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 トレム庭園に着くと、メイソンが驚いた顔をして出迎えた。

「昨日戻られたばかりなのに、どうされたのですか?何かお忘れ物でも?」

「いいえ、忘れ物ではないわ。贈り物を届けに来たのよ」

 私は居ても立っても居られない心持で、屋敷の中へと入っていった。

「おや、お連れ様ですか?…あっ!こちらの方は…」

 メイソンが私の背後を見て息をのむ。そんなメイソンを見て、エレンはにっこりと微笑んだ。それは、壁に飾られた肖像画そのままの笑顔だった。驚いた表情のメイソンを見て、私はとても満足した。

「アイオン!どこにいるの?お客様よ!」

 私が大声で呼ぶと、アイオンが屋敷の中から出てきた。

「エステル、どうしだんだい?昨日慌てて帰ったと思ったのに、こんなに早く戻ってくるなんて…」

 そう言いながら、私のほうを見たアイオンは、目を見開いて立ち止まった。

「エレ…ン…?」

 私も立ち止まり、エレンがアイオンのほうへ行くように促した。

「アイオン、会いたかったわ」

 エレンは微笑みながらそういうと、アイオンに向かって両腕を広げた。

「この日が来るのをずっと待っていたわ。アイオン」

 アイオンは、戸惑いながらも、ゆっくりとエレンに近づいていく。

「アイオン。これからはずっと一緒よ」

 アイオンは、両腕を広げ待つエレンに恐る恐る手を伸ばしていき、震える手でエレンを抱き寄せた。

「夢みたいだ…もう一度君をこの腕に抱きしめられるなんて…」

 満開の桜が風に揺れている。風に舞う花びらの中、抱き合うふたりの姿はまるで絵のようだった。しかし、美しい風景に溶け込むその姿を見たとき、私はなぜか胸が苦しくなった。メイソンを促し、そっとその場を離れる。

「しばらくこちらに滞在するけど、私は自分の研究所に寝泊まりする予定よ」

「さようでございますか。では、あのかたは、その」

 メイソンはわずかに戸惑いを浮かべ、言葉を濁す。

「エレン、よ。エレンはこちらでお願いするわ。もし、困ったことがあったらすぐに連絡してちょうだい」

「…かしこまりました」

 メイソンにエレンのことを頼むと、私はそっと庭園を出て行った。ふたりのことは気になったが、振り返ることはしなかった。屋敷を訪れたときの興奮は静まっており、「再会」を喜ぶアイオンに、これでよかったのだ、という想いとは裏腹で素直に喜べない自分がいた。


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