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完結 小悪魔皇女様のお婿様決定

ようやく意中のランビエール公子と二人きりに。

さあ小悪魔皇女殿下はどうしようとしているのか?

「えええ~~えぇぇ………」


皇女殿下あんまりです。

これって二度目ですよね。えぇぇェ~~~~。


ランビエール・ディア・ラファイエット公子は完全に身体が固まってしまってこの体勢を維持する事しかできなかった。


何故なら自分の腕の中に意識のないフェルディアーヌ皇女殿下の身体を抱えていたから。

今何故だか離宮の近衛兵に囲まれているこの状況をまったく理解出来ないでいる。


自分から誘ったわけではない。

そうフェルディアーヌ皇女殿下が二人で話がしたいと強引に手を引かれて今いるブランコに乗っているのだ。


あぁ~~これからどうなるのだろう。

頭は今の現状に置いてけぼりにされていた。


話を戻そう。

皇女殿下に手を引かれて強引に引きずられるように外に出てきた。

この皇女殿下は僕に何の話があるのだろうか。

いや聞くべきではない。聞いてはいけない気がする。


皇女殿下の手に引かれ出た庭園は全く違う顔を見せる。

昼に見たこの庭園は美しくまるで神の庭園が存在すればまさにこのような場所であろうと思われた。

夜の庭園は風が吹くたびに木々の葉の音とフクロウの鳴き声が聞こえてくる。

昼間とは違う来た事のない得体のしれないどことなく陰鬱とした魔的な雰囲気がする。

皇女が自分をどこか違うこの世とは違う世界に連れていきそうな気がするんだ。


どこに行くのか?

小道を外れて低い木々が点在する林を曲がりくねりながら、月明かりがあるとはいえ皇女殿下は迷うことなく立ち止まりもせずつまずきもせずにずんずんずんと進んでいく。ほとんど引っ張られている状態だ。

歩む先に他とは少し小高くなった広い場所にたどり着くとその足は止まった。

皇女殿下も僕も動悸が激しくなって息切れをしている。

いままで見た事の内皇女殿下の一面を知り狼狽してしまう。

いったい何が?


そこはこの離宮が俗世とは離れた場所にあると納得出来る光景、どこまでも続く平原だ。

あまりの景色に言葉が出ない。

地平線がくっきり満月の月明かりに照らされて見える。

天は満点の星空この世ではない。

ぼ~とその景色を眺めているとふと傍にブランコがあるのがわかった。

数名程度のれるそれはぽつんと一つ置かれている。


「押していただけるかしらランビエール殿」


無垢な笑顔で言ってくる皇女殿下に誰が「いいえ」と言えるでしょうか?


「えぇ」


皇女殿下の手をとり、そのブランコに誘導してお乗せする。

ゆっくり優雅にそっと腰をおろされた。


後ろにまわり、その背のある板を両手で手前に引いてゆっくり手を前に押し出す。

ギィ~ギィ~といった木の擦れる音が鳴るとゆっくり前にブランコが揺れ出した。

戻ってくる度に同じ動作を繰り返す。


ただ木々の騒めきとブランコの漕ぐ音だけが聞こえる。

少しの沈黙の後に皇女殿下が話始める。


「子供の頃から一人になりたい時はここにきたのよ」


その声が少し寂しそうだった。

僕の胸の奥がズキッとする。


「ここはね。私がまだ記憶がない赤ん坊の頃に御父様と御母様と私でよくピクニックしていた場所だそうよ。

 このブランコも三人でよく乗って遊んだんですって。」


「そうですか。思い出の場所ですね」


「……でも私には小さすぎて記憶がないの…だから寂一人になりたい時はここで過ごしていたの」


「…………」

なんて答えようか。

こういう時はなんて言ったらいいんだ?

僕は言葉につまる。


「お辛かったでしょう」

「おかわいそうに?」

「寂しいでしょうね」

どれも違うし、口にするには軽い慰めの様に思える。

それに両親が揃っている僕に何を言われても慰めにはならないだろう。

沈黙に耐え切れず思わず口にしてしまった。


「御母様にお会いしたいでしょうね」


あっしまった。

そう思った時には遅かった。


皇女殿下は答える事なく、ただ僕がわかるくらい大きく頷いた。


幼い頃、いや今も母親のいない子供がいかに身分が高かろうが低かろうが、経済的に豊かか貧しいか関わらず。

記憶すらないがいかに辛いか考えなくてもわかる。

記憶があったとしてもやはり辛い事にはかわりないだろう。


しかし僕が慰めていいのだろうか?


