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「裏切っておいて、今さらなんだっ‼︎ 私を置き去りにして逃げたお前を、私は決して許しはしない」
ルォレンの唇が歪む。ぎりっと歯の擦れる音がして、モニの耳を刺激した。
「お前が去って、私がどんな思いでここまできたのか、知らないだろう」
「ミラン、」
「心の支えだった」
「ミラン、俺だって、」
「お前は違うっ‼︎」
ミランは、緩んだルォレンの手から逃れて、ベッドの上に立ち膝で立つと、ルォレンの胸ぐらを両手で掴んだ。ぐいっと締め上げる。
「……お前を恨んでいる」
ルォレンが唇を噛む。
「お前を恨んでいるっっっ」
ミランが、ハアハアと深く息をつくと、胸ぐらを掴んでいた手を離し、そして後ろへと退いた。
「私を捉えるために翼人の姫君を誘拐したのだろう。だったら、もう良いはずだ。彼女を逃せ」
「それはできない」
「こいつら、あの娘を売り飛ばすつもりだよっ‼︎ つ、翼を、は、剥ぐとか、言ってたんだ……うええぇ」
モニの言葉で、ミランの形相が変わった。
「なら、代わりに私を売り飛ばせ」
「それもできない」
「ルォレンっっ‼︎」
その声で、ビクッとモニの籠が飛び上がった。
「お前を許さない。私の代わりに誰かを傷つけるというなら、お前を一生、許しはしない」
低く抑えたつもりではあったが、それは成功していない。ミランの声はかすかに震え、そして少しの弱さが含まれていた。
(翼人の姫君を助けなければ……)
ミランが決して非情になりきれない、大盗賊として名を馳せる四人の中に入れないわけが、そこにあった。




