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目深に被った毛糸の帽子に眼鏡。町の民が着るような、粗末な上下。もちろん、ミランも町娘の格好ではあったが。
「いやあ、僕ってばどういう格好をしても目立っちゃうからなあ。とにかく、僕っていう存在を消さなくちゃって思って。これでもかっていうくらい露出を少なくする努力をしました」
「地味だな」
「地味だね」
いつのまにか、胸ポケットから顔だけを出しているモニも参加する。
ミランとモニの共鳴するような言葉に、シュワルトは満足そうに腕組みをして頷いた。
「それでいいんだ。それを目指していたからね。うんうん、成功だ」
「それにしても、依頼品はどこにあるの?」
よしよし俺天才と満足げなシュワルトを無視して、モニが会話を本題へと戻す。モニはそのまま胸ポケットから這い出ると、ミランがかぶるフードを軽くよけてミランの肩に乗った。
「地下迷路の先だ」
「迷路だって⁉︎」
ミランの耳元の近くで、モニが飛び上がる。
「ああ、地下にはびこる下水道を進んでいく」
「えーーー、嫌だよ、そんな陰気臭いところ。行きたくないなあ」
シュワルトが乗り気でない声を上げる。
「シュワルト、お前は地上で街の様子を見ていて欲しい」
「やっった‼︎ 了解だよ。大人しく待機してるね」
「ミラン一人で大丈夫なの?」
「モニ、お前も一緒に来てくれるだろ?」
「もちろん」
「まずは街の様子、そして地下迷路の確認をしてから対策を練る。シュワルト、悪いが街に詳しい情報屋を探してきてくれ」
「リョーカイ」
「モニは、地下迷路の様子を見てきてくれ。私は飲み屋で情報を得てくる」
「はいー」
「モニ、迷うなよ」
「ねえ、ボクを誰だと思っているんだ?」
モニが襟を正す素振りをする。すかさずシュワルトが感嘆の声を上げた。
「あ、そのネタ見たことある‼︎」
*
「うわあ、地下道っていうのは、なんでこんなに臭いし汚いんだ」
モニが、地下道を流れる下水を横目で見ながら、進んでいく。自分の身体の臭いを嗅ぎながら、モニは独りごちた。
「身体中、ドブ臭いよう。ああ、あったかいお風呂に飛び込みたい」
時々、大きな耳をそばだてたり、これまた大きな目を見開いたりしながら、モニは迷路を進んでいった。
所々で、上につながる梯子が見える。一定の距離にマンホールがあるようで、出入り口は一つではないと知れた。
ただ。
「これは絶対に迷っちまうぞ」




