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私は大急ぎで研究所に戻った。研究室に入ると、そこには、ニアに身支度を整えてもらったエレンがいた。
私は興奮していた。ついに、私の長年の夢が形になったのだ。
「エステル?私はあなたにそっくりね。まるで姉妹のようだわ」
エレンは近づいて来ると、そっと私の髪に触れた。
「そうかもしれないわね。でも、それは逆だわ。私があなたに似ているのよ、エレン」
そういうと、エレンは少し怪訝な顔をしたあと、吹き出した。
「確かにそうね。あなたは、私の…」
エレンは何か言いかけたが、そこで口をつぐんで、意味ありげに微笑んだ。
「そんなことより、いつ出かけるの?そこは遠いんでしょう?」
エレンの表情が気にはなったが、私はそれよりもこのあと起きるであろう様々なことを考え、沸き立つ気持ちが抑えられなかった。
「ニア、チェックは完了しているわね?そうしたら、まずは報告書の作成を…」
「キリシマ博士、もう作成済みです。エスキース教授への報告はまだです」
「さすがね。助かるわ。教授への報告はいったん、待ってくれる?」
「博士の休暇明けに報告ですか?」
「いいえ。まずは確かめなければならないことがあるから。休暇も1週間延長申請をしておいてちょうだい。理由は、研究の最終調整と伝えておいて」
「了解しました」
ニアが手続きをしているのを見ながら、私は今帰ってきたばかりだというのに、再びトレム庭園へと向かう準備を始めた。
「エレン、今からすぐに出かけるけれど、体調は大丈夫かしら。食事は?気分は悪くない?」
私が尋ねると、エレンはにっこりと微笑んだ。
「大丈夫よ。1分でも早く、出かけたいわ」
高速移動できるエアカーを準備して、瞬間転移装置を使うと、私はアイオンのもとへと急いだ。エレンは物珍しそうにあたりを見回しながら、瞳を輝かせていた。
「エレン、今からあなたが会う人はあなたにとってとても大切な人。これから先、あなたがずっとそばにいることになる人よ」
移動中、私が話すとエレンは
「わかってるわ。だって、私はその人に会うために生まれてきたのでしょ?最期にした約束を果たすために」
と言いながら、含み笑いをした。
「彼は、驚くかしら?喜んで迎えてくれるかしら?」
少女のように目を輝かせたかと思うと、不安げな表情を浮かべる。くるくると変わる表情は見ていて飽きない。きっと、この子ならうまくやっていくだろう。
私はとても満たされた気持ちで、エレンを見つめた。




