別の空間に帝国皇子とまた閉じ込められて、私は改めて仕事に生きようと決意しました
私は扉の向こうに飛び込んでいた。
慌てて周りを見回すと、今度は真っ暗だった。
足元は黒の四角の模様が重なっていて、周りはよく見ると真っ黒な建物で囲まれていた。
空は新月の空ではるか遠くに星が見えた。
今度こそ『黒の間』みたいだった。
「大丈夫か、リーゼ?」
「はい、何とか」
私はロンバウトの声に答えて振り返った。
ほっとした顔のロンバウトがいた。
「ボンゴレは」
ロンバウトがボンゴレに近寄ってみると、
「ボンゴレは死んでいるな」
ロンバウトが教えてくれた。
「えっ、死んでしまったの?」
私は唖然とした。
投げられたナイフを返しただけなのに……なんで? そんなにやわだったの?
「毒が塗られていたんだ。それにこいつは護衛騎士の一人だぞ」
「えっ」
私は慌ててロンバウトの所に行って確認すると、それは護衛で帰って来なかったヤンだった。
「な、何故、ヤンがこんなことを」
私は唖然とした。
「うーん、これだけでは判らないな。それよりも毒の塗られた剣を投げられたんだろう。リーゼは大丈夫か?」
ロンバウトが私の手をつかんで、傷がついていないか見てくれる。
「きれいな指だな」
私の手をじっくり見てくれるんだけど、
「ちょっと恥ずかしいから」
私は強引に手を取り戻そうとしたが、
「ちょっと待て、拭いておくから」
そのあと私の指をハンカチで丁寧に拭いてくれたんだけど……
「別にこんなの大丈夫よ。放っておいても! 私は多少の毒は耐性があるから」
私がロンバウトに文句を言うと、
「昔のままだな。リーゼ!」
呆れてロンバウトが私を見てくれた。
「何の話?」
「知らない振りしてももう無理だ。リーゼ、君は昔俺を助けてくれた赤髪の女の子だよな!」
誤魔化そうとした私をロンバウトは許してくれなかった。
この顔は私が迷宮で出会った女の子だと確信した顔だ。
私は言い訳するのを諦めた。
「いつから分かったのよ?」
私が思わず聞くと、
「最初に旅行社で会った時にそうかなとは思ったんだが、確信したのはツアーに参加してからかな。仕草とかが昔ののままだったから」
ロンバウトが笑って説明してくれた。
「仕草が昔のままって、あの時はまる1日も一緒にいなかったわよね?」
私がロンバウトの言う事を信じられないでいると、
「それだけ君の印象が大きかったんだよ。俺は本当に君に助けられたんだから」
ロンバウトは私を見つめてそう言ってくれるけれど、
「助けられたって、一緒に迷っていただけじゃない!」
「くじけそうになる俺を何度も蹴飛ばして、勇気づけてくれたじゃないか!」
「えっ、そんなひどいことしたっけ?」
私には記憶がなかった。二人して手を繋いで迷宮を巡った記憶しかなかった。
「したよ。くじけそうになった俺を蹴飛ばして、そんなに死にたいなら、このままここにいなさいよって凄い啖呵を切られたんだよ」
ロンバウトが私を睨み付けてきた。
「あっ!」
思い出した。
そういえば青髪の男の子は泣いていたような気がする。
私よりでかい男が泣いてどうするのよって思いっきり蹴飛ばした事があるような気がしてきた。
「まあ、それは良い。俺はずっと君を探していたんだ」
「えっ、何のために?」
帝国の皇子に不敬なことをした失礼な女を探していたんだろうか?
私は冷や汗が流れた。
「いや、あの時の御礼が言いたくて」
私は開いた口が塞がらなかった。
私に散々失礼なことを言い放ってくれたロンバウトから、御礼を言われるなんて思ってもいなかったのだ。今までのはその時に蹴飛ばした私への仕返しだったんだろうか?
いや、ロンバウトがそこまで考えていたとは思えなかった。
とすると本当に純粋なお礼なのかもしれない……
「皆には余計なことは言わないでね」
私は恥ずかしくなって、思わず話題を変えようとした。
「えっ、何を皆に言うんだ? 昔、ここで会ったことを言ったら何かあるのか?」
不思議そうにロンバウトが聞いてくれた。
えっ、こいつ、ここまで私と話していて、ひょっとして私がアンネリーゼ王女だってわからないのか?
私はまじまじとロンバウトを見た。
「だって、昔も迷宮なんて簡単に入り込めなかったし、そこに来たことがあるというのはまずいでしょ」
仕方無しに、適当な理由をつけて誤魔化す。
「そうか、でも、リーゼはブラスト卿の娘なんだろう。名前を見ればわかるんじゃないのか?」
「娘じゃないわよ。ブラストは遠縁で私は平民なんだから」
そこははっきりとさせたかった。私の設定がそうなのだ。私が王女とわからないのならばそのままの設定にしておけばよいだろう。
「それにブラストなんてマイナーな名前、皆知らないわよ」
私がロンバウトに答えると、
「王女の侍従のブラスト卿の事はある程度の者だったら知っているだろう。現にモーリスは知っていたぞ」
「元近衛騎士団長のモーリスさんは別よ」
「でも、君の友人のステファニー嬢とか、貴族の多くは知っているだろう?」
ロンバウトが指摘してくれた。
まあ、ブラストの親戚で終わっていたらいいけれど、この辺りの面々は私の本当の正体を知っているから問題なのよ! 本当に、私がこんなことしているなんてお父様やお兄様にばれたら絶対にやめさせられるにちがいない。
でも、やめさせられそうになったら、絶対に家出してやるんだから!
何しろ、私は恋に破れて仕事に生きることにしたんだから!
ここまで読んでいただきありがとうございました
別の部屋に来てしまった帝国皇子とリーゼ、果たして無事に帰れるのか?
続きは明朝です。
お楽しみに








