表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/13

食堂で皇子について愚痴っていたらその皇子がやってきました

 私は二度と会いたくないと思っていたロンバウトが迷宮ツアーに参加するのが決まってとてもショックを受けていた。

 せっかく満員で断ろうとしたのに、部長が横から出てきて全部手配してくれたのだ。

 本当に最悪だった。


 ロンバウトの申し込んだ名前はロン・リューケンと本名のロンバウト・ブリューケンを短縮したなんとも短絡的に作られた偽名だった。こんな偽名で申し込みを受けていいのかと思いつつ、元近衞騎士団長が認めているのだから良いのか?


 お前の偽名リーゼ・ブラストは良いのかと言われそうだが、私の偽名はブラストの遠縁で平民だと貴族年鑑にも載せているのだ。最近の貴族年鑑も分厚いのになると貴族の次男三男の息子や娘の平民の分も載せているのよ。私の権力を使えば貴族年鑑に偽名を載せるなんてお茶の子さいさいだった。でも、全てをブラストに任せていたので、元々お父様の指示だったのかもしれないんだけど……



「本当に信じられないわ!」

 私はお昼休みに一緒に食事に出たヨハン相手に愚痴っていた。


 ヨハンはメールロー男爵家の次男で、私と同い年だった。

 ということは学園で同学年だったと思うんだけど、私には記憶がなかった。王国の学園は全部で10クラスもあって、私は保護者の過保護のお陰でお貴族クラスのAクラスだった。いつもは貴族も平民も関係なしのクラス分けなのに、私がいるからと過保護なお父様とお兄様が色々と画策してくれた結果、貴族限定のAクラスだった。最も学園に通っている平民の大半は元貴族の次男三男の子供とか、金持ちの大商会の子供とか、文官の子供とかで本当の意味の平民なんてほとんどいなかったのに。

 お陰でAクラスは子爵家以上の貴族の子供達しかいなかった。ヨハンはその中で真ん中のEクラスだったそうだ。1学年四百人も居たら、全員の顔と名前なんて覚えられるはずはない。私は地味なブロンドヘアに黒目と変装していたし……


 年は同じなんだけど、私は1年生の時からこの旅行社でアルバイトしていたから、ヨハンの先輩になっていた。まあ、元々図々しいから何年も働いている大ベテランだと間違えていたらしいけど。年が同じだと聞いて驚いていた。


「でも、リーゼさん、あんな軽い男と一緒にツアーに行くなんて大丈夫なんですか?」

 未だにヨハンはブツブツ言ってくれるけれど、

「仕方がないでしょ。私も嫌だけど、部長命令だから」

 私が愚痴ると、

「俺が部長に言って代わってもらいましょうか?」

 ヨハンは悪魔のお誘いをしてくれたけれど、チーフ添乗員は私の尊敬するカルラ先輩だ。20代後半の大ベテランで、この会社の花でもある。とてもきれいな先輩なのだ。今回のツアーは煩いデ・ボック子爵もいるし、結構うるさい貴族関係者も多い。特に帝国の皇子まで参加するとなると私が行くしかないだろう。

