表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/25

プロローグ

 森の入り口にピンク色の花びらが落ちていた。

 この近くに桜の樹などあっただろうか。辺りを見回すがどこにもない。

 どこかから風で運ばれてきたのだろう。そっとつまみ上げると手のひらに載せた。

「あまり遠くまで行ってはダメよ」

 おばあさまの声がする。

「はあい」

 私が返事をしたその時、急に強い風が吹いた。

「あっ!」

 ザアッという樹々の音と一緒に、私の帽子が飛ばされた。

 慌てて帽子の飛ばされたほうを向くと、そこにはこの世のものとは思えないほど美しい青年が立っていた。美しい銀色の長い髪が風に舞い、じっと私を見つめているその瞳は澄んだエメラルドグリーンだった。

 青年は私の帽子を手にしていた。

「あ、ありがとう、それ、私の帽子」

 少しどぎまぎしながら私が言うと、青年はそっと帽子を差し出した。

「エレン?大丈夫?」

 おばあさまの声がする。

「大丈夫よ!帽子が風に飛ばされて」

 帽子を受け取りながら振り返りおばあさまに返事をし、もう一度きちんとお礼をしようと私は青年のほうに目を向けた。

 しかし、青年の姿はなく、桜の花びらが風に舞っているだけだった。

「エレン?日が暮れてしまうわ。そろそろ帰るわよ」

 今のは夢だったのだろうか。でも、確かに帽子を受け取ったわ。

 帰り道、何度も青年の姿を記憶の中で反芻しながら、彼は、天使だったのかもしれない、と、私は思ったのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