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16/20

鍾乳洞の穴に帝国皇子と一緒に落ちてしまいました

「では、皆様。中をご案内いたしましょう」

 スクナ男爵が先頭で歩き出してくれた。

 今回は先頭は二号車だ。私も仕方なしに二号車につく。

 その後を三号車に護衛のヤンが四号車にはもう一人の剣士が、五号車は護衛なしで、最後が一号車でここはサブ添乗員のヨハンが付いてくれた。


「いやあ、モーリス様をこのスクナ大鍾乳洞にご案内できるなんて思ってもおりませんでした」

 スクナ男爵がモーリスを喜々として案内し出す。

 中には魔法灯が着いてそれほど暗くはない。

 歩くところは危険のないように手すりが付いていて、所々木道になっていた。


「キャッ」

「大丈夫か、エーディット嬢?」

 いきなりエーディットが転けそうになって、ロンバウトに支えられていた。

 絶対にわざとだ。

「ロン様、申し訳ありません。少し足下が見にくくて」

 エーディットはそのままロンバウトの腕にぎゅっとしがみついて歩き出した。

 ちょっと、帝国の皇子に止めてよ!

 私は少しむっとした。


「リーゼは大丈夫か?」

 デ・ボックが紳士的に手を差しのばしてきたが、

「デ・ボック子爵様。お客様に手を引いていただく訳には参りません」

 私は丁重にお断りしたのだ。

 と言うか、二度とデ・ボックには触れて欲しくなかった。

「そうか」

 少しデ・ボックは不機嫌そうだ。

 いくら客とはいえ、あんなことをして私が許すと思っているのか?

 私は少しだけ距離を取った。

 やはりこのグループに付いてきたのは間違いだったかもしれない。


「ウホン!」

 モーリスが軽く咳払いをしてくれた。

 その瞬間びくっとデ・ボックがした。

 モーリスのお灸が余程効いているらしい。


「こちらが、宮殿でございます」

「なるほど王都の宮殿によく似ているな」

 スクナの説明にモーリスが鷹揚に頷いていた。

 鍾乳石の形が王都の宮殿のようになっていた。


「こちらが白い塔です」

 王都に聳え立っている白い塔にそっくりだった。


 鍾乳洞は途中で狭くなっていて木の階段が付いていた。

 いつの間にか後ろの三号車の面々も見えなかくなっていた。


 前のエーディットが見えなくなった瞬間だ。

 デ・ボックがいきなり後ろを振り向いてくれたのだ。

 私はぎょっとした。


「リーゼ。貴様、俺様がモーリス様の言葉を聞いて謝ってやったのにつけあがりおって! 貴様など部長に進言していくらでもネイホフ旅行社から追い出すことは可能なのだぞ」

 そう言って私に迫って来ようとしたんだけど、


「子爵様ともあろうお方が、何をおっしゃっていらっしゃるのですか? 私の人事権はシモン部長にはございません。それと私はアンネリーゼ殿下の侍従のブラストの遠縁なんですけれど」

 私は仕方なしに今の身分を打ち明けたのだ。

「何だと、貴様、あのブラストの親戚だというのか!」

 同じ子爵でも、王女の侍従の機嫌を損ねるのは良くないとデ・ボックも判ったみたいだった。

 舌打ちすると慌ててデ・ボックは私から離れて階段を登っていった。


「おっと、失礼」

 デ・ボックは階段を登ったところで人にぶつかりそうになった。

 そこには、ロンバウトが立っていてくれたのだ。

 デ・ボックはぶつかりそうになったロンバウトに忌々しそうに舌打ちして、去って行った。


「大丈夫だったのか?」

 どうやらロンバウトは心配して私を待っていてくれたらしい。

「ありがとうございます。問題はありませんわ」

 私はロンバウトに笑いかけた。

「なら良いんだけど、君も中々強いんだな。あの男を退けるなんて」

 ロンバウトが笑って言ってくれた。

「単に親戚の名前を出しただけです」

 私が首を振って答えると

「それでも、十分だよ。君は王女殿下の侍従の親戚なんだ」

 ロンバウトはどうやら先程の2人の話を聞いていたらしい。

「はい」

 私は仕方なしに頷いた。

「侍従は何か言っていたか?」

「何かって何の話ですか?」

 私が訳が判らない顔で聞くと、

「我が国の皇子が王女殿下に失礼なことをしたみたいだな」

 ロンバウトの言葉に私は思わずむっとした。自分のことを他人ごとのように言うなと私は思わず言い返しそうになった。でも、それをここで言う訳にはいかない。


「さあ、何も聞いておりませんが」

 私はしらを切ったのだ。

「殿下は何をされたんですか?」

 どう答えるか聞いてみたくて私は思わず聞いていた。

「いや、聞いていなかったら良い」

 ロンバウトはそこで話題を終わらせてくれた。


「私の事より、ロン様こそ、エーディット嬢の事は宜しかったのですか?」

 私は聞いてみた。この男なら胸のでかいエーディットにくっつかれて喜んでいそうだった。帝国でも色々遊んでいるんだろう。


「別に問題はない。と言うか、この国の貴族の女どもはベタベタとくっつくのがはやりなのか?」

 私の予想と違ってロンバウトは心底嫌そうに苦情を言ってきた。

「さあ、平民の私にはよく判りませんけれど、少なくとも流行ってはいないかと。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。帝国ではそんなことはないのですか? ロン様は女性におもてになりそうですけれど」

「もてるかどうかは知らないが、帝国にもエーディット嬢のようにくっついて来るものはいる。私は必死に避けているが」

 ロンバウトは実際はどうかは判らないが、聞く限り品行方正みたいだった。あんな目にあった私にはまだ、100%その言葉を信用する事は出来なかったが……許す気も全くなかったし……ただ、少しは言い訳を聞いてあげても良いかという気持ちにはなっていた。この前は助けてもらったし。


「申し訳ありません。私の方からもやんわりと釘を刺しておきましょうか?」

「まあ、良いよ。これ以上君の立場を悪くする訳にはいかないからな」

 私の申し出に笑ってロンバウトは断ってくれた。

「確かに、ロン様が私の所に来たと知ったらエーディット様に何か言われそうです」

「そこはうまく躱してくれよ」

 私の言葉にロンバウトは笑ってくれたのだ。



 案の定、私達が2人で歩いて合流するとみるみるエーディットの機嫌は悪くなったのだ。


 そして、更に奥に向かって歩いている時だ。

 私はいつの間にかエーディット嬢と2人だけになっていた。

「ちょっと、あなた、添乗員のくせに、お客様に色目を使うってどういう事よ!」

 いきなりエーディットは私に絡んできたのだ。

「エーディット様。不愉快な思いをさせたのなら申し訳ありませんが、私は色目を使ったことなど一切ありません」

 私は一応否定した。

「嘘付かないでよ! 現にあなたは……」

 エーデットが私に掴みかかってこようとした時だ。

 私はその勢いに思わず下がるとそこにあった壁がバキっと大きな音がしていきなり消滅していたのだ。

 どうやら私が触ったところは脇道に迷い込まないように穴を塞いだ木が打ち付けてあったみたいで、それが取れてしまったらしい。


「キャッ!」

 私はその開いた穴に落ちてしまったのだ。

「リーゼ!」

 落ちた私は何故か飛び込んできたロンバウトに抱きしめられていたのだ。

 そして、そのまま二人して穴に落ちて行ったのだ。

ここまで読んで頂いてありがとうございます。

2人の運命や如何に?

続きは明日です。


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私のお話、ここまで読んで頂いて本当にありがとうございます。

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