両親は健在でそれなりに仲が良く問題はないと言っていい。

その僕が慰める資格があるだろうかと考えてしまう。

そうはわかっていても何か出来る事はないかと考えてしまう。

何か言わなくは何か…………。




「あっ」

一瞬戸惑ったが、もうその話くらいしか思いつかなかった。


「……私の話を聞いてもらえますか?」


皇女殿下は少し間があって小さな声で言った。


「えぇ」


その話は皇女殿下の境遇に比べて大した事ではないけれど、思いついた事はその話くらいだったから。 

自分の思っていた事を話してみた。

思いつくままに。


「皇女殿下もご存知の通り。

 僕の父は昔旧ヴァレイアル王国の貴族でした。

 王国の滅亡後にあろうことか、今のセヴィエ一世とエルミエ皇后の暗殺に加担した過去があります。

 本来なら反逆罪で処刑されてもおかしくなかったのです。


 しかし当時のパルラミル皇后陛下の過分な裁量で、父は陛下を助けフェレイデンの公爵にまで恩寵を受

 けました。

 しかしフェレイデン帝国の貴族達の一部には反感を持つ者もいて。

 私は学生のうちから心無い仕打ちを受けてきました。

 アルフォソンはそんな時に知り合いました。

 少し軽薄な所はありましたが、彼はそんな私になにものでもないただの男友達として接していくれた数 

 少ない旧友です。

 父からも幼いうちから身の程をわきまえて生活するように言われ続けてきました。

 同級生や宮廷で理不尽な事があっても無言を貫き

 身どほどをわきまえて生活してきたつもりです。

 いやもっとすべきなのかと?

 自問自答を繰り返していました。

 目立つことは避けたいのです。」


皇女殿下は頷いては。

はっとした様子でいらっしゃいます。


「宿命には抗えれない。ただ……時折自己肯定感が酷く傷つくのですね」


目を伏せて悲しそうに私に言った。





「…………ねぇ。こちらにいらして」


皇女殿下の小さな声に懇願と哀愁と寂しさと切ない様子に思わずゆっくりとブランコの前に立つ。


風に打たれて紅潮した頬を月の光に照らす。

青白い光に照らされた姿は神々しくもある。


皇女殿下は端により僕は左に腰を掛ける。

下ろした足元を地に着けて勢いよく前に揺らす。 


ギィ~~ギィ~~~とブランコは揺れる。

僕の心も揺れていた。


こんな所にいていいのか?

皇女殿下の切ない様子に何がして差し上げらるのだろうか?と。




「私ね そんなランビエール殿だから。

 初めて会った時から惹かれたのです」


皇女殿下は目をくちゃっとさせて本当に心から楽しそうに笑う。


「ねえ 初めて離宮にいらした時 初めましてっておっしゃったけど。

 私達以前お会いしていましたのよ。覚えていらっしゃらいの?」

拗ねた様に言った。


意外過ぎる話だった。


フェルディアーヌ皇女殿下と以前に会っている??

正直初耳だった。


脳内で過去の記憶を探る。

しかし記憶の引き出しは閉まってる場所は見当たらないし、そんな記憶を閉まった事すらないように思う。


「会っていた?以前に?」


「うふっ。 ええ」


ん~~~まるっきり記憶にない。




長い沈黙夜も明けるのではないとというほどに。

意識が飛んでいた。

気が付いた時には自分の前に……かなり目の前に皇女殿下の顔があった。


「えっえぇ……」


瞳孔が開き、驚いて心臓がバクバクいっている。

なんで??


「デヴュタントの際にご一緒に一曲踊りました」


「えっ!えっえええ~~~~ 」


あの宮廷デヴューの日に舞踏会で踊った?


