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花婿候のドディナル殿の秘密とナディアン公子の企み

遂に始まった花婿候補達が始まります。


ドディナル殿はかなり緊張して少し顔色が青白かったです。


少し前をいこうとしたら、さすがにドディナル殿がはっと気付かれて腕を曲げられてエスコートの合図をされました。

私は遠慮がちにその腕をとり二人ゆっくり裏庭に移動します。


実は後ろをマリエッタが内緒でついてきています。

ちょっと不安なのです。


中庭には若葉が香る季節、小鳥がいて美しいさえずりで満ちています。

今日は天候にも恵まれて光が青々とした緑と美しい花々が咲いて大変自慢の庭園です。


丁度木陰のベンチがあるのでそこを目指しました。


「こちらのベンチでお話しましょう」


私はそう言ってベンチに誘導します。


ドディナル殿は持参していたハンカチを手にして私の座る位置に敷いてくれました。


「ありがとう」


そう言って座りました。 

ドディナル殿も遠慮がちに少し離れて座られました。


風を心地よく吹いています。 


「演奏会はいかがでしたか?」


私は親しみを込めた出来る限りの柔らかいほほ笑みで聞いてみる。


さっきからひどく緊張されているようなので。 


「あっはい。

 素晴らしかったです。

 あのオペラ歌手の歌声を私の蓄えではとても鑑賞

 など。余裕がありません」


人柄が滲みでている感想にとても誠実で素直な方だととても思います。


少しかわいそうなくらいに。


強い風が吹いてドディナル殿の視線が私の肩に移ります。

間がすこしあって。


「肩の髪に木の葉がついておられます。

 お取りしていいですか?」


なんてお優しいのでしょうか? 


「お願いします」


私は少しドディナル殿の方に寄って、彼の長い手が私の髪に触れました。


ちょっと恥ずかしいです。


小さな葉が彼の手からまた風に乗って去っていきます。


「上皇陛下にもお話しましたが。

 我が家は私にかまってくれる余裕が情けない話し

 ではありますが。どうしようもございません。

 ……そ…やはり……」




少しの沈黙の後、やはりここでお話しないとと。

ドディナル殿の正面を向き深い深呼吸を。

瞳にある決心を宿して。


「それは気にされずに。

 とてもドディナル殿は優秀でいらっしゃると聞い

 ています。ただ機会に恵まれないだけだと。

 一つ提案がございますの」


私は真剣な眼差しで、彼に告白しようと思います。


「実は……皇室の私的機関で書記官を探していて。

 お兄様から内々に打診されておりますの。

 今回のお見合いの話は実はよい人材を探しておら

 れたお兄様の策で。

 もし宜しければこれを機会に官職を得られてはい

 かがですか?」

 

ドディナル殿はひょうぬけしたように、身体の力がいっぺんに抜けてしまったようでした。

頭を膝につけておられます。

ショックだったのでしょうか?


「え?っでは…お見合いではないと?」


「えぇ。お父様は花婿候補の選抜だと思っておられ

 ますが。」


深い溜め息をついた後、ドディナル殿の瞳に青い空が写っています。


私は畳み掛けます。

「そうすれば意中の子爵令嬢と一緒になれますよ。

 家族が生活に困らない程度の支給は保証してくれます」


私の告白が衝撃の一言だったらしく、瞳が飛び出さんばかりに驚いています。


そうでしょう。

何せナディアン大公でさえ入手できなかった。

秘密の恋人を突き止められたのですから。


「……あっ……」


言葉が出ないとよく言いますがこれですね。

うふっ


「私は応援したいのですよ。

 言うつもりも。責める気持もございませんの。

 ましてや不快な気持もありません。

 幸せになれますように願っておりますの」


固まるドディナル殿にニッコリとほほ笑み優雅にドレスの裾を広げ軽く膝を曲げて、軽やかに会場に戻り立ち去ります。


真っ青なドディナル殿を一人残して。


さてドディナル殿は体調が悪くなられてたらしく会場には戻られず、執事長に席をたつ伝言を残し離宮を去りました。


身中いかんばかりかと思います。

私は予め侍従長に手紙を渡していたので。

落ち着いたら手紙を読んで理解出来るでしょう。


その頃には皇室の使者がドディナル邸を訪問しているはずです。



なんだかいい事したみたいな。

明るく飛び跳ねたくなるくらいの気持ちです。


後ろからマリエッタがついてきて。 

 

「皇女殿下。さすがです」


少し褒めすぎですよマリエッタ。


何もなかったようにテラスのティーパーティー会場に戻ります。

姪っ子達はキラキラした好奇心いっぱいで今にも飛びかかりそうな様子で私を見ています。

客人の手前そんな事しませんが。

私は離席していた事などなかったかのように


「ドディナル殿は体調が悪くなったと帰宅されまし

たの。皆様楽しんでくださいませ」


気にしてませんよ。だって私が悪くさせてしまったようなものですよ。


でも、招待客はいやな顔もコソコソ話もされてません。

楽しそうにお茶やお菓子を召し上がりながら、おしゃべりされています。


「オルファン帝国はから使者が絶えませんね」


隣のルナ様が話題を変えてられました。


エレナ様がちらりと皇女殿下達に視線をむけました。

皇女殿下達はつかさずニッタっと笑っています。


「なんでもエリザベート皇女殿下にご成婚のお話がオルファン帝国からあるようですわ」


エレナ夫人が思わず最近の宮殿の話題を口にします。


「え!オルファン帝国から?という事は皇帝陛下の皇后にですわね」


ルナ夫人が続く。


「まあぁ~どうしましょ」


エレナ夫人が動揺されています。

そのどうしましょうわかります。

私も知っているくらい残忍な方と噂の方ですね。


お義姉様どうされるのでしょうか?

