皇女様の婿選び 離宮の舞踏会
失神したのは舞踏会を開催したいというまさかの展開
可愛い天使の皇女殿下は実は小悪魔皇女殿下だった?
フェルディアーヌの顔に黄昏時の日差しが当たり瞼がピクピク動いた。
「フェルディアーヌ」
少しずつ開かれた瞼の先にはうっすらとお父様らしき人の顔が写り込みました。
「お父様?」
ふあふあする意識の中で父の顔がはっきりとしていく。
「フェルディアーヌ!
急に倒れたと。
そなたを抱きかかえたラファイエット公子が部屋に来た時には心臓が止まるかと思ったぞ」
顔面蒼白なお父様が倒れそうです。
「ごめんなさい。
ご心配をかけてしまって」
「とにかく医師だ
執事長 医師を連れてきなさい」
お父様の圧が執事長を慌てさせます。
すぐに医師が入室してあれこれ診察した後安心させるようにこう言った。
「お疲れになられたんでしょう。
ゆっくりなさってください」
ん。聞きたかった一言を貰いほっとする。
そうでしょうとも。
「えっ!倒れたんだぞ。
何もないわけがなかろう。
どこか悪いんだ
もっとちゃんと診察せよ」
お父様が鬼のように医師を睨み怒鳴りつけています。
「大丈夫です。ただの過労です。
寝られたらよくなられます」
医師も曲げないです。
「お父様
先生も大丈夫っておっしゃっていますわ。
ほか顔色もよいてしょう」
お父様にニッコリと微笑んで木漏れ日のような微笑みを湛えてみせる。
「少し休めば大丈夫ですわ。
ねぇお父様。
それより皆さんに失礼してしまったのが気がかり
ですわ。
お父様。」
潤るませた瞳でお父様を見つめます。
お父様は飛び切りの嬉しそうな表情をして、私に抱きついてきました。
「なんてよい子なのだ。
フェルディアーヌ私の宝物」
感無量のようで滝のような涙を流しています。
「お父様
お願い。
今度はちゃんとおもてなししたいわ。
ねぇ…お父様」
一瞬迷った様子で半分諦めのような半分仕方ないようなコロコロ変わる顔をした後、ため息を深くついたお父様。
「しかたないな」
私はお父様の胸に飛びついた。
「お父様大好き」
お父様はこれに弱いの。
ここはひと押し
「っでね。今度はね。
舞踏会がしたいわ。
この前の家族以外で絶対にね。素敵ねぇ……お父様お願い」
また潤ませた瞳をウルウルさせてみる。
もうぐうの音も出ないらしく……お父様は頬に手を当てて神妙な面持ちですがこれはいつもの仕草です。
「しかたないなフェルディアーヌは」
OKです。
「お父様!」
腕にしがみつきます。
これはかなりの効果的なのでもう陥落です。
「さあお嬢様そろそろ軽いお食事でもいたしましょう。」
マリエッタすごくナイスフォローです。
「さあぁ~上皇陛下も
ゆっくりさせてあげなくては…」
お父様は名残惜しそうに部屋を出て行かれました。
「何かあればすぐに呼ぶんだよフェルヌ」
「はいお父様」
はい執事長と医師が背中を押す様に部屋を退出させられてしまうのでした。
バタンと扉が閉まった後、遠ざかる足音を確認した後です。
「皇女殿下 流石です。
完璧です。
それにルイ様のあの色家…すごかったです。皇女殿下でなかったら~~きゃ~~落ちてますよ!
お二人の感じ本当にぽっとなりました。」
マリエッタがベットに腰を掛けてニコニコしています。
「マリエッタナイスフォローよ。
うふっ。でも少し心が痛いわ。
お父様をだましているようで。」
ん。確かにだましましたがそう仮病です。
はいわざと失神しました。
はいわざとです。
ごめんなさいお父様。
お父様は私を溺愛しすぎて気付いていませんが、私フェルディアーヌはそれなりに大人です。
お母様を亡くされてから私を生きがいに暮らしておられます。
私もお父様が大好きです。
お父様の悲しみがとても悲しいです。
出来るだけお父様を喜ばせてあげたい。
だってお母様を亡くされた悲しみはとても深いと離宮の者やお兄様お義姉様にいつも聞いていました。
だからお父様の望む娘になりたいの。
でも大変ですよ。
思春期は封印しました。
今回はこんなによくしてくれ愛してくれるお父様を悲しませる事に罪悪感はありますが。
わからないように私の望みは叶えます。
ごめんなさいお父様少しだけ許して……。
「で!皇女殿下。
これからが本番ですよ。
皇女殿下の御所望な方はなかなか鉄壁の方でござ
いますからね
さぁプチ舞踏会楽しみです。
可憐な皇女殿下を着飾れると思っただけで…もう
楽しいです」
嬉しそうなマリエッタがケタケタ笑って自然と私も声をあげて笑いました。
ワクワクします。
マリエッタが楽しそうにしていると私も楽しいです。
友達ってこんな感じですよね。
もっと友達がほしいです。
これくらいは大目に見てねお父様!