正直あの時は全然覚えていません。

なんせものすごく緊張していたので、誰がいて誰と踊ったなど記憶があるはずもありません。

むっとするほどの熱気の人混みに、音楽の演奏は頭にガンガン響くだけの音にしか聞こえず、皇帝皇后皇族の臨席と多くの貴族達の中にステップを踏むのが精一杯。

まだ十五歳の青年だ。無理もないと思ってほしい。

いやしかし覚えてないなどと失礼だ。

そう失礼。


「あの日は皆緊張していましたし、私もランビエール殿と踊った事しか覚えていませんの」


怒ってもいいほどの事なのに皇女殿下は懐かしいような少し憧れた眼差しでじっと僕を見ている。


「だってあの時、ランビエール殿は……。緊張のあまり…私足を踏んでしまいましたの

 そしたらね。もっと踏んでもいいです。 

踏んで上手になるのですって」


皇女殿下の告白はまったく心当たりのないものだった。

皇女殿下は懐かしそうに愛しそうに私を見つめてきた。


「えっ。そうなんですか?覚えていません。

 申し訳ござませんでした 」


また皇女殿下はクスクスッといずら好きの子供の様に笑っている。



「あの時思いましたの。この誠実な方とずっと一緒にいれたらいいのにって」


少し斜め下をむいた皇女殿下の頬はピンク色に染まっている。


どうしらたいいのか?

いやよく考えていちおう僕は皇女殿下の花婿候補の一人だ。

しかし三名の内一人はすでにレースから降り、あとの一人はルイは例の侯爵夫人とランデヴーののち一緒になるだろう。なのでまた一人降りる事になる。


ようは僕一人になっているのだ。


候補の三人を知った時ドディナル殿だと思っていた。

ルイ・フェルナンドは公爵家の次男ではあるが侯爵夫人との醜聞が漏れるのも時間の問題だったので除外だと思っていた。

僕は出来るだけ静かに過ごさなくてはいけないのに。


僕の予想は完全に外れたのだ。

ん~~~まさかの皇女殿下の告白。


どうしたらいい。どうしたらいいんだ?? どうしたら?


「……ランビエール殿が公爵家の出身について思う所がある事は存じています。

 出来れば皇女の婿などという表立った立場には荷が重いと思う事も。

 でも少しは私の思いの可能性は?

 私をお嫌いなら。

 いやだと言ってくださってもいいの。

 でも嫌いでないなら……。

 ねぇ~私の事お嫌い?」


なんて台詞だ。

これ絶対は嫌とは口が裂けてもいえないようにもっていっていないではありませんか?

いやいやそういう問題ではありません。

好き嫌いではないのですよ皇女殿下~~~。



「いや。いや。あの……」


「いやなの…?嫌い?…ですか?」


瞳を潤ませてこちらを見ている皇女殿下はそら恐ろしいと思うのは良くない事でしょうか?


「いや…あのいやというのではなく……そのあの…えっと…」


僕の話を聞いていなかったのでしょうか?

