【5話】少女
少女は、栗色の髪を綺麗に縛っておさげにしている。若草色の瞳からは爽やかな大草原が連想された。
不思議な雰囲気を持った子だな、と聡美は感じた。
失礼します、と言って腰掛けると、私に笑いかけた。
「やだ、そんな畏まらないで。あなたも学園の新入生でしょ?」
「学園......?」
学園、そのワードに即座に反応した。切符に書かれていた"王都学園"と関係があるのだろうか。
「あなた、王都学園の新入生じゃないの?この列車に乗ってる人は、みんなそうだと思っていたわ。」
何か答えを紡ごうとしたが、私はあまりにもこの世界のことを知らなかった。
うーん......と唸っていると、
「きっと何か事情があるのね。無理な詮索はしないわ!」
カラッとした笑顔で少女が言った。
しかし、私はこの世界について知らなすぎる。今の自分についてすら、この外見であること以外何も知らないのだ。いつまでも隠し通すことはできそうもない。
いつかはこの世界について知らなければいけないのだし………それならいっそ。
腹を括り、これまで起こったことをありのままに話した。前世での死、アバターを作ったこと、目が覚めるとこの列車に乗っていたこと......。
「えー!何それ、素敵!!」
少女は目を輝かせた。
聡美は想定外の反応に驚いた。てっきり、信じてもらえず変人扱いされると思っていたからだ。
「信じてくれるの......?」
思わず尋ねた。
「もちろん不思議な話だけど。あなたずっと、私の目を真っ直ぐに見て話してくれたじゃない?その目を見ていると、自然と嘘じゃないと確信できたの。」
純粋な少女だ。
自分で話したことだが、この少女がそのうち誰か悪い人間に騙されてしまわないかと心配さえした。
「ありがとう。」
心からの言葉だった。緊張で強張っていた頬が緩むのを感じた。
「照れるじゃない!さ、貴方も早く注文しなよ。」
そう言って、少女ははにかんだ。
チリンとベルを鳴らすと、先ほどのウェイトレスさんが足早にやって来るのが見えた。