「ありがとう、ヨハン。でも、今回は私が行くわ」

 私は首を振ったのだ。


「はい、お待ちどう。リーゼちゃんはフライ定食だったね」

 レストランの女将さんが定食を持って来た。

「ああ、ありがとう。これ、このフライが食べたかったのよ」

 私は早速一口パクリと食べたのだ。

「美味しい!」

 私は感激した。

 揚げたてのフライなんて普通は王宮では食べられない。どうしても毒味の関係で冷めて出てくるので、熱々のフライなんて街でしか食べられなかった。

 特に私が働いている旅行社の裏にあるこのレストラン『ザ・フライ』はその名の通り、フライの揚げ方が絶妙だった。


「はい、お兄さんはエビフライ定食ね」

 女将さんがヨハンの分を持って来てくれた。

「リーゼちゃんはついに添乗に行くのかい?」

「そうなのよ、女将さん。やっと部長が許してくれて、カルラ先輩のサブだけど、夢に見た添乗だから本当に楽しみなの」

 私は女将さんに語ったのだ。そう、今までは本当に楽しみだったんだけど、ロンバウトが一緒だと思うと本当にやる気が無くなったんだけど……


「その割に楽しそうじゃないね」

「ちょっと、嫌な奴が来ることになったのよね」

 私が愚痴ると、

「なんとか言う子爵様かい?」

 女将さんが聞いてくれたけれど、

「ううん、あの方は今回はカルラ先輩に任せるから問題はないわ」

 私が頭を振ると、

「嫌な、ナンパ野郎がいるんですよ。店頭でいきなりリーゼさんをナンパしてきた奴なんです」

「まあ、リーゼちゃんは人気があるからね。そこのお兄さんも気が気でないね」

「俺は別にそんなことは」

 女将さんの声にヨハンがぼそぼそと何か呟いていた。

「まあ、あんたも頑張んなよ」

 女将さんがそう言ってヨハンの背を叩いていたが、何を頑張るんだろう?

 私がそう思った時だ。


「リーゼさんはそんなに人気があるんですか?」

 あろうことかそこにモーリスの声が聞こえたのだ。慌ててそちらを見ると、なんとモーラスがロンバウトを伴っていたんだけど、何しているのよ! 帝国の皇子を連れてこんな場末のレストランにやってこないで!

 私は心の中で悲鳴を上げたのだった。

「あらっ、モーリスさんじゃ無いの?」

女将さんが声をかけていた。

えっ、モーリスと女将さんって知り合い?

私は驚いた。

「久しぶりね」

「そうだな。引退したからあまりこちらに来る予定がなくてな」

って近衛騎士団の時からここを利用しているみたいだった。

「リーゼちゃん! 向かい相席で良いかい?」

ここは場末の混む食堂で、昼時は相席も当たり前だった。

当たり前だけど、モーリスはまだしもロンバウトは絶対にいやなのに!

「はい」

私は頷くしか出来なかったのだ。

本当に最悪だった。



ここまで読んで頂いてありがとうございます。

また皇子の登場にリーゼはどうする?

続きは今夜です。

お楽しみに!


完結ランキング上昇中の下記のお話も宜しくお願いします。リンクは10センチくらい下に

『悪役令嬢に転生したみたいだけど、王子様には興味ありません。お兄様一筋の私なのに、ヒロインが邪魔してくるんですけど……』https://ncode.syosetu.com/n3871kh/



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
私のお話、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。

この前の作品はこちら

『悪役令嬢に転生したみたいだけど、王子様には興味ありません。お兄様一筋の私なのに、ヒロインが邪魔してくるんですけど……』https://ncode.syosetu.com/n3871kh/


私の今一番熱い人気の作品はこちら

『【電子書籍化】王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど……』https://ncode.syosetu.com/n9991iq/


表紙画像
1巻が『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど 卒業パーティーは恐竜皇子と恐れられるお義兄様と一緒に』
上の表紙絵はおだやか先生が可愛いエリーゼを守る格好良いお義兄様を描いて頂きました。
このなろうで書いたのに【お義兄様との洞窟探検】2万字の描き下ろしが追加されています。
小さいヒロインのエリーゼはダンジョンに潜りたいとお義兄様に無理やり連れて行ってもらって、巻き起こす大騒動。
後で知ったお義父様(皇帝)が怒るもエリーゼの前に撃沈、更に行ったダンジョンにはなんとあの…………、とても面白いお話になっています。

■【3千字のSS商人の娘の独り言シーモア特典付き】
https://www.cmoa.jp/title/1101429725/


■【アマゾンはこちら】
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DD3SHSJV/


■【楽天はこちら】https://books.rakuten.co.jp/rk/86f757d2dd7d3674900eac6783288ad5/

表紙画像

表紙絵はおだやか先生が美しい、お義兄様とエリーゼのキスシーンを描いて頂きました。
2巻が『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど…… 帝国に帰還しての宮廷夜会、お義兄様にキスされてしまいました』
こちらの新規書き下ろしはセッシーとの出会いです。皇帝一家でセシール湖にお出かけしたエリーゼはお義兄様たちと湖の地下宮殿に冒険に出かけます。
反逆の陰謀と共にそこにいたのは巨大な水竜で…… とても面白いのでぜひとも手にとって頂けたら嬉しいです。

