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「兄様、これは一体なんですの?」


ティアが手にしたのは、煌びやかな金銀のビーズを繋げた、長い首飾りのようなものだった。ただ、首飾りにしてはあまりに長さがある。


ティアがそのビーズを手繰り寄せていくと、先端には緑と赤の大きな宝石が一つずつ、ぶら下がっていた。


「お前の翼につける飾りだよ」


隣に座ったリンドバルクは、大きな箱から淡い桃色のドレスを引っ張り出している。そのデザインを見たティアは、頬を染めながら慌てて言った。


「兄様、それでは背中が開きすぎやしませんか?」


「これで良いんだよ。お前の綺麗な翼をみなに見てもらわねばなるまい」


ティアは手の中にある飾りを見た。


「これでは、飛べません」


「何を言う、お前は飛ばなくていいのだ。それにもうすぐ羽切りの時期だ。俺がまた切ってやろう」


「兄様、羽切りは痛いので、私……」


「ティア」


きつく発せられた声に、ティアは身体をビクッと揺らした。太く低い声が、ティアの背筋を撫ぜて、凍らせていく。


「何度言えばわかる? お前は、飛ぶ必要は無いのだ。なぜなら、お前は一生、ここから出ることはないのだからな。欲しいものは全て揃えてやる。だから、わがままを言うんじゃない。わかったか?」


「……兄様、でも外の世界は、」


「ティアっっ」


落雷のような怒声。ティアはとうとう、口を噤んでしまった。


「宮廷の外は恐ろしい世界なのだっ。事実、ここの周りは盗賊ばかりで、お前などすぐに連れ去られ、どこぞの男に売られてしまう。お前をそのような危険に晒すことはできん。俺はお前が大事なのだ」


「…………」


リンドバルクは持っていたドレスをティアへ向けて放り投げた。正座しているティアの腰元に、バサッと落ちる。


「さあ、これを着て用意をするのだ。今夜はカの国の宰相が、わざわざお前を見に来ている。宴までに間に合うように」


言い捨てて、リンドバルクは踵を返した。部屋から出ていくと、ティアは羽飾りを翼にと巻きつける。宝石が背中にあたり、そしてビーズが翼を締め上げて、ズキズキと痛みが走った。なるべく翼を小さく折りたたむと、少しだけその痛みがマシになったような気がした。

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