマパスタ”など、とにかく赤かった。

 こう言う観光客向けの料理は大事だよね。一気にテーマパーク感が出る。


 私は“マグマパスタ”を。ローラさんは“マグマリゾット”。一口もらったけど“トマトリゾット”だった。

 クウガさんは“ヴォルカディススペシャル”。火山みたいな形のハンバーグのてっぺんから赤いソースが流れていたり、積み上がったイカリングフライの底にケチャップが溜まっていたり……。ワンプレートの中にこの国の全てが詰まっている“大人様ランチ”だった。夜だけど。


 ユグドラシアではどんなアレンジが出来るかな……。抹茶のソフトクリームを世界樹に見立てた抹茶ソフト、とか、抹茶ラテ、とか……。

 そもそもソフトクリームはなさそう。だって、冷凍庫ないし。安らぎ亭でも涼しい地下室に食材を保存したりしていたもんな。


 そんな冷凍庫とかいう代物の話を2人に聞いてもらいながら料理を完食。

 初めての遠足を終え、21時にオベロン王と合流をすると、ユグドラシアへと帰還した。

 楽しかったな、また行きたい。今度はオベロン王も一緒に回れたら良いな♪


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