■【3千字のSSドレス工房の主の独り言シーモア特典付き】
https://www.cmoa.jp/title/1101429725/vol/2/


■【アマゾンはこちら】
https://www.amazon.co.jp/dp/B0DGQ7J6VH/


■【楽天はこちら】https://books.rakuten.co.jp/rk/178537d615973d18a4cb8adc53c66c16/

3巻表紙画像

表紙絵はおだやか先生がエリーゼをお義兄様が抱きあげる美しいシーンを描いて頂きました。
3巻が『王子に婚約破棄されたので、義理の兄が激怒してこの国を滅ぼすと叫び出したんだけど…… そのお義兄様から「エリーゼ、どうか結婚してください」と求婚されました。』
こちらの新規書き下ろしは学園に出る幽霊竜退治です。学園時代のお義兄様の幽霊騒動にエリーゼが一緒に冒険します
とても面白いのでぜひとも手にとって頂けたら嬉しいです。

■【3千字のSS連れ子様の護衛騎士・シーモア特典付き】
https://www.cmoa.jp/title/1101429725/vol/3/


■【アマゾンはこちら】
https://www.amazon.co.jp/-ebook/dp/B0DK55BWGS/


■【楽天はこちら】https://books.rakuten.co.jp/rk/e9901759f61337b88109b29ff7a5ffb0/

ぜひとも手にとって見ていただければ嬉しいです。

アルファポリスのレジーナブックスにて

【書籍化】

しました!
2023年6月28日全国1200以上の書店にて発売しました。表紙画像は11ちゃんさんです。
表紙画像
表紙絵をクリックしたらレジーナブックスの説明ページに飛びます。


■アマゾンへのリンク

■楽天ブックスへのリンク

■hontoへのリンク


手に取って読んで頂けたら嬉しいです。

なろうの掲載ページ『悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! ~学園生活を満喫するのに忙しいです~』https://ncode.syosetu.com/n3651hp/

第一部は書籍化の規約上3分の1残して後は他者視点で繋いでいます
「えっ、ゲームの世界の悪役令嬢に生まれ変わった?」
頭をぶつけた拍子に前世の記憶が戻ってきたフラン、
でも、ケームの中身をほとんど覚えていない!
公爵令嬢で第一王子の婚約者であるフランはゲームの中で聖女を虐めて、サマーパーティーで王子から婚約破棄されるらしい。
しかし、フランはそもそも前世は病弱で、学校にはほとんど通えていなかったので、女たらしの王子の事は諦めて青春を思いっきりエンジョイすることにしたのだった。
しかし、その途端に態度を180度変えて迫ってくる第一王子をうざいと思うフラン。
王子にまとわりつく聖女、
更にもともとアプローチしているが全く無視されている第二王子とシスコンの弟が絡んできて・・・・。
ハッピーエンド目指して書いていくので読んで頂けると幸いです。


私の

3番人気の作品はこちら

『モブですら無いと落胆したら悪役令嬢だった~前世コミュ障引きこもりだった私は今世は素敵な恋がしたい~』https://ncode.syosetu.com/n8311hq/

私の

4番人気で100万文字の大作の作品はこちら

『皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません!』https://ncode.syosetu.com/n8911gf/



最新の短編作品はこちら

『婚約破棄されやけ酒飲んでると軽い男が声かけてきたので張り倒したら、何故か執着されました』https://ncode.syosetu.com/n2191kg/

このお話の前の話

『悪役令嬢に転生させられた地味令嬢ですが、ヒロインの方が強くて虐められているんですけど……』https://ncode.syosetu.com/n7240kb/

― 新着の感想 ―
何作か読んで気になったのですが、【くれる・くれた】の使い方、おかしくないですか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