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ここで、ミランから伝授された迷路の攻略法を思い出す。
ミラン一行は、ルーエン街でも比較的大きい、ベーカー=インという宿屋に宿を取った。ミランが飲み屋で教えてもらった宿屋なのだが、この宿屋は隣に飲み屋を併設していて、情報が得やすいと踏んだ。ベッドが二つ、シャワー付きの簡素な部屋。
リの国で流通する金貨は、リンドバルクからたんまりと渡されている。その金でまずは質素な服を買った。残りの金で必要な道具や武器を買うつもりでいる。
部屋のベッドに腰掛けたミランが、備え付けの棚の上でナッツを頬張っているモニに向かって、話を始めた。
「モニ、迷路っていうのは、左側に左手をつけて進むといいんだ」
「そうなの?」
「ああ、そうやって進んでいけば、必ず終着点に辿り着く。ただ……」
「ただ?」
ミランが、大きく溜め息をついた。
「このルーエン街の地下迷路が、本当に迷路ならば、の話だ」
「確かに、そんな風に入り組んだ下水道を作るわけがない」
シュワルトがベッドから身を乗り出すようにして言った。
「だから、モニは迷わないように気をつけながら、だいたいどれくらいの間隔で出入り口があるのか、注意すべき点などを見てきてもらいたい」
「わかったよ」
こぼれたナッツをつまんで、ミランはモニの前に差し出した。
「これを使うんだよ。モニ、頼んだぞ」
ナッツを受け取ると、モニはヒゲを上下させた。ナッツを小脇に抱えて、左腕を心臓の前に持ってきて、掲げた。
「ミランのためなら」
戦士な挨拶を終えると、モニは口の中にできるだけたくさんのナッツを詰め込み、宿屋の半地下階にある洗濯室の下水から、下水道へと入った。
曲がり角に来るたびに、モニは口の中から取り出したナッツの欠片をそっと置く。自分のほほ袋にこのような使い道があるとはと、モニはミランの賢さを思い知らされる形となった。
(ミランは頭が良くて美人だし、性格も真っ直ぐで良い女なんだよ。でも友情や義理人情は信じるくせに、愛とか恋とかはまるで信用していないんだよなあ)
はああっと溜め息をつく。
「ボクなんかは、こんなにもミランのことが大好きなのに」
ナッツを口から出す。
曲がり角に置く。少し進むと、汚水が流れ出る大きな口が目の前に現れた。鉄製の格子がかかっているが、モニの身体の大きさには関係がない。格子の隙間をスルッと抜けると、大きな丸い土管を進む。
大きなと表現した土管は、それはモニにとってという前提がある。モニがぐるっと見渡す。かろうじて、ミランなら四つん這いになって這い入ることができそうだ、とモニは踏んだ。
耳をそばだてながら、土管の奥へと進む。ほわりと灯りが見えて、モニはそろそろと慎重に足を運んだ。さらに土管は上へと折れ、その上に鉄製の格子の蓋が被さっている。その格子の間に顔を突っ込むと、暖かい空気が流れてくると同時に、強い明かりに目をつぶらされる。
(うわ、眩し)
モニが、薄目を開けて目を慣らす。




