【6話】ほかほかドリア
運ばれてきた料理はシーフードドリアだ。
ここの名物だって言うから注文したけど、確かに美味しそうね…。
大きな海老が横たわり、白いクリームで覆われている。スプーンで掬うと、ケチャップライスが底から顔を出す。
口に運ぶにはまだ熱そうだ。
ふーっふーっと息を吹きかけて冷ましていると、少女が口を開いた。
「そう言えば、まだ自己紹介をしていなかったわね。私はエミリア。15歳で、この春から王都学園の新入生よ。」
聡美はスプーンを置き、少し迷ってから、
「私はサトミ。年齢も行き先も分からないから、取り敢えず終着駅の王都学園に向かうわ。」
苗字は敢えて名乗らなかった。
エミリアが苗字を名乗らなかったことから推測するに、貴族だけが苗字を持つ世界である可能性が高いと思ったからだ。
不確定要素しか無い今、周りに合わせておくのが安牌だと踏んだ。
「サトミね!改めてよろしく。この世界について分からないことは何でも訊いて。」
じゃあ......とその言葉に甘え、早速いくつか気になっていたことを確認した。
ドリアが冷めかけていることに気づき、急いで口に運んだ。
「つまり、15歳になると国中の子どもが試験を受けて、優秀な成績を納めた人は王都学園に入学することになるのね?」
表面のホワイトクリームに包まれたライスは、まだホクホクと温かかった。
「そう!つまり私もエリートなのよ?」
ふふん、と得意げに鼻を上に向けている。
エミリアの話によると、この列車には王都学園に向かう新入生のみが乗車しているらしい。
状況から推測すると、私も学園の新入生である可能性が高い。
「その能力って言うのは、魔法とかそういうものを計測するの?」
私も手のひらから火や水を出せたりするのだろうか。自分の手を見つめながら首を傾げた。
「まさか!魔法なんて空想上のものよ。王都学園は、国を支える様々な仕事のスペシャリストを育てる目的で設立されたの。」
どうやら、ここは思ったよりファンタジー色が薄い世界のようだ。
「さまざまな仕事って、どんなものがあるの?」
ドリアを頬張りながら尋ねた。
「んー、騎士みたいな戦闘職から、料理人やデザイナーのような仕事まで、幅広くあるわよ。私はサロン科に入学するの。」
サロン科では、頭髪やメイクなど美容に携わることを学ぶらしい。美容系の専門学校に近いイメージだろうか。想像以上に近代的な世界観に驚いた。
私が学園の新入生だとすれば、一体どこの学科なのだろうか。