僕は出来るだけ目立たずに生きないといけないのですよ皇女殿下。

心の声が出せるなら出しています。


「ランビエール殿の優しさは身を守る一つ盾なので

 すね。

 わかってはいるのですが。

 私には身に染みるのです。

 お父様は私をとても愛してくれます。

 私もお父様が大好きですわ。

 お父様を悲しませたりしてはいけないの。

 でも時々違う私にも気付いてほしいと思うの。

 だから時々……お母様が生きてくださっていたら。

 もっと自由でもっと違う世界も広がっていたのかもと思うのです。

 ランビエール殿傍にいてくださればもっともっと違う世界が見れると思うのですわ。

 私の事嫌い?」


あっ…これ言えなくなるパターンの。


「身にあまる…しかし…」


そう言おうとした時、皇女殿下が言葉を遮る。


「そういうのはいいの!」


え!!そんなに強い言葉は初めてだった。


「あぁあぁ…」


そう言った後、皇女殿下が僕の腕の中に飛び込んできたと思ったら身体はそのままだらりと力なくブランコから落ちそうになってしまう。

僕は無意識に皇女殿下を抱きしめていた。


その時だ。

後ろの方からガサガサ、バンバンバン!と金属音が聞こえてきたと思ったら、あっという間にブランコの周りを近衛兵に取り囲まれていた。


「えぇ~~~~~~」


皇女殿下を抱きながら、その近衛兵の姿を後ろに見た時ある事に気付いた。

そうここは離宮から丸見えの丘の上にあったのだ。

しかも月光で望遠鏡を使えば丸見えだったのだ。


これはやられたかも……。心の中でそう思った。




「えええ~~えぇぇ………皇女殿下!!」


皇女殿下あんまりです。

これって二度目ですよね。えぇぇェ~~~~。




ランピエールの思考


皇女殿下が失神した後、近衛兵に抱きかかえられた殿下はすぐに寝室に運ばれ医師が呼ばれた。

私は上皇陛下の私室に呼び出され、状況の説明の為に呼び出されている。


当然の事ながら、上皇陛下は眉間にありったけの皺を寄せて僕を睨みたいが出来ないような複雑な表情で僕を見ている。


おそらく僕が花婿候補であり、二人の時間を持つのは当然だろう。

しかし夜に二人っきり…どういう態度をとればいいのか悩んでいると思える。


とにかく謝罪しよう。

僕と一緒にいたのに具合が悪くなったのだから。

それは間違いないから。


「上皇陛下

 お詫びいたします。

 私が傍にいたにも関わらず。

 殿下の危険を察知出来ませんでした。

 私の失態っでございます」


片膝をつき頭を垂れる。

額に汗が滲み始め少しの沈黙の後に。


「まあ。あれだ……。

 花婿候補…だし……しかし……いや…」


陛下は冷静になろうとしている。

何せドディナルは離脱、どうも二人を見るからにルイもルナと関係が深そうだ思っているだろう。


となると残りは私だけの選択になる。

勿論皇女殿下が嫌といえば別の話にはなるのだが。


先ほどの皇女殿下の思いだとそれはないだろう。


どだい候補に選ばれた段階で私には選択肢がないのでしょう。

ここはもう腹を締めなくてはいけないと言う女神の采配なのかもしれません。







上皇陛下の思考


どうしよう。どうしたら一番いいんだ!

はたしてあの場所にフェルヌが連れて行ったのだからフェルヌが嫌いというのはないのだろう。

むしろランピエールとの結婚を望んでいるのだ。

事ここに至ってようやく溺愛する娘の結婚に向き合ったかもしれない時が来てしまったのだと自覚する。


家族の思い出の場所である。だから見つけた場所を聞いた時にフェルヌの思惑もなんとなく感じていた。


やはりラファイエット公子を想っているのは確かだ。

やはりここは…… 


私がランピエールに。

声をかけようとしたまさにその時。


ランピエールが跪くいている中で、部屋の扉が荒々しく開けられる。


「皇女殿下

 目を覚まされました」


執事長の叫びに近い声が木霊する。

急いで三人揃いフェルヌの部屋に入る。




皇女殿下の思惑



次に記憶が戻った時自分のベットの中にいた。

どうやら気絶してから自分の寝室に連れてこられたようだった。


「お父様?

 ランビエール殿?

