第五章:静寂を破る咆哮
ここは静かな街、アロマリス
アロマリスは、古くからの交易都市で、地下には“神の遺物”のひとつ「封印の円環」が祀られていた。
今では伝承として語られるだけで、人々はそれが世界を守っているものだと知る者は少ない。
そんな街に、ルカとティアは訪れていた。
だが街は、今夜魔族が出ると噂もあってか人けは少ない。
「賑やかな街だったのに、、とても静かね…」
すると突然…
空気が変わった――それを真っ先に感じたのは、ルカだった。
「……ッ!」
胸に痛みが走った。
ルカは胸のあたりを押さえ、額に汗をにじませる。
「ルカ!?どうしたの?」
「……いや、大丈夫だ。ちょっと……脈が乱れただけだ」
微かな神力の波動。だが、まるで漏れ出しているように不安定。
地面がうっすらと震え、井戸から黒い蒸気が漏れた。
ティアが叫ぶ。「ルカ! 床下から……何か出てくる!」
地中から突如、赤黒い魔力の塊が噴き出した。建物の一角が崩れ、現れたのは、漆黒の毛皮を持つ四足の獣。
「これは……封印の守護獣!?」
ティアが叫ぶ。「いや、違う……これは、“解き放たれた”何か!」
それはかつての魔王軍の尖兵、“魔喰いのヴァルグ”だった。
「封印が……完全に弱ってる…」
ルカはそう呟き、体の中の神の残滓が反応するのを感じた。
―――――
「ああ、やっと出てきたな。
神の束縛から解き放たれた、我らの同志たちよ――」
崩れた石畳の向こうから、黒いフードを纏った一団が現れる。
胸元には、逆さまの星を刻んだ徽章
――〈ノクス教団〉だ。
ーーーーーーー
ノクス教団
それはかつてルカが世界の神だった頃、
大戦の終末期に封じられた「魔王ノクス」――
それは、混沌と破壊の力そのものを体現した存在だった。
ノクスは“神々の審判”によって封印され、その影響は世界の秩序に一時的な平和をもたらした。
しかし、その魔王を神のように崇める狂信的な信徒たちがいた。
彼らはこう信じた。
「神々は弱き人間に秩序を押し付ける偽善者だ。ノクスこそ真なる自由と力の象徴であり、我らが神にふさわしい」と。
ーーーーーー
中央の男が一歩前に出た。金の仮面をつけたまま、街を見渡す。
「さあ、宴を始めよう。
これは神の時代の終わり、神の遺産を取り戻す祭典だ」
「お前たちが……この封印を壊したのか」
ノクス教団の男はこっち振り向き、高くあげていた手を下ろした。
「なんだお前は。なぜ異物との共鳴を起こすことができる…?…神の使徒か何かか?」
「いや、経験を多く積んだただの旅人だ。」
ルカは“神”でなくなったことで、直接的な神力は失っているが――
神だった頃の記憶と、ほんのわずかに残った「神の核」が、遺物との共鳴を起こすことができるようだ。
「まぁいい、今さら邪魔をされたところで我らの意思は止められない…」
中央の男はそういうと、黒煙と共に一瞬で消えた。
封印から解き放たれし魔物はこちらに気づき向かってきた。
クソッ逃げたか…
「こっちに来るわ!ルカ気をつけて!」
「…ここはアイツと戦うしかないようだな。」
魔物が咆哮を上げ、戦闘が始まった。