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第二章:転生、そして目覚め
……まぶしい。
それが、彼が「人間として」感じた最初の感覚だった。
光をまっすぐに「眩しい」と感じることが、こんなにも鮮やかだったとは。神だった頃にはなかった、目の奥が痛むような、けれど心地よい刺激だった。
「……っ、身体が……重い……?」
ゆっくりと指を動かす。土の感触、風の匂い、そして鳥の鳴き声。五感すべてが、これまでの何千年よりも濃密に彼の中を満たしていた。
彼は、草原の真ん中に倒れていた。
空は深い青。見たこともない二つの太陽が、天を照らしている。地平線の彼方まで続く森と山。その中心に、小さな街の影が見えた。
「……転生は、成功したようだな」
彼は、かつて神だった。
今は、名もなき一人の青年――ルカという名を与えられていた。
彼の旅はここから始まる。誰にも崇められず、ただ自由に生きるための旅。だが、皮肉なことに彼の存在は、この世界にとってあまりに「異質」だった。
この世界は、まだ知らない。
かつて世界を創造した神が、人間として歩き出したことを。