 マリエッタ?」


三人に囲まれて目を覚ます。


「大丈夫か?フェルヌ?」


上皇が真っ青な顔で私を見ています。

ランビエール殿も心なしか青白い顔で神妙そうな表情でこちらを見ています。


私は身体を起こし、マリエッタから水の入ったコップを貰い一口飲んだ。

喉が潤い気持ちいい。


医師が脈拍を取り、手を私のおでこに乗せる。

その後は口元があがったので問題ないと判断できる。


「冷気にさらされたようです。

 生姜湯をお召し上がりになりください。

 もう寝台から起き上がってだいじょうぶです。

 薬も不要です。

 ()()殿()()()()()()()()()()()()()()()()()()です

運動された方が体温が上がってよろしいでしょ」


お父様はまたお医者に文句を言いたげだが、お医者は無視を決め込んでいる



「はい。

 ありがとう」


私はにっこり微笑んで確証した。


マリエッタがすぐに生姜湯を運んできて、それをゆっくり飲んだ。 

苦さと蜂蜜の甘さあったかさが身体に熱を運んでいく。

隣の二人は心配そうにしている。


今回の失神はいわゆるわざとではありません。

人間状況に応じて身体が反応するようです。

そうもしかしたらランビエール殿が嫌いというかもしれない。

そう思ったら聞きたくないという気持ちと寒さで失神してしまったようです。


「フェルヌ」

お父様は力いっぱい私を抱きしめていった。


「何がしたい?フェルヌの思う通りに言う通りにするよ」


優しいお父様です。

私も抱きしめ返しめます。

お父様大好き本当の気持ち。

愛が痛い時もあるけど。


「あのね。もう大丈夫。

 会場に戻りたいわ。

 そしてランビエール殿と踊りたい」


お父様は一瞬ギクッとされましたが、すぐに作り笑いをされて頷きました。 

その顔は「しかたないフェルヌ」といいたげでした。


隣のランビエール殿は降参したように苦笑いをされています。


これはしかたないという意思ですね。


嬉しい~~~ 


着替えのためにお二人は寝室を出て会場に戻られました。

私はマリエッタの誘導で再びおしゃれの支度です。


ワクワク~~~今日はとても楽しいです。


「ねぇマリエッタ。

 あの思い出のブランコ広場から離宮から良く見え

 て?」


マリエッタはにった~と笑ってフェルディアーヌの首に真珠のネックレスとつけながら言う。


「ばっちりでした。

 絶妙なタイミングで皇女殿下が手を挙げてくださ

 いましたので。

 望遠鏡で見ながら合図の後すぐに近衛兵を向かわ

 せることが出来ました。

 皇女殿下が本当に失神されていたとは思いもしま

 せんでしたが」


フェレディアーヌはクスクス笑う。

「でも本当にわざとでないのよ。」


会場に戻るとお父様とランピエール殿が何やらお話しておられます。


お父様はしょうがないと少し不満そうだけどランビエール殿に厳しいあれこれ言っているような様子です。

ランビエール殿は少し青白い顔を死ながらメモをとっています。


多分私とランピエール殿のこれからの事でしょう。



だってルイ殿とルナ殿の様子はただならぬ雰囲気がありますもの。

私とランピエール殿の婚約は決定です。


逃がしませんわよランピエール殿。


優雅にランピエール殿の元にいき手を差し出します。


お父様は隣で首を上下に何度も頷いています。


ランピエール殿は私の手の甲に口づけ、お父様に会釈してから私をエスコートして会場中央に二人だけ音楽が聞こえワルツを踊ります。


二度目二人きりのダンスは公私認められた男女にしか許されていません。


つまりこれをもってランピエール殿は私の婚約者とお父様に認められた事を意味します。


ステップを踏みながら、背中に羽が生えているような気分。


こんなウキウキ、ドキドキ、幸せな気持ちは初めてです。  


ランピエール殿は私の嬉しそうな表情を見て観念したのか、優しい私を包み込むような瞳と手つきで言った。


「皇女殿下にはかないませんね。」


ふっと息を吐いたと思ったらダンス中に額にキスをしてくれました。


わっと周りで歓声が上がります。

皆が見る中で行われるこの行為は「二人が将来を約束した証」の行動とフェレイデンでの約束事です。


「きゃあ〜」と叫びたかったけど。


ここはグッと我慢です。


やったー!作戦成功です。


この後私は宮殿に手紙を出しました。





親愛なる御義姉様


いかがお過ごしですか


御義姉様

私フェルディアーヌはラファイエット公爵子息ランピエール殿と婚約します。

結婚出来ます。


聖パルミラル女騎士団に情報収集を指示してくださって。

ドディナル殿と恋人の秘密、ルイ殿と侯爵夫人の関係を教えてくださり。


お医者様の手配、その他のいろんなアドバイスをありがとうございました。


結婚式はと二人の家族だけの招待でひっそり行います。

是非皆様お越しになってね。

御義姉様大好き


明日お母様の廟にご報告に参ります。

私すごく幸せです。



                          フェルディアーヌ・ディア・フェレイデン



御義姉様と呼ばれたのは

フェレイデン帝国の皇后エルミエだ。



エルミエ皇后はこの手紙を読みながら珍しく涙を流す。


「ご覧になっていますかお母様

 あなたの大切な皇女様は幸せですよ」


そう言って手紙から目線を外して澄み切った青い空を眺めた。




通常フェレイデンの皇族の婚姻には最低でも一年ほどかかるが、フェルディアーヌのたっての希望で三ヶ月後にささやかな結婚式と離宮で披露宴が開催された。

後に子供にも恵まれて幸せに暮らしましたとさ。

二話完結で連載していたら楽しくなって長くなってしまった。

途中でエリザベート皇女の話が出てきましたね。

「残忍皇帝は十人目の皇后に敵国の皇女を娶る」の話がちらりと出てきました。

是非お立ち寄りいただければなと思います。

ご愛読ありがとうございます。気にいっていただければいいねや感想などいただければ励みになります。

ありがとうございました

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