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【15話/11月12日更新】始まりの朝

 「ふぁぁ……。」


 鳥の囀りで目を覚ました。窓を開けると豊かな緑が一望でき、爽やかな風に包まれた。

 ファンタジー小説のヒロインにでもなったような気分だった。

 いや、事実は小説よりも奇なり。想像上の物語より遥かにとんでもないことが起こっている気がするけれど。

 

 「今日からいよいよ学園生活の幕開けね!」


 サトミは少しハイになっていた。

 何を隠そう、美少女の姿で学園生活を送るのが楽しみなのだ。


 「待ってなさいよ〜!私のキラキラ☆学園生活!」


 ウキウキしながら洗面器に貯めた水で顔を洗い、歯を磨いた。

 制服に袖を通し、さぁ朝食を食べに食堂へ!というその時、小さいながら確かに、隣の部屋から女の子の啜り泣く声が聞こえてきた。


 「こんな晴れやかな日に、女の子が泣いているなんてきっとただ事ではないわ!この私に任せなさい!」


 やはりサトミはハイになっていた。

 拳を握りしめて大きな独り言を発した後、部屋を飛び出し、隣の部屋の扉をノックした。


 「おはようございます。隣の部屋の者ですけど、どうかしましたか?何かお困りだったら、お力になりたいです。」


 啜り泣く声がピタッと止み、扉が開いた。


 「………おはようございます。どうぞお入りください。」


 出てきたのは、向日葵のようなオレンジ髪をした、大人しそうな少女だった。

 勧められるまま、サトミは椅子に腰掛けた。少女はその正面のベッドに腰掛け、口を開いた。


 「……そばかすが、消えなかったんです。」

 「消えなかった?」


 はい、と頷くと、瓶のようなものを差し出した。中はどうやらファンデーションらしい。肌色の液体が入っている。


 「学園デビューをしたくて、このそばかすを消すためにファンデーション?を買ってきたんです。」

 「学園デビュー……高校デビューみたいなものか。あ、ごめんね。続けて?」

 「?………はい、それでこれを顔に塗ってみたんですけど、なかなか消えなくて。」


 サトミはふんふん、と頷き少女の肌を見た。


 「なるほど…それで消えなくて、何度も塗り重ねたのね?」

 「えぇ…よく分かりましたね?」


 少女は目を丸めた。

 サトミはニコッと微笑むと、少女の肩を掴んだ。


 「よし!一旦全部メイクを落とすわよ!」

 「えぇっ?そしたらもっと、そばかすが目立っちゃう。」

 「心配しないで。騙されたと思って私に任せて欲しいの。ちょっと部屋から"ある物"を持ってくるから、その間にメイク、落としておいてくれるかしら?」


 おずおずと少女が頷くのを確認して、部屋を飛び出した。そしてサトミは自室に戻り、トランクから何かを取り出し、また隣の部屋へと駆け出した。


 「うん、綺麗に落とせたわね。」

 「よろしくお願いします。」


 少女は深々と頭を下げた。

 サトミは任せなさい、とウインクした。そして、ジャーン!と部屋から持って来たものを見せた。


 「…これは………ペン?」

 「ノンノンっ」


 太めのペンのような形状をしている。パッと蓋を外した。


 「黄色い…?これをどうするんですか?」

 「まぁまぁ、ちょっとお待ちなさい。先にベースメイクをするわよ。」


 サトミは少女が持っていた化粧品を使い、ササっと土台部分を仕上げた。

 よしっ、と頷き、少女に微笑みかけた。


 「ふふ、ここからが本番よ!」

いよいよ第二章、学園生活の本格始動です!

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