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「それにしても、ここはなんて窮屈な場所なんだ」
ミランは、宮廷の中をうろうろ歩きながら、そう呟いた。
「まったく、どこを歩いても女ばかりだ」
それもただの女ではない。化粧をし煌びやかに着飾った、観賞用の魚のような女たちだ。
「もーっ‼︎ なんだよ、ここはっ‼︎」
ミランの胸ポケットから、不服そうな声。
「だだっ広いだけで何にもありゃしないっ‼︎ 必要なものはメナスに頼めとかなんとか言っていたのに……そもそもそのメナス本人がどこにもいないじゃないかっ」
「モニ、お前の自慢の耳はまだおねんねか?」
「失礼だなっ‼︎ 足音がたくさんの割に話し声が極端に少ないから、聞き取れないんだよっ」
「そうだな。こう闇雲に探し回っていても、無駄足が増える一方だ」
ミランが、きょろと辺りを見回すと、廊下を足早に歩く一人の女の姿が見えた。かかげるように差し出した手に、何かの荷物を乗せている。垂れ下がっている布のひらひらとした感じと豪華な刺繍飾りから、女物の高級なドレスのようだった。
「すまないが、そこの方。ちょっとお尋ねしても良いか?」
ミランが声を掛けると、侍女が足を止めた。
「はい、お客様。どのようなご用件で?」
「メナス殿の部屋はどこにある?」
「……メナス様ですか。今から近くを通りますゆえ、ご案内いたします」
「すまない」
ミランが侍女と肩を並べて歩く。
気の遠くなるほどの長い廊下に差し掛かった時、ふいに窓ガラスがガタガタと震え始めた。
その震えは次第に大きくなり、時々波を打つように、ガシャンガシャンと大きな音をさせる。
「きゃあ、何かしら」
侍女が後ろへと後ずさった。
「窓ガラスが割れそうですわっ」
ビビビと共鳴するような音が廊下に響いたかと思うと、さらにガラスがガタガタと震える。
ミランは、溜め息を吐きながら、窓へと近づいていった。
「お客様、危のうございます」
「大丈夫だ。驚かせてすまないな」
ミランが窓を一枚、開け放つ。その瞬間、ぶわっと強い風が入り込んできた。
その風は、一つにまとめてあったミランの栗色の髪をほどく。バサバサとたなびかせては、ぐしゃぐしゃにかき混ぜていった。
「おい、シュワルト、いい加減にしろっ‼︎」
ミランが叫ぶ。




