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ミランがすかさず、そう叫びながら腰に差した短剣を女へと投げると、女はそれに気づき、飛んできたミランの短剣を持っている短剣で払い落とした。
カランっと乾いた金属音が響く。
俊敏だ。身のこなしが軽い。
そこからルイとライと渡り合っている黒装束二人と同等な、しかも特別な訓練を受けているだろうことがわかる。
ちら、とその方向を見ると、リンドバルクは言われた通り、腕を盾にして頭を下げていた。
ミランはすかさず、大刀の柄に手をかけて走り込んだ。
「国主殿、もっと頭を下げよ!」
短剣を払いのけた拍子によろけたのか、片膝をつき、体勢を立て直そうとする女。
ミランはその女とリンドバルクの間に膝立ちで身体を滑り込ませながら、大刀をすらりと抜く。
「私が相手になろう」
実は、ここにミランが女盗賊として名を馳せることとなる理由がある。
暴漢の女に見劣らぬ、その身体能力と身の軽さ。
中腰のまま身体を起こすと、ミランは二、三と女へと進み、女の喉元にその切っ先を突き上げた。
「くそっっ」
女は汚い言葉を吐くと、後ろへとバク転でニ回転し、ミランとの間合いを取った。
ミランもその様子を目で捉えながら、そろりと立ち上がる。女の背後で、双子の用心棒と黒装束が交える鋼がぶつかり合う音がしている。
「女よ。国主殿が、何者だと尋ねておられるぞ」
ミランが冷静な口調で言うと、女は、べっとその場に唾を吐き出した。
「…………」
もちろん女の口は堅い。
ミランが大刀を構え直すと、女はじりじりと下がっていた足を、ようよう前へと向け、蹴り出した。
「はああぁぁっ」
短剣をかざして突っ込んでくる女を、ミランは待ち構える。
が、思いもよらぬ行動だった。女はミランの前でその短剣を真横に放り投げたのだ。短剣は直ぐ横にあった大柱に、垂直に刺さった。
(何をするつもりだ)
ミランがその短剣に視線を流すと。
女は、その大柱に向かって方向転換し、刺さった短剣の柄を台にして足を掛け飛び上がり、ミランの頭上を軽々と飛んだ。
飛びながら、女は腰から新たな短刀を出し、握り直す。
「やあああああっっ」
雄叫びを上げながら、女はミランの後ろに立ち竦んでいたリンドバルクへと飛びかかっていった。
ミランはそれを見て、振り向きざまに大刀を空に滑らせて切った。その切っ先が、もう少しでリンドバルクの頭上を掠めるのではというほどの至近距離で、大刀を止める。
そのミランの大刀に邪魔をされた女は空中で体をくねらせて、リンドバルクの横へと着地した。
「何という身軽さか!」
すぐにリンドバルクに向かって短刀を向けている。
ミランは、大刀の向きを直ぐに変えると、そのまま女の体めがけて、ブンと振り切った。
女は、慌てて短刀を引くと、後ろへとジャンプし一回転、二回転と逃げる。
ミランが大刀を構えると、女も短刀の刃を下にし持ち替えた。
「さあ、まだやるのか」
ミランが問うと、女が持った短刀をかざしながら、じりじりと足を進めてくる。
「…………」
「わかった」
ミランは自分のスカートの裾を掴み上げると、そのまま刀の刃に当てた。
ビリビリっと音がして、ぱっくりと足元にスリットが入る。
「うわあ、せっかくのドレスがあ。ももももったいない」




