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「雨と彼女と、彼女の涙。」その二。
ひとけのない午後の街は、音もまたさみしげだ。
誰に聴こえることも、聴かせることもない。
ただそこでひとり生まれ、ひびき。
消えてゆく、音。
わたしは傘の下で耳を澄まし、音を探す。
耳いっぱいの雨音の中から、それでも音を探す。ひとりでは消えたくない、誰にも聴かれず消えたくない。
そうつぶやく、音を探す。
たんたんと瓦屋根をたたくのは、すこし甲高い雨粒の音。
ほろほろと側溝を流れるのは、低い雨水の音。
ごろごろと喉を鳴らし、渦を巻いて排水口に飲み込まれるのは、暗い水の音。
みんな今日この時、わたしだけが聴いている音。
ひとりだけどもうひとりじゃない、音。
ぴとり。
ふとどこかで、ひと際ひびく雨が聴こえた。
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