【7話】トランクの行方
「私って何科だと思う?」
分かるはずもないと思ったが、尋ねた。
「うーん、サトミが分からないのなら私にも……。あ!トランクの中は確認した?」
トランク。果たして私はそんなものを持っていただろうか。
首を傾げて考えていると、入学する生徒には事前に支給されるのよ、と教えてくれた。
エミリアによれば、学園で必要な道具は入学前に合格通知と共に家に送られてくるらしい。
「私のを見せてあげる。特別よん♪」
彼女は椅子の横に置いていたトランクを開けた。
上質そうな皮に包まれた鋏が、車窓から差し込む光に照らされ銀色に輝いている。
他にも見たことがない道具も入っているが、恐らく美容師が使っている道具であることが想像に易い。
「もしかすると……。サトミ!さっきの車両に戻るよ!」
エミリアは早く早く、と急かしながら私の分まで早々に食事代金を支払って食堂車を飛び出した。
「ちょっ、待っ、、」
エミリアはサトミと背丈もそう変わらないのに、かなり走るのが早い。
私が前を走る彼女に追いついた頃には、彼女は元居た席の上部に取り付けられた網棚を探っていた。
「ない…………!絶対ここにあると思ったのに……あなたもトランクを持っているはずなのに、どこにもないの。」
「無いとそんなに困るものなの?」
キョトンとした顔で尋ねた。
「トランクとその中身は学園の生徒にとって入学許可証のようなものなの。あれが無いと入学式に出席するどころか、学園の門を潜ることすらできないわ。」
深刻そうに答えた。
トランクが無いことに困惑していると、背後からのそりと人影が近付いてきた。