せっかく帝国の皇子と離れられると思ったのに、また次のツアーを申し込んでくれました
それからが大変だった。
私は慌てた騎士団に、そのままロンバウトと別々に事情徴収されたのだ。
事情聴取する騎士団の面々は、元近衛騎士団長のモーリスがいたのでものすごく気にしながら私の訊問をしてくれた。モーリスのお陰で私はあまり怒られなかったのだ。
と言うか、怒るのならば、ロンバウトを怒ってほしい。私はそのロンバウトの抱える帝国のお家騒動に巻き込まれただけだ。
そして、訊問の後で、モーリスに私の事はお父様とお兄様に黙っておいてほしいと、頼み込んだのだ。
「えっ、黙っているのですか? こんな大騒動になったのに?」
最初は難色を示したモーリスだったけれど、
「モーリス、お願い!」
私は頼み込んだのだ。
「仕方がありませんな。今回だけですぞ」
騎士団の方は何とか、モーリスが、誤魔化してくれたみたいだ。
私はほっとした。
私はツアーが気になったのだが、ツアーにはなんと、遅れていたカルラ先輩が昨夜遅くに合流してくれたそうだ。私はそれをモーリスから聞いて、ほっとした。
そのツアーが私抜きで今日早朝からさっさと帰ってくれたというのが、なんだかなと思わないでもなかったけれど無事に帰路についてくれたのなら良しとすべきだ。
まあ、ツアーはカルラ先輩がいれば問題はないだろう。
その後は私は研究員達に取り囲まれて、迷宮で体験した事について、根掘り葉掘りいろいろ聞かれたのだ。
研究員達によると、私が出会ったティラちゃんはこの迷宮の主ではないかとの事だった。
ええええ!
私、迷宮の主を張り飛ばしたの?
「はっはっはっは。姫様らしいですな!」
昔から知り合いの研究員達に笑われたけど……
よく無事に生きて帰って来れたものだと私は首筋が寒くなるのを覚えたのだった。
そして、元婚約者候補の帝国の皇子様だが、少し早めに帰ってやることがあるとの事で、私よりも先に帰ってくれた。私としては、振られた手前、いつまでも一緒にいるのもおかしいと思ったので、これで縁が切れたと清々した。
決して、いきなりいなくなって寂しくなったとか、挨拶もなしに帰ってくれて悲しくなったということは断固としてないのだ!
そして、私はツアーに遅れること1日遅れで、王都の会社に帰ってきた。
今回は最後まで、添乗できなかった。絶対に部長に怒られる!
下手したら首を宣告されるかもしれない!
私は戦々恐々として、部長の前に出頭したのだ。
「リーゼか」
ぎろりと目を怒らせてシモン部長は私を見てくれた。
やばい、これは絶対に怒っている。
「申し訳ありませんでした」
私は先手必勝とばかりにいきなり謝ったのだ。
「んっ? どうした、いきなり謝ってきて」
部長にとって私の行いは予想外の行動だったようだ。
「えっ、だってツアーの途中で行方不明になるし、最後まで添乗できませんでしたから」
私が言い訳すると、
「まあ、カルラが間に合わなくて元々準備もままならない中、強引に行かせたのだ。途中までしか添乗できなかったというのは汚点かもしれんが、リーゼは十分にやってくれたぞ。部屋割りの件とか、俺のミスもあったし、それをうまくまとめてくれたではないか。俺もまさか未来の王妃様がツアーに参加しているとは知らなくてだな、危うく、王家の顰蹙を買うところだった。公爵家からも感謝状が届いているし本当にリーゼは良くやってくれたよ」
「えっ、じゃあ、首なんて事は無いんですか」
「当たり前だ。優秀な社員を首にするなんて事は出来ん。これからもどんどん頑張って仕事をしてくれ」
逆に部長に激励されたのだ。
首になるのではないかと恐れいたので、それがなかっただけでも私はほっとしたのだ。
「どうでした?」
先に帰ってきたヨハンが部屋の前で心配して待っていてくれた。
「大丈夫だったわ」
私はほっとして言った。
「良かったですね」
ヨハンも喜んでくれたのだ。
「なんだ、首じゃなかったんだ」
丁度通りかかったフランカががっかりしてくれたみたいだけど、ここは無視だ。
「リーゼさん。あなたにお客様よ」
カウンターの先輩が呼びにきてくれた。
「はい、すぐに行きます」
私は返事していくと、
「やあ」
そこには私に挨拶もせずに帰ったロンバウトだった。
「ロン様。先日はツアーに参加いただけてありがとうございました」
私はお客様モードでロン様に挨拶した。
「ああ、本当に君には世話になったよ」
皆の前でロン様が感謝してくれた。
でも、私に挨拶もなしに返るなんて冷たいじゃない!
