影を始末して追ってきた恐竜に張り手をお見舞いしました
「ギャーーーー」
私は悲鳴を上げながら走った。
そのすぐ後ろをロンバウトが走ってついてくる。
ギャオーーーー
更にその後ろからティラノザウルスが必死に追いかけてくる。
何故、異世界に前世の最凶最悪の滅び去った恐竜のティラノザウルスが出てくるのか、全く判らない。
この世界が日本人が想像した異世界だったら、それはありうるのかもしれないけれど……
でも、見た目が全然可愛くない。
まあ、人間を襲う魔物が可愛い訳ないけれど……
「開門!」
私はそんなことを考えつつ目の前に現れた来た道の門を開けていた。
そして、中に駆け込む。
走りながら一瞬目を見開いた。
さっきは疲れていたのもあってほとんど見ていなかったのだ。
中は一面桜が咲いている『桜の間』だった。
地面一面桜の花びらが敷き詰められていて、周りはこれでもかというくらい桜が咲いていた。
更には空も青空の下、桜の花びらが盛大に舞っていたのだ。
追いかけられていなかったら、この場に立ち止まって心行くまで桜を楽しんだだろう。
それだけ素晴らしかった。
でもそれどころではなかったのだ。
目の前に、ここに似つかわしくない黒い影共が現れたのだ。
そう言えば帝国の影にも追われていたんだった。
思い出したけれど、遅かった。
「やっと追いつきました」
影の一人がにやりと笑って言ってくれた。
「リーゼ」
慌ててロンバウトが私の前に出て私を庇ってくれた。
本来ならばツアーの客はツアコンの私が守らなければいけないのに!
でも、おそらく、私よりもロンバウトの方が強いのは確実だったけれど……
どうしようか悩んだ瞬間だ。
ギャオーーーーー
咆哮を上げて私達を追ってティラノザウルスが飛び込んできたのだ。
勝手に私がつけた『恐竜の間』から出てきたらしい。
部屋を移動できるんだ……出来ないと思っていた私は驚いた。
これぞまさしく前門の帝国の影と後門のティラノザウルス、絶体絶命のピンチだ。
私の思考が固まった。
「おい、何だあれは?」
「見たこともない魔物だぞ!」
目の前の影達もいきなり現れたティラノザウルスに驚いたみたいだ。
ギャオーーーーー
一方のティラノザウルスはいきなり獲物が増えたことに喜んだみたいだ。
目が輝きだした。
「こっちだ」
状況把握が出来ずに固まってしまった私の手を取って、ロンバウトが右手に走り出してくれた。
「おい、逃げるぞ!」
「待て!」
影達が私達を追おうとした時だ。
ティラノザウルスが影達に襲いかかったのだ。
「ギャーーーー」
一人の男がティラノザウルスに食われていた。
「見るな!」
ロンバウトが私の目を隠してくれた。
「おのれ!」
「先にこの化け物を倒すのだ!」
影達がティラノザウルスを囲んだようだ。
「今のうちに逃げるぞ」
そう小さい声でロンバウトは囁いてくれると私の手を掴んで反対方向に歩き始めた。
「おい、逃げるぞ!」
「何だと!」
男達が私の方に注意が向いた時だ。
「ギャーーーー」
男の叫び声が聞こえた。
振り返ると男が食べられるところだった。
私は慌てて視線を外す。
「おい、走るぞ」
ロンバウトが後ろも見ずに駆け出した。
私の手を掴んでいるので私も走ることになる。
そして、必死に走った。
桜吹雪の舞い散る中、見目麗しい男と二人でいるなんて……逃避行の最中でなければ立派なデートだ。
最も男は私をペチャパイと馬鹿にしてくれた最低な男だけど……
そんなこと考えていたらあっという間に入ってきたところと反対の突き当たりの壁に来た。
「あれ、ないぞ?」
ロンバウトが焦って周りを見る。
私も探したけれど、壁だけで扉がないんだけど。どうしたんだろう。
私達は必死に探した。
でも、ないものはない。
「ひょっとして、ここが突き当たりかな」
「そういうことはないと思うけれど」
私の言葉にロンバウトは反論したけれど、でも、探してもないのだ。
「いくら探してもないぞ」
端から端まで走ってみたが、見当たらなかった。
「他の扉を探そう」
「そうね」
私達が他に行こうとした時だ。
「ギャオーーーー」
すぐ間近でティラノザウルスの雄叫びが聞こえたのだ。
「えっ」
気付くとティラノザウルスと目があってしまった。
距離は10メートルもない。
影はどうなったか判らないけれど、私達の目の前に凶暴なティラノザウルスがいたのだ。
「くっそう、せめて剣があれば」
ロンバウトは悔しがった。
「剣の持ち込みは禁止です」
と剣は入り口でボンゴレによって取り上げられたのだ。
「リーゼ、行くぞ」
ロンバウトが私の手を引いて壁伝いに右手に駆け出してくれた。
私もそのまま釣られて走るけれど、ティラノザウルスは私達が動くようも早く、行動してくんれた。
私に向けて鋭い爪で斬りつけてくる。
私は間一髪で躱したんだけど、その爪に首にかけていたネックレスの鎖が引っかかったのだ。
ビリ!
服も一部をネックレスごと持って行かれる。
首にかけていたネックレスは母の形見のネックレスだった。
私が大切にしていたネックレスだった。
そのネツクレスの鎖が飛び散った。
「ちょっと、何してくれるのよ!」
私は完全にぷっつんキレてしまった。
身体強化してティラノザウルスと正対するや、
「リーゼ!」
慌てて私を止めようとしたロンバウトの手を振り払うや、私は飛び上ったのだ。
ティラノザウルスの顔の高さに!
まさか人間に反撃されるとは思わなかったのだろう。
ティラノザウルスはきょとんとしていた。
「天誅!」
私はその声とともに身体強化してティラノザウルスの顔に張り手をお見舞いしたのだ。
バシン!
凄まじい音ともにティラノザウルスは私に張り飛ばされてて吹っ飛んでいた。
ここまで読んで頂いてありがとうございました。
恐竜もヒステリーを起こしたリーゼの前には一撃でした。
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続きは今夜の予定です。








