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詩集

龍殺し

作者: キハ

大きくて綺麗な鱗を持つ龍がいた


静かに水しぶきを上げ天に昇り


また海に戻ってくる


それだけしかしない龍だった



けれどある日


龍を見ていられなくなった人々が


龍を討伐しようと思案して


兵隊そして自慢の剛力たちを行かせた


けれどみんな龍から吐き出される氷で


呆気なく敗れ命を落とした


誰も龍を倒せる人はいなくなり


世界一強い人もいなくなり


けれど今日も優雅に天に昇る龍を


見ては人々は騒ぐ


あれを討伐しなければ平和は


訪れることがないと口々に叫んで



最後に一人の少女が現れた


彼女は聖なる力を持つ超能力者


そんな彼女なら龍を狩ってくれると


そう信じて人々は送り込んだ


でも少女はか弱い一人の女の子だった


自分の力さえも自慢に思っていなく


ただ目の前に現れた龍を見て泣いた


人々はそれを見て煽って叱責した


自分達は安全な所で見ているだけなのに


ただ一人か弱い少女にだけ任せて


少女が何もしないと罵り罵声を浴びさせて


人々は龍を殺すことしか考えていない


ただ体が大きいだけの龍が危険因子だと


そう決めつけて無理を言って人の命を奪ってきた


そして今度はこの小さくか弱い少女の命さえ


龍を使って奪おうとしているのだ


けれど人々はそんな事実にも気づかずに


ただ少女を罵倒しがっかりし憤怒す



少女はただただ泣いた


自分の力が龍に効くのかさえ知らずに


ただいきなり人々に持ち上げられ


龍の前に引きずり出され


その大きな巨体に怯えて立ち尽くして


泣き出してしまった


周りの人々から罵倒される声さえ


もう耳には入ってこれずに龍だけを見つめていた


怖くて恐ろしくて怖くて


そして泣いて泣いて泣き続けた



龍は目の前にいる少女を見た


ただ泣いているか弱き細く


少し力を入れたら折れてしまいそうな体


そんな少女が泣いていた


龍は何だか分からなかった


人が自分に歯向かってくることは知っていた


だから反撃し命を奪った


でもそれ以外は静かに過ごしていた


だが今目の前にいる少女は


またも歯向かう人なのか


それとも生贄としてなのか


龍にはよく分からなかった


やがて興味を失ったのか


それとも泣いている少女を


もう見ていられなくなったのか


ゆっくりと天へ頭を上げた


人々が固唾を飲んで見ている中


ゆっくりと美しく優雅に


天へ向かって昇っていく


大きな体で怖い龍なのに


その瞬間はとても絵になる光景だった


やがて龍の尻尾だけしか見えなくなり


ようやく龍の姿が消え


天にはただ雲が浮かんでいるようになって


人々はやっと我に返った


そして少女を叱りつけた


だが少女はずっと空を見つめていて


何かを考えていた


何かを願っていたのかもしれない


それから龍は二度と


人々の前に現れなくなった

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― 新着の感想 ―
[良い点]  好きです。この穿ちかた。 [一言]  短く終わったのが寂しかったですが、この長さだから好いのだ、とも思われました。
[一言] ほんとすごいです。 詩の形で明確なストーリーがあって、読みやすくてしっかりと心に訴えてくるものがある。 お見事でした!
[良い点] ストーリーの設定が本当に素敵です!龍と少女の物語……少し切ない感じがいい! [一言] キハの詩は本当に素敵なものばかりで最高ですね♪
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