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美味しそうな野菜やパン、肉などが山積みされているのを見て、ルォレンは心底、自分の貧しさを実感した。


けれど、それより何より。


店頭に並ぶ食材を、盗むことの困難さ。


大きな店の周りには、冷徹そうな用心棒が無表情なまま立っているし、小さい店であっても、店員が周囲に目を光らせながら、商品を陳列している。


さっきから、うろうろしているルォレンも目をつけられているようだ。


(こんな中でミランはいつも……)


わかっていた。ミランが盗みを働くのは、自分のためだと。


ルォレンは自分を情けなく思い、思えば思うほど、鼻の奥がつんと痛んだ。どうしてこんなにひ弱に生まれてしまったのだろう、とすら思った。親を恨んだりも。


確かにルォレンは、背こそあるが十分に食べていないせいもあり、細身の身体だ。筋肉もあまりつていなく、足も遅い。


涙を拭きながら歩いていると、ある店の前で足が止まった。


(あ、あの果物、美味しそう)


店の前の隅に並べてあるバナナだ。熟しているのか、甘い香りを放っている。小さな虫もブンブンと回っているが、それほどに美味であるはずだった。


(ミランに食べさせてあげたいなあ)


はっと、顔を上げた。


店先には誰もいない。


その瞬間、ルォレンの足が地面を蹴っていた。


バナナを一房、鷲掴みにする。それを素早く小脇に抱えると、ルォレンは走った。後ろを振り返る。誰も追っては来ない。


(うそ、こんなにうまくいくなんてっっ)


ルォレンは、息が続くまで走り続けた。


ガランっと何かを倒す音がして、後ろをもう一度振り返る。


やはり追って来るものはおらず、ルォレンは胸を撫で下ろし、歩を緩めた。


振り返っていた顔を戻そうとした時。


どんっと衝撃があり、ウォレンは地面に倒れた。


「痛っっってええ」


頭上から野太い声がしたが、ウォレンは倒れたまま地面を見つめた。


せっかく盗んだバナナが、男の足の下にある。クツで踏まれて、ぐちゃりと潰れていた。


(ミランのバナナが、)


ショックだった。ようやく、ミランを喜ばすことができる、そう思っていたのが一瞬で泡と化して消えてしまったような気がして。


「せっかくのバナナがっっ」

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