【10話/11月7日更新】夜も更けて
「あらら、いつの間に…もうこんな時間」
サトミが車両の前方の柱に掛けられた時計を指差した。
お喋りに夢中になっていた3人は、もう夜になっていることにやっと気がついた。
「明け方には終着駅に到着すると思うわ。」
エミリアは自席でブランケットを取り出しながら言った。
「明日は向こうに着けば手続きとか色々しないといけないし…今のうちに休んでおきましょう。」
おやすみー、とブランケットを膝に乗せ、さっさと眠りについてしまった。
アレンも、じゃあ…と言って自席に戻って行った。
この木製の硬い座席ですぐに寝るとは…と感心しながら、サトミも自席に戻った。
何時間くらい経っただろうか。
眠れない……!!
すっかり周りの乗客は寝ているようだが、サトミは一睡もできないまま窓の外をぼーっと見ていた。
そういえば私、夜行バスも眠れないタイプだったわ…。
前世でのイベント帰りのバスを思い出した。
みんなコスプレイベントで疲れて帰りのバスは快眠だというのに、私1人眠れずにブランケットの中でスマホをゴソゴソと操作していたような。
そういえば、いちばん後ろの車両には展望デッキがあるってエミリアが言ってたな。
せっかくだし行ってみよう。どうせ眠れないし!
そう思い、サトミは席を立った。
展望デッキに続く扉を開けると、ひんやりした空気が流れ込んできた。
わっ!と驚きながら展望デッキに出て、扉を閉めた。
線路の両側に無限に続くように聳え立つ針葉樹をぼーっと眺めながら、瞼を閉じてひんやりした空気を感じていた。
しばらくすると、すぐ後ろの扉が開く音がした。