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その視線は自分に向けてではなく、国主リンドバルクへのもののようだ。
(それならまあ、あの双子が何とかするだろう)
料理に視線を戻す。鳥の蒸したものと、焼いた魚。それぞれに違ったソースがかけてあり、野菜で飾り付けされている。
「モニ、残念だがナッツはないようだぞ」
腰に下げた麻袋に向けて、囁く。
「梅のお酒はある?」
「ある」
「ならばよし。ボクの分も取ってくれよ」
ミランが運ばれてきた食前酒に手を伸ばそうとしたその時。
ガシャンっと大きな音がして、バルコニー側の窓ガラスが割れて飛び散った。
バリバリと割れたガラスを踏む音をさせながら、二人の黒装束の男が、バルコニーから侵入してきたのだ。
「なんなんだ、お前たちはいったいっ」「きゃああ、」「助けてええ」
逃げ惑う人たち。
悲鳴が上がる中、ミランは黒装束からバルコニーへと視線を移した。バルコニーには、見張りの衛兵が二人、重なり合うようにして倒れている。
すぐに視線を戻すと、黒装束の賊に対して、双子の用心棒ルイ、ライが剣をすらりと抜くところだ。
剣を構えると、リンドバルクを守るように前へと進み出る。
「何者だ」
リンドバルクの低く抑えた声。
黒装束は無言で、持っていた剣を振り上げた。
ミランはその様子を冷静に見ていた。
「あーあ、せっかくの宴があ」
シュワルトの悲しそうな声を後ろに聞きながら、ミランは立ち膝になる。双子と黒装束は二対二なので、さすがに自分の剣にまでは手をかけなかったが、身体は自然と戦闘体勢へと入る。入りながらも、まだ観察だ。
双子の用心棒もそうであったが、狙われているだろう当の本人リンドバルクにも焦りは見えない。
その冷静さはこのような襲撃が日常茶飯事なのだということを知らしめている。
(国主様というのも大変だな)
黒装束が各々、振り上げた剣を、双子の用心棒が同時に剣で受ける。キンッ、キンッと耳をつんざく音が、天井の高い大広間に響く。
片手で相手の剣を制しながら、空いているもう一方の手で、ルイが棍棒を、ライが鞭をすかさず取る。
そのため、黒装束は一度、後ろへと飛び退いた。その隙をついて、ライの鞭がしなやかに踊り、所々でびゅおっと空気を切る音をさせた。相手を威嚇するには、いい音だ。
そして、再び。
ライとルイが襲いかかってくる剣を受けた時。
一人の女が、ホール中央へと躍り出た。
女官姿。が、見ると片手には短剣を持っている。逃げ惑う人々の中に潜んでいたらしい。
女は真っ直ぐに走ると、あっという間に双子の間を抜け、そして一直線にリンドバルクへと向かった。
「やあああぁっ」
甲高い雄叫びが上がったかと思うと、ライが女めがけて鞭を走らせた。それをひょいとかわして、さらに突進する。
リンドバルクが立ち上がった。
そこへ短剣を携えて走り込む女の姿。
「国主よっ、頭を下げよっっ」