お兄様はお義姉様次第でしょうから。


お二人は本当に感じの良い方でこれからも何かの折にはお会いしたいです。


丁度お茶を口にして風味を味わった時でした。

二つ隣のナディアン大公子が私の傍にやってきて、少し微笑んで手の甲に口つけしました。


聞こえるか聞こえないくらいの声で。


「皇女殿下に私にお時間をいただきたく」


私はにっこり微笑んで軽く頷く。

自然に席を立ち、二人手をとり輪から遠ざかる。


周りもその立ち居振る舞いに圧倒されているようでぽ~~となりながら見ていたようです。

マリエッタの話だと。

後から奇声が発せられて人気テノール歌手が来てもああわならないと感心していました。


さて場を抜け出して先ほどとは違う裏庭の東屋に移動します。

白い円形の東屋はいい具合に周りから見えずらい場所です。

よくご存じですね。


ルイ・フェルディナンド殿

うふっ……。


私をリードしながら東屋の椅子に腰かけさせると自分の椅子を引き寄せて先ほどのドディナル殿よりも近い距離で席につきます。


目線がすごいです。

すごくアピールされているのがわかります。

瞳が艶っぽく大人の色気を感じます。なんでしょう社会勉強している気がしてきました。

ちょっと楽しいです。


「皇女殿下」


私の手を両手で覆います。

普通こんなことをしたら不敬罪です。

でも私は大人ですからそんな事は言いませんし、こんなふうに思っていると悟られない様にできます。

離宮で育った世間知らずですが、そこは教育されていますから。


良いですよ。駄目ですよ。

とどちらともとりずらいアルカイックスマイルでナディアン大公子を躱します。

するとナディアン大公子は突然お腹を抱えて笑い始めたのです。


「はっはっっ…」涙さえ出ているようです。

こんなに大爆笑されている方初めてです。


私はさすがにキョトンとしています。まだまだ純なので、置き去りにしないでください。


「ごめん。 ちょっと………失礼しました皇女殿下。

 ルイと呼んでください。

 えっと皇女殿下今回のお見合いですが。

 何か企んでいますね」


突然なんの話でしょうか?

まあぁ~さすがあのナディアン大公の子息です。薄ら怖いです。


「皇女殿下にかかったら普通はひとたまりもないですよ。

 普通はね。ですが私はなにせあの父上ナディアン大公の息子ですからね。

 隠せないですよ」


もう瞳が口元がすごく下がっていて、ニタニタしています。

なんかいやな予感です。


「まあぁ。 邪魔しませんよ皇女殿下

 でもこちらの逃がした魚は大きかったですよ」


「なんの事か?」

さすがの私も汗が出るかと思うほど狼狽します。


「クスッ クスッッ

 皇女殿下のお望みを私が手助けして差し上げます。

 そのかわり一つお願いが……。」


そう言うと私の手を強引につかんで、自分の胸元に引き寄せて耳元で囁きました。


私はその一言を聞いて、瞳がさらに輝き胸が高鳴ります。

殿方の胸にいるというふしだらな行為よりも衝撃的な刺激的な内容でした。


「貴方がそんな事を言われるの……?」

「えぇ」

「まぁ~でもナディアン大公に知られたら」

「父には言いませんよ。そこはご信頼くださいませ」

「皇女殿下はこの案をお望みではありませんか?」

「まぁ意地の悪いご質問ですわね」

「私の願いを聞いていただくだけでお望みをお助けします。

 私だけですよ。皇女殿下をお助け出来るのは

 そして私の願いを叶えられるのも皇女殿下だけです。

 全ては皇女殿下のお望みのままに」


私は本当に心からにっこり微笑んで自ら手を差し出し、ナディアン大公子が手の甲に口つけします。

これは好意からではなくただたんに契約の成立を意味する儀式のようでした。

いえ儀式です。


スキップしたいほどウキウキしてしまいたかったですが、そこは落ち着いてナディアン大公子のエスコートを受けました。

早く~~~とい思いで足早にテラスに戻りたい。


ちょうど席に帰るとルナ夫人のお持ちくださった果物がとりわけられリザーブされている所でした。

赤、薄い桃色、黄色や紫といったカラフルな果実が綺麗な皿に盛られています。


皆口にして甘くて水水しい果実を味わい時間を忘れるほどでした。

そろそろ宴もたけなわな頃、なにげに席を立とうとして数歩歩いた時でした。


す~と血のけが引いたかと思うと、何かに当たったかと思ったら真っ黒になり後は覚えていません。

何が起こったのでしょうか?


次に意識を取り戻した時には………… 


失神してしまったフェルディアーヌは?

ナディアン大公子との契約とは?


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