19
大きな部屋だ。床から見上げると天井も高い。
モニは辺りを見回し警戒しながら身体を格子から出すと、近くにあったカーテンへとジャンプし飛び移った。
落ちないようにとカーテンの生地を握り込むと、爪が食い込み小さな穴が開いた。
(自慢の爪がギザギザになっちゃうよう)
心の中で涙しながらも、モニはカーテンを駆け上がった。
天井近くまであるカーテンのてっぺんに着くと、下を見下ろしてみる。
するとそこには、部屋中に所狭しとたくさんの美術品が、円を描くようにぐるりと並べられていた。
装飾品。絵画。彫刻。宝石の原石。
(わっ‼︎ すごい‼︎ これ、もう間違いなくあれだよね。今から競売にかけられるやつだね)
ニヤと笑いながら、モニが登りきったカーテンの一番上で立ち上がり、汚れた尻尾のホコリを手でぱっぱっと払う。
(盗品の保管部屋だ!)
だが、ミラン目当ての品がここにはないことを、モニは知っていた。
保管部屋を見渡すと、真正面にドアが二つ見えた。
(部屋を抜けて、向こうのドアから出てみよう)
モニは身を潜める場所をそこから吟味すると、カーテンを勢いよく降りていき、そこで人の出入りを待った。
✳︎✳︎✳︎
「僕ね。今、再就職先を探しているんだよ」
「そんなに今のとこ、具合が悪いの?」
「そうなんだ。僕の雇い主ってヤツがね、すごく人使いが荒くてね」
ぐびっとビールジョッキをあおると、シュワルトは、あーあっと大げさに溜め息を吐いた。
二杯目のジョッキを空けようとしているシュワルトに、頬づえをつきながら厚化粧の顔を近づけているのは、宿屋から離れた場所に位置する、ここ大衆酒場で出会った女だ。
シュワルトは探し出した情報屋から、この酒場で盗品売買が常態化されていることを聞いていた。さらなる情報を得ようとシュワルトがその店のドアを空けたところ、この女が男に絡まれている場面に遭遇した。
「なあ、別に取って食おうとしてるわけじゃねえのよ。酒なら俺が奢ってやるって言ってんの」
男が女の腕を掴んで引っ張る。
「ふん、酒なんて奢ってもらった日にゃ、何されるかわかったもんじゃないわ」
女が掴まれた腕を振りほどこうと、何度も腕を振った。
男はもとより、女もただの町人ではないことがわかる。
特に女。きつい口調が板についた、強そうな女だ。そのため、言い寄っている男の行為がエスカレートしていっても、誰もが遠巻きに見ているだけだった。
そこへ、シュワルトが出くわした。
(お、ちょうどいいカモが)
シュワルトは心の中でしめしめと思いながらも、顔はいたって険しい表情を浮かべながら、二人に近づいていく。
「おい、嫌がってるだろ。その手を離してやってよ」
男の腕を掴む。
「なんだテメエ、やんのかこらっ」




