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リンドバルクは、無言のミランを前に、話を進めた。


「すでにお前の耳には入っているとは思うが、……情けないことに、今日(こんにち)まで俺が愛しみ大切にしてきた宝が、メイファンという盗賊団によって持ち去られてしまったのだ」


「…………」


「今、それはルーエン街にある。それをお前に取り返してもらいたい」


リンドバルクは、その大きな身体を動かして、掛けていたイスに座り直した。足を組み直す。


肘掛けに肘を立てると、その身体が少し斜めに傾いた。


「無論知っているとは思うが、……ルーエン街は無法地帯だ。身の危険はもちろんあるだろう、簡単な仕事ではないと思う」


ルーエン街。


リの国、北東部に位置するユイ湖を中心に発展した街である。


ただ、農耕や商売で生計を立てている他の街と違うのは、街人すべての生計が盗品で潤っているという部分だ。


そのルーエン街を拠点とした盗賊団であるメイファンは多くの盗人を養成し、その盗品で盗人が生計を立てられるよう、仲介、売買を斡旋しているという噂だ。


横流しされる商品は多種多様に富む上に高品質のため、メイファンを介した商品は評判も良い。その為、正当な商品としてリの国の都市部にまで出回り、メイドインルーエンとまで揶揄されるほどだった。


リの国では、盗賊という職業が、正当化され合法とされている。国の許可というお墨付きのお陰で、人のものを盗むという行為自体が犯罪に当たらない。捕まって牢屋に入れられることもない。


盗まれる方が悪い、ということになる。


「まさしく『混沌』と言っていい……まったく、人のものを盗むことが罪にならぬとは、自分の国のこととはいえ、呆れて物も言えん」


『盗賊』という職業。

そして、金を持つ者はその盗賊から自分の財産を守る為に『用心棒』を雇うのが常だ。


リンドバルクは、はあっと溜め息を吐いた。


「……俺も大切なものを盗まれてようやく、目が覚めた」


「…………」


「話を戻そう。メイファンを統治するのは、『黒蛇、白蛇』という二人の男だ」


「…………」


何を話しても無言のミランを前に、リンドバルクの眉も上がる。


本当にこの女が、噂に違わぬ孤高の女盗賊なのか、と。

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