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「ルォレン、これ」
大きな根っこの合間から、ミランはいつものように中を覗いた。根っこと根っこの間に身体を滑らすと、そこはルォレンと二人、とても狭い空間になる。
肌と肌が触れ合うと何故か安心し、ミランはほうっと安堵の息を吐いた。
腹から小麦色の丸パンを出す。
丸パンは形が潰れていて、あちこちに砂がついていた。
「ちょっと待って」
ミランは慌てて、手で砂を払った。
「大丈夫、食べられるよ。途中でうっかり、地面に落としちゃったんだ」
「ミランは食べたの?」
「うん、私はもう腹いっぱい食べたから、ルォレンが全部食べていい」
「本当? ありがとう」
伸ばした手に、丸パンを乗せた。
ミランとルォレンは幼馴染だ。だからと言って、家が近所だとか、そういうことではない。二人は捨て子で、家や家族を持たなかった。
二人を拾った一家があった。
養父母は畑仕事の労働力にと幼い頃から二人を働かせていたが、身体の丈夫なミランを重宝して、身体のひ弱なウォレンを疎んだ。
「女と男が逆だったら、まだマシだったのにねえ」
その家の妻の口癖だ。そして夫の口癖は、「誰のお陰で飯が食えると思ってんだっ」
夫婦には二人の子供がいたが、その貧しさから自分たち家族が食べるのが最優先で、二人は必ず後回しだ。
ミランとルォレンは、常に空腹の状態であり、腹を満たしたことは一度もなかった。
それでも二人は、お互いにかばい合い、そして耐えた。
「大人になったら、ここを出て家を作ろうと思う」
ミランが、ルォレンの耳にそっと囁く。
農作業で疲れ切った、夜。農機具小屋でボロの毛布をかぶって、二人くるまった。
「僕も一緒に作る」
ルォレンが、もぞっと動く。
「大きくて頑丈な家にしたいんだ」
「僕、ミランと一緒に住みたい」
「畑で大きなカブを育てて、お腹いっぱい食べよう」
「うん、……いつか一緒に、ふわあぁ」
ルォレンが眠そうにあくびをする。
「いつまでも一緒にいようね、ミラン、」
声が小さくなり、寝息が聞こえてくる。
ミランはそっと毛布を引き上げると、目をつぶって囁いた。
「うん、いつまでも一緒だ」




