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「お前は本当に……」
ミランは呆れながらものを言おうとして、口を噤んだ。
シュワルトの顔のそこら中にキスマークがある。赤い口紅がべっとりついているのを見て、ミランは大きく溜め息をつきながら、タオルを差し出した。
満足げにタオルを受け取ると、シュワルトは顔を拭く。
「あー、楽園だった」
「遊びじゃないぞ」
「わかってる、ちゃんと仕事してきたっつーの。それよりさ、」
あー疲れた、ちょっと羽だけ伸ばさせて、シュワルトはそう言うと、途端に竜へと変化した。
「こら、こんな狭い部屋で、お前、」
天井につく頭を垂れて、翼を目一杯広げる。
天井から吊り下げてある照明に翼が当たり、ガシャンガシャンと揺れた。
ミランがすかさず、シュワルトの懐に入る。
翼で何度ひっくり返されたことか、と呆れながらミランはシュワルトの胸にもたれかかった。
(こうすると、ミランを抱き締められるんだなあ)
シュワルトは満足そうに翼を下ろすと、それをよけようとミランがさらに身体を寄せる。ふるっとシュワルトは身を震わせて、そのままミランに自分の顔を寄せた。
「シュワルト、お前、すごい匂いだぞ」
女物の香水の匂いが、そこら中に浮遊する。
「盗品売買と言ってもまあ、ありゃ不純異性交遊の場だね」
「何か掴めたか?」
ミランにそう問われ、シュワルトはガクッと肩を落とした。
(……僕がどれだけモテたかなんて、気にもならないんだろうな)
ミランが色恋沙汰に疎いことは、よくわかっていた。胸に痛みがある。
(ミランと出会った頃から、僕なんて眼中にない……)




