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「もう知っている」
ミランが言うと、メナスは大人しく視線を戻した。
案内が終わると、直ぐにもメナスは長い廊下を戻っていった。その後ろ姿。袖や裾がぞろりと長い、色とりどりの刺繍細工の施された美しい服に身を包んでいる。
戦いとは無縁。
(参謀、というところだろうか。頭の切れる男のようだ)
会話の端々に、そう感じる要素もあった。リの国の国主の噂は、決して悪くはない。その理由が、厚みあるこの優秀な人材にあるのではないかと、ミランは考えた。
案内された部屋のドアを開ける。
部屋へ入ると直ぐにぐるりと周囲を見渡し、その部屋の中の様子を窺った。棚やベッドの下などを軽く調べると、肩にかけていた麻袋をベッドの上に投げ捨てた。
「ちょっとミランっっ、カバンを乱暴に扱わないでよっっ」
ミランの胸のポケットがむくっと膨らみ動く。
「命より大切な、ボクのナッツが入っているんだぞ! バリバリのボリボリになっちゃったらミランが責任取ってくれるの? 言っとくけどバリバリのナッツを掻き集めるの、大変なんだからな」
その反論を気にもとめず、ミランはベッドの上にどかっと座った。
「それよりモニ、この部屋はどうだ?」
「はあぁ……粗暴な性格ってのはいつまで経っても直んないもんなんだな」
ぶつぶつと言いながら、胸ポケットの中から小動物が顔を出し、這い出てくる。
モニはミランの肩まで這い上がってくると、その大きな耳をぴんっと立て、後ろ足で立ち上がった。
耳も大きいが、その目も大きいのが特徴だ。体は小さいが、けれどその小さな体の割にはふわふわとした毛並みの良い大ぶりの尻尾を持っていた。大きな前歯があるところから、げっ歯類とわかる。
「特におかしいところはないみたいだよ」
「モニ、お前の耳は本当に役に立つな」
「知ってるよね? ボクは機械音が一番嫌いなんだ。部屋に追尾装置とか盗撮カメラの類でもあった日にゃあ、もう最悪。鬱陶しい雑音で眠れやしない」
「そうだな。だが安心しろ。これで一週間は、ゆっくり眠れそうだぞ」
「ありがたい! ついこの前まで泊まり込んでいた灯台よりはマシさ。あの錆びついた回転灯のうるさいこと。頭に響いたのなんのって……あれはない、あれはない」
ぶつぶつと独り言を呟きながら、モニは尻尾を手で掴んで舐め、毛並みを整えた。