さてあのパーティーから翌月にお父様主催で離宮のプチ舞踏会を開催します。
今日の夜は前回の姪っ子達の未成年は遠慮してもらい
ルナ・ディア・バルヴィネス侯爵夫人
エレナ・ディア・アレクサンドロヴィナ公爵夫妻
ランビエール・ディア・ラファイエット公子
ルイ・フェルディナンド・ディア・ナディアン大公子
アンドリュー・ディア・ディナルド殿が婚約者の子爵令嬢を伴い
あの日以来勢ぞろいされました。
さてディナルド殿の参加はお父様が渋りましたが、そこは上手にお願いしました。
あの後、ディナルド殿のお手紙には私の誠意と援助を惜しまないお約束と必ず恋人と幸せになってほしいとしたためました。
そして官職を得られ独立されてようやく子爵家の了承をとりつけ婚約にいたったのです。
お礼のお手紙にいただきましたが、お会いするのはあれから始めてです。
お祝いを兼ねた参加です。
これで宮廷でとやかくいう人はいないでしょう。なんせお見合いの途中退席という失態をお父様がお許しになられたと受け取られるのです。
「上皇陛下
あのような失態をお越したにも関わらず過分なご配慮ありがとうございます」
お父様は頷きました。
私にお願いされまらどうしようもありません。
「婚約おめでとう。楽しんでいってね。アンドリュー殿」
「皇女殿下
先日は大変失礼いたしました。
またそれにも関わらずお引き立てありがとうござ
います」
やはり律儀な方、紹介して正解です。
お二人の衣装はお祝いに今回お贈りしました。
ルナ・ディア・バルヴィネス侯爵夫人は侯爵を伴なわず参加です。
「上皇陛下ご機嫌麗しく。お誘いをありがとうございます」
「ん。よく参った」
「皇女殿下先日はお誘いくださりありがとうございました。」
「いえ。もうお友達ですわ。
楽しんでいらして。」
「はい」
ルナ殿は花が咲いたような笑顔でお辞儀をされました。
本当にお友達になりたいわ。
侯爵夫妻は残念ながら現在別居状態でほぼあってないそうです。
お子様もいらっしゃらないので独身貴族のようなのだそうです。
貴族にはよくあるそうです。
基本は身分社会のフェレイデンでは貴族の中では恋愛結婚は大変珍しいんです。
エレナ・ディア・アレクサンドロヴィナ公爵夫妻は仲よさげにお二人で参加です。
アレクサンドロヴィナ家はお母様の設立した聖パルミラル女騎士団団長が出身の軍人の家系です。
ラファイエット公子のお母様が直系ですが、嫁がれたのでご親戚の男子が養子として入られたそうです。
「よく参ったアレクサンドロヴィナ公爵夫妻」
「ご機嫌ようエレナ殿」
「上皇陛下並びに皇女殿下お誘いをありがとうございます」
「皇女殿下はご機嫌はいかがでしょうか?」
心配です。」
「ありがとう。大丈夫よ。あの日は失礼しました」
「いえ。」
ランビエール・ディア・ラファイエット公子とルイ・フェルディナンド・ディア・ナディアン大公子はいつも一緒におられます。
「上皇陛下並びに皇女殿下ご機嫌麗しく。
今日はこのようにお誘いくださりありがとうございます」
アルフォソン公子がお辞儀をします。
「良く来てくれた二人とも。楽しんでくれ。
ほどほどにな」
アルフォソン公子の女ったらしにお父様は釘を刺します。
隣でランピエール公子の口角が上がりました。
「はい」と満面の笑顔のアルフォソン公子大物です。
「ラファイエット公子も今日は楽しんでくれ
先日は皇女を助けてくれありがとう」
ランピエール公子は仕草も優雅で、作法にのっとり深くお辞儀をされました。
「上皇陛下並びに皇女殿下
ご機嫌麗しく
皇女殿下のおかげんはいかがでしょう」
「ありがとう
ランピエール様
先日は大変失礼いたしました
今日は楽しみましょう」
にっこりと微笑む。そう心の奥底は今は閉まって。
ルイ大公子が調子よさげに侍女達をからかっているのを、ランビエール公子がたしなめておいでです。
音楽隊が演奏して盛り上げます。
今回は夜間開催なので、お酒がふるまわれます。
お父様はそれもあり自分の同伴でという条件付きの開催許可がおりました。
そこは我慢します。
それにお酒くらいで変になるような方はいないと思いますが。
さあ参りましょう華麗なるプチ舞踏会
「皆今日は無礼講だ。楽しんでくれ」
お父様の許可が出ました。でも本当に無礼講などできませんよね。
「上皇陛下の御健勝を願って乾杯」
シャンパンを手に高くあげ皆で口にします。
