【18話】二人
「ル……」
「しっ」
驚いて名前を口にしようとしたが、ルカの細長い人差し指で制止された。
「……あ、あなた誰?」
「私たちのことに関係ないじゃ無い!」
口では反抗的な言葉を投げかけているが圧倒されているのか、三人は後退りしている。それくらいにルカの美貌と醸す雰囲気には迫力がある。
「あのねぁ……」
ここまで黙っていたサトミが口を開いた。三人との間に立ってくれているルカに大丈夫、と伝え前に出た。
「身分云々について私はせっかく同じ学園に入学した仲間だし、関係なく仲良くなりたいと思ってる。学科については……私も正直まだよく分かってないけど……」
照れたように後頭部を掻くサトミ。お前も分かってないんかい、とツッコミを入れたげな三人。
「確かに私は可愛いし、目立ってるかもね。でもあなたたちだって可愛いよ、より自分を輝かせる方法を知らないだけ。私に手伝……」
「あーーーーもう、変な子っ!」
手伝わせてよ、と言いかけたところで遮られた。
「馬鹿らしいわ、行きましょう」
「ちゃっかりもう味方まで作っちゃって」
ふん、と鼻を鳴らし三人は去っていった。嵐のようだったな…と彼女らの後ろ姿を見送っていると、後ろからおーーい!と大きな声が聞こえてきた。
振り向くと、こっちに向かってくるアレンの姿が。
「大丈夫か?!やっぱりサトミだった」
「アレン、どうしたの?」
「その様子だと無事みたいだね、良かった。さっき黒髪の子が女生徒三人に囲まれてたって聞いて、それで……」
「心配して来てくれたのね、ありがとう」
息を切らすアレンを見てふふ、と笑った。
2人も助けに来てくれるなんて、確かにこれは調子に乗っちゃいそう。
「あれ……そっちの人は……?」
ルカを見たアレンが言った。
今気づくなんて、よっぽど慌てて来てくれたのね、と思った。
「はじめまして、俺はルカ。君と同じく、サトミを守るために馳せ参じた騎士だよ」
「げっ、よくそんな表現を思いつくわね……」
相変わらず言葉まで甘ったるい男だ。
「ルカか、名前までかっこいいんだね。僕はアレン、よろしく」
「男と仲良くする趣味は無いんだけど……アレンくんは綺麗だから特別だよ」
ルカがアレンにウインクした。サトミはそれを見てゾワっとした。
「気をつけて、この男に影響されちゃだめよ」
目を細めてアレンに言った。
「酷い言われようだなぁ〜。俺とは同じベッドに入った仲じゃないか」
「ベッ…………?!」
「ちょっと!アレンが変な誤解するじゃない!」
かくかくしかじか、アレンに寮での出来事を説明した。
「な、なるほど……?」
変なこと言わないでよね!とルカに詰め寄るサトミ。
こんなサトミは初めて見たな……。僕と話している時より、自然に接しているように感じる。
アレンは自身も気付かぬうちに、少し寂しさのような感情に纏わりつかれていた。
そんなアレンを見たルカが、アレンに抱きついた。
「…………!?」
「寂しそうな顔してたから、サービス。俺は高いんだからね」
サトミには聞こえないくらいの声量でルカが言った。よく人を見ているな、とアレンは感心した。
「アレンはそういうタイプじゃないんだから、ほどほどにしときなさいよ!」
サトミが二人をベリっと引き剥がした。アレンくん〜と泣き真似をするルカ。
やれやれ。でもまさかルカも助けに来てくれるなんて、飄々としてそうで……なんやかんや良い奴なのかも。アレンは最初から良い子だけど。
「二人とも、ありがとうね!」
ニカッと満面の笑みで言うと、二人は頬を少しピンクに染めた。
サトミは二人の背中をパンっと叩いた。
「疲れたし、ご飯食べに行こうよ。腹が減っては戦ができぬ、よ!」
心配だから戦しちゃダメだよー、とアレン。振り回されているアレンを見てケラケラと笑うルカ。
三人は渡り廊下を後にした。
少し更新時間過ぎてしまいましたが!本日分です(^^)