私も少しむっとしたし、私を見るフランカとかの視線も厳しいんだけど……
「お昼でも一緒に出来たら嬉しいんだけど」
そのロンバウトはなれなれしくも私を誘ってくれたのだ。
「ロン様。カウンターでの女性社員への声かけはご遠慮願います」
横からヨハンが出てきて勝手に断ってくれた。
「俺は君とは話していないが」
「申し訳ありません。私も予定がいろいろ入っておりまして」
私はやんわりと断ったのだ。勝手に帰る奴は嫌いだ!
ツアーも無事に終わったし、これ以上一緒にいて王女だとバレるのもあれだから、私は今後はロンバウトと距離を置こうと思っていたのだ。
「えっ、そうなのか? じゃあ仕方がないな」
ロンバウトが無造作にポケットから箱を取り出してくれた。
カウンターの皆の視線がその箱に釘付けになった。
何だろう? 贈答品の受け取りは基本禁止だ。
私が断ろうとしたら
「君のだろう」
ロンバウトが箱を開けてくれたのだ。
「えっ、ああ、母の形見ですね」
私は皆に言い聞かせるために声に出していったのだ。
「俺のせいで鎖が壊れただろう。そこを修理させてもらったんだ」
「ありがとうございます」
私はお礼を言うしか言えなかった。皆の視線が厳しい。
「出来たら外で渡してくれたら良かったのに」
私が小声で文句を言うと、
「それを断ったのはリーゼだろう」
そうだった。失敗した。
私が反省した時だ。
「これは、これはロン様。先日はツアーにご参加頂いてありがとうございました」
そこに営業モードのシモン部長が出てきたのだ。
「ツアーはいかがでした?」
「いやあ、添乗員のリーゼさんに良くしてもらったよ」
「そうですか? ありがとうございます。今日もまたお申し込みですか?」
部長は揉み手して聞いていた。
「そうだな。また、リーゼさんの添乗するツアーはあるの?」
「ございますとも。日帰りツアーですが、三日後に王宮1日ツアーというのがございまして、彼女の王宮ツアーはとても人気なのです」
部長が余計な事を言ってくれた。
「判った。それに申し込むよ」
あっさりとロンバウトが頷いてくれたんだけど……ちょっと待ってよ。バレたらまずいからもう王宮ツアーは止めようと思ったのに……部長に言うのを忘れていた。
それにあなたは王宮に来たこともあるじゃない!
今更何しに行くのよ!
「じゃあ、リーゼさん。また、よろしくね」
私の心の声はロンバウトに無視されて、ニコリと笑ってくれたのだ。
もうツアーも終わって繋がりがキレると思ったのに、なんだかな……
この調子でいくと本当に王女だとバレるのは時間の問題だと思う。
でも、帝国がお家騒動でドタバタしているのなら、ロンバウトはこんなところで油を売っていても良いのか?
そう思わないでもなかったが、まあ、私が王女だとバレたらバレたで良いか!
私はそう思ってしまったのだ。
「この度はネイホフ旅行社にお申し込み賜りありがとうございます。こちらの申込書に必要事項をご記入賜りますよう宜しくお願いします」
楽観主義な私は営業スマイルでロンバウトに頭を下げると、申込書を彼の前に差し出したのだった。
おしまい
ここまで読んで頂いてありがとうございました。
これにて完結です。
ブックマーク、広告の下の評価☆☆☆☆☆を★★★★★して頂けたら嬉しいです(*ᴗ͈ˬᴗ͈)⁾⁾
また閑話等上げていくと思います。
続編も書きたいです。
次は『悪役令嬢に転生したみたいだけど、王子様には興味ありません。お兄様一筋の私なのに、ヒロインが邪魔してくるんですけど……』
https://ncode.syosetu.com/n3871kh/
第二章です。帝国留学編
1週間以内に書き始めます。
よろしくお願いします