辛口で美味しいです。
お父様は椅子に座り、私の様子を見ています。
音楽が鳴り響く会場に男女が二列になり中央に進みます。
まずは私とランビエール・ディア・ラファイエット公子
エレナ・ディア・アレクサンドロヴィナ公爵夫妻
ルナ・ディア・バルヴィネス侯爵夫人とルイ・フェルディナンド・ディア・ナディアン大公子
アンドリュー・ディア・ディナルド殿と子爵令嬢
バイオリンがワルツの曲を奏でます。
優雅にワルツ女性のドレスの裾が広がりとても綺麗です。
花が咲いているようにくるくる回り舞い踊り続けて~~~楽しいです。
わぁ~~舞踏会はデヴュタントとなって以来初めてです。
ランピエール殿のリードでクルクル回る。
踊りなれておられて久しぶりのダンスは不安でしたが、今のところ間違えずに踊れています。
でも近い。
ドキドキがランピエール殿にも聞こえそうで恥ずかしいです。
ランピエール殿はたまに目が合うとにっこりと微笑してくれて、その素適な笑顔癒やされます。
「皇女殿下
お上手です」
はにかんでしまいます。
「ありがとう
リードがお上手だからですわ」
少し目線を下げて頬が真っ赤になっていそうです。
「先日は助けて頂いたのに御礼も言わず申し訳なかったですわ。改めてありがとう。
またきちんとおもてなしできず駄目な主催者でしたわ」
「とんでもない事でございます。
おかげんいかがですか?」
優しい方。
「えぇ。大丈夫ですわ。
気にかけてくださりありがとう」
「いえ」
本当にお優しいわ。
一曲終わるとランピエール殿と礼を交わし、今度はアレクサンドロヴィチ公爵と踊ります。
優しいステップと澱みリード紳士です。
次はアルフォソン殿と踊ります。
ルイ殿もダンスはお手の物で少しばかり強引で、引き寄せがややきつめです。
大公殿下の御子息なので、許されるのです。
「ランピエールとのダンスは楽しそうでしたよ。
私とでは楽しんでいただけそうにありませんね」
少しばかりすねた感じが上手です。普通の令嬢ならここでやられていたでしょう。
「とんでもない事。
ルイン殿の悪知恵がなければ今日はございませんでしたのに。
なんでむげにできましょう」
いたずらっぽくほほえみます。
そうあの二人で過ごした東屋での秘密は。
私が倒れひとまず会を中断させて舞踏会を開催する事が目的でした。
だってお昼より夜の方が盛り上がりますから。
「そのかわり私の願いも叶えていただけそうで感謝いたしております」
「良かったわ。
一年ぶりと聞いてましたものね。
帝国中の独身貴族女性の憧れの君の結婚はさぞショックでしょうね」
クスッと笑ってみせた。
「意地悪な笑いですね。
ようやくですよ。
愛がないのに離婚に応じないなど。
まあ帝国の常識ではありますが。
父上も他家の事は口出し出来ないですからね。
お見合いの件を聞いて渡りに船でした。
皇女殿下のお噂を聞いておりましたので…。
上皇陛下に知られたら殺されますので内密に」
「ルイ殿も奥方を亡くされてからの仲と聞いていますよ。
良かったですわね。
醜聞を恐れて奥方を屋敷から
出さないなんて。
今頃お兄様から離婚を進言されていますのでご安心を。
このまま新居へ参られませ。
行き先はあなたの馬車の御者が存じていますわ。
うふっ。お幸せに」
「敵にまわしたら怖い方だ。
気をつけます」
ルイ殿はウインクしてドディナル殿に譲ります。
ドディナル殿は恐縮そうに礼をして私の手をとり踊り始めます。
意外なのですがお上手です。
でも本当に遠慮がちな所は人柄が出ています。
「先日は本当に申し訳ありませんでした。
本来ならいかなる処分があってもしかるべきの所恩情をかけていただき感謝いたしております」
私は安心させるように励ますように笑みを見せます。
「お気にしないで。
所で婚約者の方お可愛い方ね。
お幸せに。ドディナル殿の活躍願っております
わ。」
参加されている婚約者の方は可愛らしい大人しそうな方でとてもお似合いです。
ドディナル殿は少しほっとした顔を見せてほっと息を吐いた。
その時曲が終わりました。
最初のパートナーと隣合わせになり、私の隣には今ランピエール殿が立っておられます。
二曲目は基本的には好きな人と踊れますが、今回はパートナーが決まってないのは私とランピエール殿だけなので、有無をいわせずパートナー決定です。
よし!
