襲われた帝国の皇子に連れられて、迷宮の中を闇雲に息の続く限り走らされました
「じゃあ、前の部屋に帰りましょう」
私はそう言って戻ろうとしたら、扉が閉まっていた。
「開門!」
私は叫んでみるがびくともしない。
「開かないのか?」
ロンバウトとも驚いて、
「開門!」
と叫んでくれるがびくともしない。
「変ね。戻れるはずなのに」
私が呟くと
「リーゼ、『宇宙の間』は一万回に一回しか出ないんだろう。とすると普通は戻れないんじゃ無いのか」
ロンバウトが推論してくれた。
「確かに。でも、ここは『黒の間』よね。としたらその前の部屋に戻れると思うんですけど」
いつもは行った道を戻ってくるのだ。
当然開くはずなんだけど。
「『宇宙の間』は特別なんじゃ無いか? 前の時もそうだったろう」
「確かに……」
私は前の時を思い出そうとした。
前の時はロンバウトと二人で探検気分で前に前に行ったのだ。それが失敗の元だった。
途中で帰ろうとしたけれど、部屋は四角で扉は辺の真ん中に一つ、それぞれの辺に四つあって、途中で適当に右とか左とかやって進んでいったから本当にわからなくなったのだ。今回はそんなことをするわけには行かない。
「どうするの? 皆が探しに来てくれるまで待つ? 研究員に聞いたんだけど、一時間待てば『宇宙の間』はまた別の所に移動するはずよ」
そう、どんな仕組みになっているか判らないけれど『宇宙の間』は一時間だけしかとの場にとどまっていないのだ。ここは黒の間だから、ここで一時間待てば、『宇宙の間』は無くなってまた、前の『白の間』と繋がるはずだ。
だから、確実に帰るなら一時間待てば良いのだ。
この迷宮の怖いところは繋がっているところが空間が歪んでいるのか何なのか知らないけれどまちまちなのだ。普通の平面なら右右右右とすれば一周回れるはずがそうでは無い。そして、『宇宙の間』みたいに時間ごとに現れる変則的な部屋も合って、多くの冒険者や研究員が行方不明になっていた。だから研究するのも命がけなのだ。
そういう理由もあってこの迷宮はまだ全てが解明されていない。
何しろ部屋の数がいくつあるかも判らないのだ。私が覚えてているだけでも50はあった。研究所によると100は下らないそうだ。私は下手したら千近い部屋があるんじゃ無いかと思っている。
この『黒の間』までは普通に行って帰ってこれる唯一の安全ルートだったのに、よりによって一万回に一回の『宇宙の間』が現れるなんて想像だにしていなかった。
「そうだな、待とうか」
そうロンバウトが頷いてくれた時だ。
「ん? 誰か前から来るぞ」
「えっ、そうなの」
私が声を出して呼びかけようとした時だ。
私の口をロンバウトがいきなり塞いでくれた。
何するのよ! そう叫びそうになって、
「静かに!」
ロンバウトの声に警戒する響きがあって私は改めて前を見た。
「おい、誰もいないぞ!」
「変だな。確かに扉が開く気配がしたんだが」
十人以上の黒ずくめの男達が見えた。
いくら私でも前の連中はとても胡散臭そうだと思った。
「影だ」
ぼそりとロンバウトが呟いた。
影ってロンバウトの国の特殊部隊じゃない。
普通はロンバウトが声をかければ良いのに、ロンバウトは胡散臭そうに彼らを見ていた。
「おい、ヤーコブがここで死んでいるぞ」
「何だと、誰にやられた」
「しっ、王国の暗部かもしれない」
男達がいきなり警戒態勢に入った。
「リーゼ、逃げるぞ」
「えっ」
私はいきなりロンバウトに手を引かれて駆け出されたのだ。
「おい、いたぞ!」
「あれは皇子だ」
「逃がすな!」
いきなり男達も追いかけだしたのだ。
私は訳が判らなかった。帝国の皇子が自国の影から何故逃げる?
しかし、聞く暇もなしに、ロンバウトは身体強化をして必死に走ってくれた。
私も強化してついていく。
「開門!」
右の壁の門に向かってロンバウトが叫んでくれた。
そして、次の間に飛び込む。
そこは真っ白だった。やった、『白の間』に帰れたかと期待したら白いものが降ってきた。
雪だった。
辺り一面真っ白な雪だ。
周りを見ると雪がしんしんと降り積もる様子が見える。
『雪の間』だった。
空も雪雲で真っ白だった。私は『白の間』でなくてがっかりした。
でも、ここでは真っ白な服を着ていない限り目立つ。
「いたぞ、あそこだ」
すぐに影達に見つかった。
そのまま駆けて次の間を目指す。
身体強化も限界があるんだけど。
でも、ロンバウトはお構いなしだった。
「開門!」
次は砂漠だった。
空は青空だ。
見渡す限り一面の砂漠だった。
それが風の砂紋を地面に靡かせつつ広がっているのだ。
私は思わず見とれていた。
「えっ」
私の足下に矢が突き刺さったのだ。
私はびっくりした。まさか本当に命を狙ってくるとは。
「おい、スピードが落ちているぞ」
「えっ、判っているって」
私は慌ててスピードを上げた。
「でも、影ってあなたの国の者でしょ」
「いろいろあるんだよ」
ロンバウトは理由は話してくれなかったが、狙われているみたいだ。ひょっとして帝位争いか何かか……他国の王族を巻き込まないでほしい。
私が傷ついたらお父様とお兄様は絶対に許さない。いくら帝国の皇帝と仲が良いからって全面戦争になるのは確実だ。我が国はそれくらいの戦力はあるのだ。大変なことになるだろう。帝位継承権を実の兄から奪っても我が国との関係にひびが入れば大変なことになると思うのだけど……
まあ、今は私の身分をばらしていないから、知らないと思うけれど……
そんな私の考えなんてお構いなしに、ロンバウトは私を連れて私の息の続く限り駆けてくれたのだ。
本当に信じられなかった……
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
そんなに闇雲に走れば当然道は判らなくなって!
次回は迷子の二人です。
果たして二人は無事に帰れるのか?
続きは今夜です。
お楽しみに。
皆様の応援のお陰で本日で書籍化デビューして2周年が経ちました。
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