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命の雫  作者:
第2章
7/12

第7話 霧の中の契約

その夜、ふたりは大きな岩の下に小さな焚き火を作った。霧のせいで湿った木々に火はつきにくかったが、

新がくふうして拾ってきた枯れ枝が功を奏し、

かすかに炎が揺れている。

「…火起こし、慣れてるな」

カイが珍しく口を開いた。

「昔、キャンプ好きの父にしごかれました。」

新が笑いながらそう答えた。

カイはうなずくと、剣をそっと地面に置き、火を見つめる。いつの間にか、その表情から鋭さが抜けていた。


「お前、本気なんだな…薬を手に入れるっての」

「はい。流那は…僕の大事な人なんです。子供のころ、絶対に助けるって約束したんです。」

火の音だけが、しばしふたりの間を満たす。

カイは枝にひとつ火にくべると、静かに言った。


「俺にも…似たような人がいた。守れなかったけどな」その言葉は、ぽつりと落ちた水滴のように

静かで、重かった。

「だから…お前の気持ちは少しわかる。」

「ありがとう。カイさん。」

「"さん"付けはやめろ。距離を感じる。」

新が目を開いて驚くと、カイは少しだけ笑った。

その笑みは、今までのどんな鋭さよりも人間味があった。


「お前、強くはない。でも覚悟だけは本物だ。」

「それで十分なんですか?」

「足りねぇよ。でも、俺が補う。それが今の"契約"ってやつだ。」

夜の霧が濃くなる。

焚き火の炎は心細く揺れながら、ふたりの間の

距離を少しずつ溶かしていった。


(#8に続く)


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