もうお気付きかと思いますが、私の意中の方はランピエール殿です。
結婚するならこの方と心に決めていたのです。
でもお父様がなかなか結婚のけの字も向けてくれなかったのです。
ランピエール殿がいつ結婚してしまうのではないかと心配していましたが。
ランピエール殿は結婚には思う所があるらしくその気になられないのが幸いでした。
うふっ。
二度目のダンスはステップが軽やかで動きが早いので楽しみ。
アップテンポな曲調に変わりました。
しっかりフォールドされてくるくる回ったと思ったら動きをゆっくりと徐々に止めて。
更に抱きかかえられて上下に動き、更にステップを繰り返す。
楽しくてスリリングな今流行りのダンスです。
はぁ曲が終わりにむかっています。
名残惜しいで~~~す。
そして終わりのお辞儀です。
「ありがとうランピエール殿
素晴らしいリードで安心して楽しく踊る事が出来ました」
「
よろしうございました。
皇女殿下大変お上手でリードしやすかったですよ」
にっこりと微笑んだ姿は太陽のように眩しいです。
「ランピエール殿
少しよろしいですか?
お話が」
少しはにかんだような。目線を下げがちにしてお願いしました。
ランピエール殿は少し困ったような迷ったような複雑なお顔をされましたが、私が強引に手をとってテラスから庭に出る場所へ引っ張ってしまいました。
こんな機会はありませんから。
ちらりとお父様と執事長の姿が見えました。
執事長がお父様の前に立って必死に動かないようにしているようです。
頑張れ執事長。
上皇陛下と執事長
「フェルヌがランピエール公子と何処かにいこうとしているではないか。
止めないと」
まずい!皇女殿下に強く言われているのに。
あせる執事長
「陛下
公子も無体な真似はここではされません。
そんな方ではございません」
「そんな事はわからぬではないか。
フェルヌの危機じゃ」
駄目です絶対に。
汗が止まらない。でも今回は。
お許しください上皇陛下
「よろしゅうございますか?陛下
今回のお見合いではラファイエット公子はまだお二人でお話されておられません。
陛下もご存知の通り。今回の選抜された花婿候補は本当に厳選された子息達です。
これ以上は陛下のご希望は難しいと聞いていりはではありませんか。
もしもご結婚されず陛下に万が一万が一の事がございましたら。それはご遺産に経済的にお困りの事は
ないかもしれませんが。
この世間の荒波に耐える事が出来ましょうか?
皇帝陛下皇后陛下はお力になってはくれるでしょうが。先のことばわかりません。
もしそのような時になったらどうする事もできなせぬ。
陛下ここはグッと我慢でございます」
今回ばかりは執事長にしっかり言ってきかせているので頑張るはずです。
頑張れ執事長!
お父様必死で耐えていますが、今にも私に向かって飛び出してきそうです。
あ~ごめんなさい無視です!無視します。
舞踏会会場を抜けてスリリングな夜の庭園に誘う事ができそうです。
ありがとう執事長!
次回は本当の最終回
すみません度々最終回が変更になって楽しくて長くなりました。